刑事裁判の歴史と展望あれこれ💖

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しほうちゃれんじ 1195

乙:Woo, child, tired of the bullshit
Go on, dust your shoulders off, keep it moving

 

出典:Lizzo – Good as Hell Lyrics | Genius Lyrics

 

感想:流行の歌。

 

今日の問題は、新司法試験平成21年刑事系第26問エです。

 

捜索・差押えに関する次のアからエまでの各記述につき,処分を受ける者である甲が各記述中の処分を拒否している場合に,事前に裁判官から発付された( )内の捜索差押許可状によって当該処分を行うことが許される場合には1を,許されない場合には2を選びなさい。ただし,判例がある場合には,それに照らして考えるものとする。(中略)

エ.被疑者甲が覚せい剤を所持した事件で甲方を捜索したところ,立会人である甲の支離滅裂な言動から甲に覚せい剤使用の疑いが生じたので,司法警察員が,甲から尿を採取するため,身柄を拘束されていない甲を甲方から採尿に適する最寄りの病院まで連れて行くこと。[№52]
(差し押さえるべき物を覚せい剤とする甲方に対する捜索差押許可状)

 

甲先生、よろしくお願いします!

 

こ、甲先生!?

 

甲:こよいこそはとよろこびました。。

 

 

乙:最決昭和55年10月23日は

 

「 二 尿を任意に提出しない被疑者に対し、強制力を用いてその身体から尿を採取
することは、身体に対する侵入行為であるとともに屈辱感等の精神的打撃を与える
行為であるが、右採尿につき通常用いられるカテーテルを尿道に挿入して尿を採取
する方法は、被採取者に対しある程度の肉体的不快感ないし抵抗感を与えるとはい
え、医師等これに習熟した技能者によつて適切に行われる限り、身体上ないし健康
上格別の障害をもたらす危険性は比較的乏しく、仮に障害を起こすことがあつても
軽微なものにすぎないと考えられるし、また、右強制採尿が被疑者に与える屈辱感
等の精神的打撃は、検証の方法としての身体検査においても同程度の場合がありう
るのであるから、被疑者に対する右のような方法による強制採尿が捜査手続上の強
制処分として絶対に許されないとすべき理由はなく、被疑事件の重大性、嫌疑の存
在、当該証拠の重要性とその取得の必要性、適当な代替手段の不存在等の事情に照
らし、犯罪の捜査上真にやむをえないと認められる場合には、最終的手段として、
適切な法律上の手続を経てこれを行うことも許されてしかるべきであり、ただ、そ
の実施にあたつては、被疑者の身体の安全とその人格の保護のため十分な配慮が施
されるべきものと解するのが相当である。
そこで、右の適切な法律上の手続について考えるのに、体内に存在する尿を犯罪
の証拠物として強制的に採取する行為は捜索・差押の性質を有するものとみるべき
であるから、捜査機関がこれを実施するには捜索差押令状を必要とすると解すべき
である。ただし、右行為は人権の侵害にわたるおそれがある点では、一般の捜索・
差押と異なり、検証の方法としての身体検査と共通の性質を有しているので、身体
検査令状に関する刑訴法二一八条五項が右捜索差押令状に準用されるべきであつて令状の記載要件として強制採尿は医師をして医学的に相当と認められる方法により
行わせなければならない旨の条件の記載が不可欠であると解さなければならない。
 三 これを本件についてみるのに、覚せい剤取締法四一条の二第一項三号、一九
条に該当する覚せい剤自己使用の罪は一〇年以下の懲役刑に処せられる相当重大な
犯罪であること、被告人には覚せい剤の自己使用の嫌疑が認められたこと、被告人
は犯行を徹底的に否認していたため証拠として被告人の尿を取得する必要性があつ
たこと、被告人は逮捕後尿の任意提出を頑強に拒み続けていたこと、捜査機関は、
従来の捜査実務の例に従い、強制採尿のため、裁判官から身体検査令状及び鑑定処
分許可状の発付を受けたこと、被告人は逮捕後三三時間経過してもなお尿の任意提
出を拒み、他に強制採尿に代わる適当な手段は存在しなかつたこと、捜査機関はや
むなく右身体検査令状及び鑑定処分許可状に基づき、医師に採尿を嘱託し、同医師
により適切な医学上の配慮の下に合理的かつ安全な方法によつて採尿が実施された
こと、右医師による採尿に対し被告人が激しく抵抗したので数人の警察官が被告人
の身体を押えつけたが、右有形力の行使は採尿を安全に実施するにつき必要最小限
度のものであつたことが認められ、本件強制採尿の過程は、令状の種類及び形式の
点については問題があるけれども、それ以外の点では、法の要求する前記の要件を
すべて充足していることが明らかである。」

 

最決平成6年9月16日は

 

「午後三時二六分ころ、本件現場で指揮を執っていた会津若松警察署E幹警部
が令状請求のため現場を離れ、会津若松簡易裁判所に対し、被告人運転車両及び被
告人の身体に対する各捜索差押許可状並びに被告人の尿を医師をして強制採取させ
るための捜索差押許可状(以下「強制採尿令状」という。)の発付を請求した。午後五時二分ころ、右各令状が発付され、午後五時四三分ころから、本件現場におい
て、被告人の身体に対する捜索が被告人の抵抗を排除して執行された。」

 

「 (二) 身柄を拘束されていない被疑者を採尿場所へ任意に同行することが事実
上不可能であると認められる場合には、強制採尿令状の効力として、採尿に適する
最寄りの場所まで被疑者を連行することができ、その際、必要最小限度の有形力を
行使することができるものと解するのが相当である。けだし、そのように解しない
と、強制採尿令状の目的を達することができないだけでなく、このような場合に右
令状を発付する裁判官は、連行の当否を含めて審査し、右令状を発付したものとみ
られるからである。その場合、右令状に、被疑者を採尿に適する最寄りの場所まで
連行することを許可する旨を記載することができることはもとより、被疑者の所在
場所が特定しているため、そこから最も近い特定の採尿場所を指定して、そこまで
連行することを許可する旨を記載することができることも、明らかである。
 本件において、被告人を任意に採尿に適する場所まで同行することが事実上不可
能であったことは、前記のとおりであり、連行のために必要限度を超えて被疑者を
拘束したり有形力を加えたものとはみられない。また、前記病院における強制採尿
手続にも、違法と目すべき点は見当たらない。
 したがって、本件強制採尿手続自体に違法はないというべきである。」

 

と、判示しています。

 

 

したがって、上記記述は、許されないです。