刑事裁判の歴史と展望あれこれ💖

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しほうちゃれんじ 1205

乙:I'm gonna avoid the cliché

 

出典:Madonna – Die Another Day Lyrics | Genius Lyrics

 

感想:clichéは使い古された警句のような意味。

 

今日の問題は、新司法試験平成19年第58問ウとオです。

 

ウ. AのBに対する売買代金の支払を求める訴訟において,BがAに対する貸金債権をもって相殺する旨の抗弁を主張している場合,AがBに対する請負代金債権をもって当該貸金債権と訴訟上相殺する旨の再抗弁を主張することは許される。
オ. BのAに対する貸金債権の支払を求める訴訟の係属中に,AのBに対する売買代金の支払を求める別訴が提起された場合,当該別訴において,Bが同一の貸金債権をもって相殺する旨の抗弁を主張することは許されない。

 

 甲先生、よろしくお願いします!

 

こ、甲先生!?

 

甲:ぱとりもわぬがいねん。。

 

乙:ウについて、民事訴訟法114条2項は

 

「相殺のために主張した請求の成立又は不成立の判断は、相殺をもって対抗した額について既判力を有する。」

 

と、規定しています。

 

 

最判平成10年4月30日は

 

「 1 被告による訴訟上の相殺の抗弁に対し原告が訴訟上の相殺を再抗弁として主
張することは、不適法として許されないものと解するのが相当である。けだし、(
一)訴訟外において相殺の意思表示がされた場合には、相殺の要件を満たしている
限り、これにより確定的に相殺の効果が発生するから、これを再抗弁として主張す
ることは妨げないが、訴訟上の相殺の意思表示は、相殺の意思表示がされたことに
より確定的にその効果を生ずるものではなく、当該訴訟において裁判所により相殺
の判断がされることを条件として実体法上の相殺の効果が生ずるものであるから、
相殺の抗弁に対して更に相殺の再抗弁を主張することが許されるものとすると、仮
定の上に仮定が積み重ねられて当事者間の法律関係を不安定にし、いたずらに審理
の錯雑を招くことになって相当でなく、(二)原告が訴訟物である債権以外の債権
を被告に対して有するのであれば、訴えの追加的変更により右債権を当該訴訟にお
いて請求するか、又は別訴を提起することにより右債権を行使することが可能であ
り、仮に、右債権について消滅時効が完成しているような場合であっても、訴訟外
において右債権を自働債権として相殺の意思表示をした上で、これを訴訟において
主張することができるから、右債権による訴訟上の相殺の再抗弁を許さないことと
しても格別不都合はなく、(三)また、民訴法一一四条二項(旧民訴法一九九条二
項)の規定は判決の理由中の判断に既判力を生じさせる唯一の例外を定めたもので
あることにかんがみると、同条項の適用範囲を無制限に拡大することは相当でない
と解されるからである。
 2 これを本件についてみると、手形(三)の債権を自働債権として不当利得返
還請求債権(一)(二)と相殺する再抗弁の主張は不適法であるから、不当利得返
還請求債権(一)(二)全額を自働債権として相殺の効果が生じ、これにより準消
費貸借金債権(一)(二)の全額が消滅すると解すべきであって、本件請求は理由
がないというべきである。」

 

と、判示しています。

 

オについて、最判平成3年12月17日は

 

「係属中の別訴において訴訟物となっている債権を自働債権として他の訴訟におい
て相殺の抗弁を主張することは許されないと解するのが相当である(最高裁昭和五
八年(オ)第一四〇六号同六三年三月一五日第三小法廷判決・民集四二巻三号一七
〇頁参照)。すなわち、民訴法二三一条が重複起訴を禁止する理由は、審理の重複
による無駄を避けるためと複数の判決において互いに矛盾した既判力ある判断がさ
れるのを防止するためであるが、相殺の抗弁が提出された自働債権の存在又は不存
在の判断が相殺をもって対抗した額について既判力を有するとされていること(同
法一九九条二頃)、相殺の抗弁の場合にも自働債権の存否について矛盾する判決が
生じ法的安定性を害しないようにする必要があるけれども理論上も実際上もこれを
防止することが困難であること、等の点を考えると、同法二三一条の趣旨は、同一
債権について重複して訴えが係属した場合のみならず、既に係属中の別訴において
訴訟物となっている債権を他の訴訟において自働債権として相殺の抗弁を提出する
場合にも同様に妥当するものであり、このことは右抗弁が控訴審の段階で初めて主
張され、両事件が併合審理された場合についても同様である。
 これを本件についてみるのに、原審の確定した事実関係は、次のとおりである。
すなわち、(一) 被上告人は、上告人に対し、右両名間の継続的取引契約に基づく
バトミントン用品の輸入原材料残代金等合計二〇七万四四七六円及びこれに対する
昭和五五年一〇月七日から支払済みまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求
めて本訴を提起し、(二) これに対し、上告人は、同六〇年三月一一日の原審第一一回口頭弁論期日において、本件原審と同一部である東京高等裁判所第一民事部で
併合審理中であった、上告人を第一審原告、被上告人を第一審被告とする同高裁同
五八年(ネ)第一一七五号、第一二一三号売買代金等請求控訴事件において、被上
告人に対して請求する売買代金一二八四万八〇六〇円及び内金一二三〇万八〇六〇
円に対する同五四年七月一四日から、内金五四万円に対する同年九月二六日から各
支払済みまで年六分の割合による遅延損害金請求権をもって、前記(一)の債権と対
当額で相殺する旨の抗弁を提出した。右事実関係の下においては、上告人の右主張
は、係属中の別訴において訴訟物となっている債権を自働債権として他の訴訟にお
いて相殺の抗弁を主張するものにほかならないから、右主張は許されないと解する
のが相当である。これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができ、原
判決に所論の違法はない。」

 

と、判示しています。

 

 

したがって、上記記述は、ウが誤りで、オが正しいです。