刑事裁判の歴史と展望あれこれ💖

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しほうちゃれんじ 1643

乙:今日の問題は、新司法試験平成19年民事系第11問3と5です。

3. AがBの所有する未登記建物を買い受け,その後その建物についてB名義の所有権保存登記
がなされた後,BがCにこれを売却しその旨の登記をした場合,Aは,Cに対しその所有権を
取得したことを対抗することができない。
5. A,B及びCが土地を共有している場合,Aからその持分を譲り受けたDは,その持分の取
得につき登記を経由しないでB及びCに対抗することができる。


甲先生、よろしくお願いします!
こ、甲先生!?

甲:Once took a keen eye to nail that smile

出典:https://youtu.be/XMT9f_apQU4

感想:nailは釘という意味もあるので、笑顔を釘で固定して見逃さないというようなイメージだと思います。


乙:3について、大判昭和10年10月1日は

「民法第百七十七条ニハ「不動産ニ関スル物権ノ得喪及ヒ変更ハ登記法ノ定ムル所ニ従ヒ其登記ヲ為スニ非レハ之ヲ以テ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス」トアリテ不動産ニ関スル権利ノ動的状態ハ之ヲ登記スルニ非レハ第三者ニ対抗スルコトヲ得サル旨ヲ明示セリ蓋シ権利ニ付キ動的状態ヲ生シタルコトハ容易ニ之ヲ知ルノ途アルニ非レハ第三者ハ其不動産ニ関シ取引上正当ノ利益ヲ収メントスルモ其目的ヲ達スルヲ得サルノ虞アリ取引ノ安全ハ為メニ著シク害セラルルニ至ルヘキカ故ニ民法ハ不動産ニ関スル権利ニ付キ動的状態ヲ生シタルトキハ其登記ヲ為シテ之ヲ公示スヘク若シ登記ヲ為シテ之ヲ公示セサルトキハ其動的状態ヲ生シタリトノ事実ヲ第三者ニ対抗スルコトヲ得サルモノトシ以テ取引ノ安全ヲ保護スルコトヲ期シタルナリ此必要ハ不動産カ既登記ナルト未登記ナルトニ依リテ其間ニ径庭ヲ観ルコトナキモノナレハ未登記不動産ニ付キ所有権ヲ取得シタル買主ト雖売買ニ因ル所有権取得ノ登記ヲ為スニ非レハ其取得ヲ以テ第三者ニ対抗シ得サルモノト謂ハサルヘカラス未登記不動産ニ付テハ売主ニ於テ先ツ不動産登記法第百五条第百六条ノ所有権ノ登記ヲ為シタル後ニ非レハ買主ハ売買ニ依ル所有権取得ノ登記ヲ為スコトヲ得スト雖此場合ニ在テモ買主ハ売買ニ因ル所有権ノ取得ヲ登記スルニ非レハ其取得ヲ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス何トナレハ其登記ヲ為スニ非スンハ不動産ニ関スル権利ノ動的状態ヲ公示スル登記ヲ為シタリト謂フヲ得サレハナリ此場合ニ於テ売主ハ最早所有者ニ非サルヲ以テ買主カ売買ニ因ル所有権取得ノ登記ヲ為スノ前提トシテ所有権ノ登記ヲ為スコトヲ得サルノ観ナキニ非サルモ所有権ノ売買ニ於テ売主ハ完全ニ所有権ヲ買主ニ移転スルノ義務アリ而シテ買主ハ売買ニ因ル所有権取得登記ヲ為スニ非サレハ其取得ヲ第三者ニ対抗スルコト能ハサルモノナレハ売主ハ買主カ其取得登記ヲ為スニ必要ナル手続ヲ尽スニ非サレハ完全ニ所有権移転ノ義務ヲ尽シタルモノト為シ難ク従テ売主ハ買主カ其取得登記ヲ為スノ前提トシテ先ツ自ラ所有権ノ登記ヲ為スノ義務アリト論結セサルヲ得ス此場合ニ所有権ハ実質ニ於テハ既ニ買主ニ移転シタルモノナレトモ不動産登記法ハ実質ノ有無ヲ問ハス形式ニ適合スル申請ハ総テ之ヲ許スモノナルヲ以テ其所有権ノ登記ノ申請カ不動産登記法第三十五条第百七条ニ適合スル限リ登記ヲ為スニ妨アルコトナシ唯不動産登記法第百六条第四号ノ場合ニ在テ売主カ所有権ノ登記ヲ申請スルニ必要ナル官庁又ハ公署ノ証明書類ハ既ニ買主ヨリ所有権取得ノ届出ヲ市町村庁ニ為シタル等ノ事由ノ為メ之ヲ得ラレサルコトアルヘシト雖斯ル例外ノ場合アルノ故ヲ以テ一般ニ売主カ所有権ノ登記ヲ為スヲ得サルモノナリト謂フヘカラサルハ明白ナリ左レハ売主ハ先ツ自己ノ所有権ノ登記ヲ為シテ買主カ所有権ノ取得登記ヲ為スニ妨ナカラシムヘク若シ売主カ任意ニ其義務ヲ履行セサルトキハ買主ハ民法第四百二十三条不動産登記法第四十六条ノ二ニ依リ売主ニ代位シテ先ツ売主ノ所有権ノ登記ヲ為スコトヲ得ヘシ是ニ由テ之ヲ観レハ未登記不動産ノ買主ニ於テ所有権取得ノ登記ヲ為スノ途ハ具ハレルモノニシテ未登記不動産ノ買主ト雖其取得登記ヲ為スニ非レハ其取得ヲ以テ第三者ニ対抗スルコトヲ得ストスルニ何等ノ支障アルコトナシ然レハ其支障アルコトヲ前提トシテ未登記不動産ノ場合ニハ第三者ナシトスル本論旨ハ理由ナシ」

と、判示しています。


5について、民法177条は

「不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。」

と、規定しています。

最判昭和46年6月18日は

「不動産の共有者の一員が自己の持分を譲渡した場合における譲受人以外の他の共有者は民法一七七条にいう「第三者」に該当するから、右譲渡につき登記が存しないときには、譲受人は、右持分の取得をもつて他の共有者に対抗することができない。そして、共有物分割の訴は、共有者間の権利関係をその全員について画一的に創設する訴であるから、持分譲渡があつても、これをもつて他の共有者に対抗できないときには、共有者全員に対する関係において、右持分がなお譲渡人に帰属するものとして共有物分割をなすべきものである(大審院大正五年(オ)第八〇三号同年一二月二七日判決民録二二輯二五二四頁参照)。」

と、判示しています。


したがって、上記記述は、3が正しく、5が誤りです。