刑事裁判の歴史と展望あれこれ💖

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しほうちゃれんじ 1187

乙:Knowing that you lied straight faced while I cried
Still I look to find a reason to believe

 

出典:Tim Hardin – Reason to Believe Lyrics | Genius Lyrics

 

感想:分詞構文でしょうか。

 

今日の問題は、司法試験平成28年刑法第13問アとウです。

 

 次のアからオまでの各記述における甲の罪責について,判例の立場に従って検討し,( )内の犯罪が既遂になる場合には1を,未遂にとどまる場合には2を,既遂にも未遂にもならない場合には3を選びなさい。(中略)
ア.甲は,所持金がなかったことから代金を支払わずに食事をしようと考え,飲食店に行って料理を注文し,これを食べた後,代金を請求した店員に対し,財布を忘れたので自宅に取りに帰ると嘘を言ったが,店員にその嘘を見破られた。(詐欺罪)[№22]
ウ.甲は,Aと同居している自宅を燃やそうと考え,自宅の和室に新聞紙が入った段ボール箱を置き,同新聞紙にライターで点火したが,その直後に帰宅したAが燃えている同段ボール箱を発見して消火したため,同段ボール箱の直下の畳だけが焼損した。(現住建造物等放火罪)
[№24]

 

 

甲先生、よろしくお願いします!

 

 

甲:アについて、刑法246条は

 

「人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。」

 

と、規定しています。

 

最決昭和30年7月7日は

 

「刑法二四六条二項にいわゆる「財産上不法の利益を得」とは、同法二三六条二項のそれとはその趣を異にし、すべて相手方の意思によつて財産上不法の利益を得る場合をいうものである。従つて、詐欺罪で得た財産上不法の利益が、債務の支払を免れたことであるとするには、相手方たる債権者を欺罔して債務免除の意思表示をなさしめることを要するものであつて、単に逃走して事実上支払をしなかつただけで足りるものではないと解すべきである。されば、原判決が「原(第一審)判示のような飲食、宿泊をなした後、自動車で帰宅する知人を見送ると申欺いて被害者方の店先に立出でたまま逃走したこと」をもつて代金支払を免れた詐欺罪の既遂と解したことは失当であるといわなければならない。しかし、第一審判決の確定した本件詐欺事実は「被告人は、所持金なく且代金支払の意思がないにもかかわらず然らざるものの如く装つて東京都文京区a町bノc料亭A事B方に於て昭和二七年九月二〇日から同月二二日迄の間宿泊一回飲食三回をなし同月二二日逃亡してその代金合計三万二千二百九十円の支払を免れたものである」というのであるから、逃亡前すでにBを欺固して、代金三二二九〇円に相当する宿泊、飲食等をしたときに刑法二四六条の詐欺罪が既遂に達したと判示したものと認めることができる。されば逃走して支払を免れた旨の判示は、本件犯罪の成立については結局無用の判示というべく、控訴を棄却した原判決は結局正当である。従つて、本件につき刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。」

 

と、判示しています。

 

 

ウについて、刑法108条は

 

「放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑を焼損した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。」

 

同法112条は

 

「第百八条及び第百九条第一項の罪の未遂は、罰する。」

 

と、規定しています。

 

最判昭和25年12月14日は

 

「 原判決は、「右犯跡を隠す為、前記二児の寝ていた布団の中に焚付薪を差し入れ、これに燐寸の軸木を添え、それに点火すれば順次燃え拡がる仕掛をしてその一端に点火して、現に右Aの住居に使用する家屋に放火し、よつて右布団三枚とその下に
敷いてあつた畳約三十糎平方、深さ約一、五糎を焼燬したものである」と明瞭に認
定判示している。そして、建具その他家屋の従物が建造物たる家屋の一部を構成す
るものと認めるには、該物件が家屋の一部に建付けられているだけでは足りず更ら
にこれを毀損しなければ取り外すことができない状態にあることを必要とするもの
である。従つて、判示布団は勿論判示畳のごときは未だ家屋と一体となつてこれを
構成する建造物の一部といえないこと多言を要しないから、原判決の前示判示は、
建造物の放火既遂の犯罪事実を認定判示したものではなく、その放火未遂の認定判
示であるといわなければならない。そして、右放火未遂の事実認定は、原判決挙示
の証拠によつて、肯認することができるから、原判決には所論のような事実上又は
証拠上の理由不備の違法は存しない。しかし、原判決は、右建造物の放火未遂の事
実に対し刑法一〇八条のみを適用して同一一二条を適用していないから、この点に
おいて法律上の理由不備の違法があるものというべく、本論旨は結局その理由があ
つて原判決は破棄を免れない。」

 

 と、判示しています

 

 

 

したがって、上記記述は、アが既遂になり、ウが未遂にとどまります。