刑事裁判の歴史と展望あれこれ💖

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しほうちゃれんじ 1781

乙:今日の問題は、司法試験平成28年民法第21問アイウエです。

ア.賃借人の保証人は,賃貸借契約が更新された後の賃料債務についても保証債務を負うが,賃
料不払によって賃貸借契約が解除された場合,賃借人が目的物を返還しないことにより賃貸人
に与えた損害の賠償については保証債務を負わない。
イ.建物賃貸借契約の存続期間中に賃借人の保証人が死亡した場合において,その相続人は,相
続開始後に生じた賃借人の債務についても保証債務を負う。
ウ.身元保証契約において,使用者が,被用者に業務上不適任又は不誠実な事跡があって,その
ために身元保証人の責任を惹起するおそれがあることを知ったときは,使用者は,遅滞なく
身元保証人にその旨を通知しなければならない。
エ.貸金等根保証契約において元本確定期日がその貸金等根保証契約の締結の日から6年を経過する日と定められている場合,その元本確定期日は,その貸金等根保証契約の締結の日から
5年を経過する日となる。


甲:I tell you about Jesus who loves you death,
helps you through your struggle and stress,
so put your trust in Him, that's what I suggest.


出典:https://www.lyrics.com/sublyric/105615/MC+Tempo/Start+The+Party

感想:アルクによると、put one's trust inで~を信頼する、~に信頼を寄せるという意味だそうです。


乙:アについて、最判平成9年11月13日は

「建物の賃貸借は、一時使用のための賃貸借等の場合を除き、期間の定めの有無にかかわらず、本来相当の長期間にわたる存続が予定された継続的な契約関係であり、期間の定めのある建物の賃貸借においても、賃貸人は、自ら建物を使用する必要があるなどの正当事由を具備しなければ、更新を拒絶することができず、賃借人が望む限り、更新により賃貸借関係を継続するのが通常であって、賃借人のために保証人となろうとする者にとっても、右のような賃貸借関係の継続は当然予測できるところであり、また、保証における主たる債務が定期的かつ金額の確定した賃料債務を中心とするものであって、保証人の予期しないような保証責任が一挙に発生することはないのが一般であることなどからすれば、賃貸借の期間が満了した後における保証責任について格別の定めがされていない場合であっても、反対の趣旨をうかがわせるような特段の事情のない限り、更新後の賃貸借から生ずる債務についても保証の責めを負う趣旨で保証契約をしたものと解するのが、当事者の通常の合理的意思に合致するというべきである。もとより、賃借人が継続的に賃料の支払を怠っているにもかかわらず、賃貸人が、保証人にその旨を連絡するようなこともなく、いたずらに契約を更新させているなどの場合に保証債務の履行を請求することが信義則に反するとして否定されることがあり得ることはいうまでもない。
 以上によれば、期間の定めのある建物の賃貸借において、賃借人のために保証人が賃貸人との間で保証契約を締結した場合には、反対の趣旨をうかがわせるような特段の事情のない限り、保証人が更新後の賃貸借から生ずる賃借人の債務についても保証の責めを負う趣旨で合意がされたものと解するのが相当であり、保証人は、賃貸人において保証債務の履行を請求することが信義則に反すると認められる場合を除き、更新後の賃貸借から生ずる賃借人の債務についても保証の責めを免れないものというべきである。
四 これを本件についてみるに、前記事実関係によれば、前記特段の事情はうかがわれないから、本件保証契約の効力は、更新後の賃貸借にも及ぶと解すべきであり、被上告人において保証債務の履行を請求することが信義則に反すると認めるべき事情もない本件においては、上告人は、本件賃貸借契約につき合意により更新された後の賃貸借から生じた健三の被上告人に対する賃料債務等についても、保証の責めを免れないものといわなければならない。これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。右判断は、所論引用の判例に抵触するものではない。」


