刑事裁判の歴史と展望あれこれ💖

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しほうちゃれんじ 1645

乙:今日の問題は、新司法試験平成18年民事系第14問アイウオです。

Aがその所有するギター(以下 「甲」という。)をBに貸していたところ 無職のCが金に困って,Bから甲を盗み,自分の物だと称して友人のDに売却した。Dは,甲がCの所有物だと過失なく信じて,その引渡しを受けた。(中略)
ア. Aは,CD間の売買契約を追認すれば,Dに代金を請求することができる。
イ. 甲を盗まれたのはBであるから,Aは,Dに甲の返還を請求することができない。
ウ. Bは,盗まれた時から2年以内であれば,Dに甲を無償で返還するよう請求することができ
る。
オ. Bが盗まれた時から2年間は,Dは,甲の所有権を取得することができない。

甲先生、よろしくお願いします!
こ、甲先生!?

甲:I saw the lights go out.

出典:https://youtu.be/TkWlbTLA2IM

感想:go outで光が消えるという意味のようです。


乙:アについて、民法116条は

「追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。」

と、規定しています。

最判昭和37年8月10日は

「或る物件につき、なんら権利を有しない者が、これを自己の権利に属するものとして処分した場合において真実の権利者が後日これを追認したときは、無権代理行為の追認に関する民法一一六条の類推適用により、処分の時に遡つて効力を生ずるものと解するのを相当とする(大審院昭和一〇年(オ)第六三七号同年九月一〇日云渡判決、民集一四巻一七一七頁参照)。本件において原審が、挙示の証拠を綜合して上告人は、昭和三〇年六月頃に至り、その長男山本春夫が上告人所有の本件不動産につき、無断で所有権移転登記の手続および本件抵当権の設定をしている事実を知つたのであるが、その後遅くとも同年一二月中、被上告人に対し、右抵当権は当初から有効に存続するものとすることを承認し、前記山本春夫のなした本件抵当権の設定を追認したことを認めた上、前記判示と同趣旨の見解のもとに、右不動産の所有者である上告人がこれを追認した以上、これにより、右抵当権の設定は上告人のために効力を生じたものと判断したのは正当である。」

と、判示しています。


イについて、民法193条は

「前条の場合において、占有物が盗品又は遺失物であるときは、被害者又は遺失者は、盗難又は遺失の時から二年間、占有者に対してその物の回復を請求することができる。」

と、規定しています。


ウについて、民法194条は

「占有者が、盗品又は遺失物を、競売若しくは公の市場において、又はその物と同種の物を販売する商人から、善意で買い受けたときは、被害者又は遺失者は、占有者が支払った代価を弁償しなければ、その物を回復することができない。」

同法195条は

「家畜以外の動物で他人が飼育していたものを占有する者は、その占有の開始の時に善意であり、かつ、その動物が飼主の占有を離れた時から一箇月以内に飼主から回復の請求を受けなかったときは、その動物について行使する権利を取得する。」

と、規定しています。


オについて、大判大正10年7月8日は

「民法第百九十三条ハ平穏公然善意無過失ニ動産ノ占有ヲ始メタル場合(即法文ニ所謂前条ノ場合)ト雖モ若シ其物カ盗品又ハ遺失物ナルトキハ占有者ハ盗難又ハ遺失ノ時ヨリ二年内ニ被害者又ハ遺失主ヨリ回復ノ請求ヲ受ケサルトキニ限リ始メテ其物ノ上ニ行使スル権利ヲ取得スト云ウ旨趣ニシテ従テ又回復ト云ウハ占有者カ一旦其物ニ付キ即時ニ取得シタル所有権其他ノ本権ヲ回復スルノ謂ニ非ス単ニ占有物ノ返還ト云ウコトヲ意味スルモノニ外ナラス
欺カル解釈ヲ採ラサル可カラサルコトハ占有ノ不任意喪失ト云ウ点ニ於テ畢竟同一ニ帰著スル場合ノ規定タル同法第百九十五条ノ行文トノ対照上明白ナルノミナラス法文ニ依レハ所謂回復請求権ヲ有スル者ハ即被害者又ハ遺失主ナルコトニ徴スルモ亦明白ナリ
何者被害者又ハ遺失主トハ単ニ盗難又ハ遺失ニ依リ不任意ニ其占有ヲ喪失シタル者ヲ意味スルニ止マリ決シテ何等カ其物ニ付キ本権ヲ有スル者タルヲ必要トセサルコトハ言ヲ竢タサル所ナルヲ以テ今若シ回復ト云ウコトハ本権ノ回復ヲ指スモノトセムカ其帰スルトコロ自己カ始メヨリ之ヲ有セサル権利ヲ回復スト云ウカ如キ極メテ奇異ナル結果ヲ観ルニ至ル可ケレハナリ原判決ノ事実摘示ニ依レハ被上告人ハ一面ニハ本訴物件ノ所有権者ナリト主張スルト共ニ一面ニハ其盗難ノ際ニ於ケル占有権者トシテ本訴請求ヲ主張スルモノナルコトハ同摘示ニ引用セル第一審判決ノ請求原因ニ徴シ明白ニシテ而シテ原裁判所ノ確定セルトコロニ依レハ被上告人ハ実ニ右ノ如キ占有権者ニシテ又上告人ハ平穏公然善意無過失ニ該物件ヲ占有シタル者ナルヲ以テ原判決ニ於テ被上告人ノ回復請求権ヲ是認シタルハ終局ノ判断ニ於テ毫モ誤レルトコロヲ見ス
原裁判所カ被上告人ヲ以テ本訴物件ノ所有権者ナリト認定シタルカ如キハ要スルニ民法第百九十三条ノ回復請求権者ハ所有権其他ノ本権ヲ有スル者ナラサル可カラスト誤解シタル結果ニ外ナラスト雖モ以上説示ノ如ク此誤解ハ畢竟判断ニ影響無キニ帰セルヲ以テ結局原判決ハ相当ニシテ上告ハ其理由無シト云ワサル可カラス」

と、判示しています。


したがって、上記記述は、アとイが誤りで、ウとオが正しいです。