大判昭和13年1月31日は

「民法第六百二十条ニ拠レハ賃貸人カ賃借人ノ義務不履行ヲ理由トシテ賃貸借ヲ解除シタル場合ニ於テモ該解除ハ将来ニ向ツテノミ其ノ効力ヲ生スルニ過キサルコト明ナルヲ以テ其ノ当事者間ニハ原状回復義務ヲ生スルコトナク賃借人ハ賃貸借契約ニ基ク義務ノ履行トシテ賃借物ヲ賃貸人ニ返還スヘキモノナリト云ハサルヲ得ス従テ其ノ返還義務ノ不履行ニ因リ賃貸人ニ被ラシメタル損害ハ賃借人ノ契約ニ依ル債務ノ不履行ニ関スル損害ニ外ナラサルニヨリ特別ノ理由ナキ限リ賃借人ノ為ニ其ノ債務ヲ担保シタル保証人ニ賠償責任アルモノト解シ得ヘク(明治四十三年(オ)第五〇号同年四月十五日当院第二民事部判決参照)論旨援用ノ当院判例ハ原状回復義務ト保証人ノ責任トニ関スルモノニシテ叙上解釈ヲ妨クルモノニ非ス然ラハ本件ニ於テ原審カ被上告人及訴外久保田石松間ノ賃貸借カ賃借人タル石松ノ賃料不払ニ依リ解除セラレタルコト及其ノ解除後石松カ賃借物ヲ返還スル迄ニ被上告人ニ被ラセタル損害額ヲ確定シタル上石松ノ債務ヲ保証シタル上告人ニ其ノ賠償責任アルコトヲ判示シタルハ正当ニシテ論旨二ニ述フル事由ノ如キハ該判示ニ依リ自ラ明ニセラレタルモノト云フヘシ」

と、判示しています。


イについて、大判昭和9年1月30日は

「賃貸借契約ニ因リ之ト同時ニ賃貸人カ賃借人ニ目的物ノ使用収益ヲ為サシムル対価トシテ賃借人ハ借賃ヲ支払フヘキ基本ノ法律関係ヲ生スヘク此賃借人ノ基本債務ハ将来ノ使用収益義務履行ヲ俟チテ発生スヘキ個々ノ借賃債務トハ異レリト雖右基本債務ニ付保証ヲ約シタル者ハ将来使用収益義務履行ノ場合之ニ対スル個々ノ借賃債務ノ保証債務ヲ負担スヘキコト勿論ニシテ従テ右基本債務ノ保証人ヲ相続シ因テ其ノ地位ヲ承継シタル者カ相続後ノ使用収益義務履行ノ場合ニ之ニ対スル個々ノ借賃債務ノ保証債務ヲ負担スヘキヤ当然ナリトス此ノ趣旨ヲ判示シタル原判決ハ違法ニ非ス」

と、判示しています。


ウについて、身元保証ニ関スル法律3条1号は

「使用者ハ左ノ場合ニ於テハ遅滞ナク身元保証人ニ通知スベシ
一 被用者ニ業務上不適任又ハ不誠実ナル事跡アリテ之ガ為身元保証人ノ責任ヲ惹起スル虞アルコトヲ知リタルトキ」

と、規定しています。


エについて、民法465条の3第1項,2項は

「個人根保証契約であってその主たる債務の範囲に金銭の貸渡し又は手形の割引を受けることによって負担する債務(以下「貸金等債務」という。)が含まれるもの(以下「個人貸金等根保証契約」という。)において主たる債務の元本の確定すべき期日(以下「元本確定期日」という。)の定めがある場合において、その元本確定期日がその個人貸金等根保証契約の締結の日から五年を経過する日より後の日と定められているときは、その元本確定期日の定めは、その効力を生じない。
2 個人貸金等根保証契約において元本確定期日の定めがない場合(前項の規定により元本確定期日の定めがその効力を生じない場合を含む。)には、その元本確定期日は、その個人貸金等根保証契約の締結の日から三年を経過する日とする。」

と、規定しています。


したがって、上記記述は、アとエが誤りで、イとウが正しいです。