刑事裁判の歴史と展望あれこれ💖

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しほうちゃれんじ 1782

乙:今日の問題は、新司法試験平成19年民事系第20問アウエオです。

弁済による代位に関する (中略)
ア. 後順位抵当権者は,先順位抵当権者の被担保債権を代位弁済したときは,債権者に代位して
先順位抵当権を取得する。
ウ. 代位弁済者が弁済による代位によって取得した担保権を実行する場合において,その被担保
債権は,代位弁済者の債務者に対する求償権である。
エ. 代位弁済をした保証人が原債権を行使してその給付を請求する場合には,保証人は,主たる
債務者に対する求償権の成立及びその内容について主張立証することを要しない。
オ. 一つの債権の一部につき代位弁済がされた場合,その債権を被担保債権とする抵当権の実行
による競売代金の配当については,代位弁済者は債権者に劣後する。


甲先生、よろしくお願いします!
こ、甲先生!?


甲:Now my tour bus get the miles with a plus, trust

出典:https://genius.com/Tkay-maidza-syrup-lyrics

感想:アルクによると、tour busは観光バスという意味です。


乙:アについて、民法499条は

「債務者のために弁済をした者は、債権者に代位する。」

同法474条2項は

「弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない。ただし、債務者の意思に反することを債権者が知らなかったときは、この限りでない。」

と、規定しています。

大決昭和6年12月18日は

「債務ノ弁済ニ付正当ノ利益ヲ有スル者カ弁済ヲ為シタルトキハ其ノ者ハ之ニ因リ当然債権者ニ代位スルモ旧債権者ノ抵当権ハ之カ抛棄ヲ為サハ格別代位弁済ニ因リ当然ニハ消滅セサルコト民法第五百条ノ法意ニ徴シテ明ナルヲ以テ旧債権者ニ於テ抵当権実行ノ為既ニ競売ノ申立ヲ為シ該手続進行中ナリシ場合ニ於テハ裁判所ニ対スル競売申立取下ノ手続ニ依ルニ非サレハ該手続ノ廃止ハ之ヲ求ムルコトヲ得ス然ラハ則チ代位債権者カ弁済ヲ以テ基本抵当権ノ消滅ヲ主張シ競売手続ノ廃棄ヲ請求スルモ之ニヨリテ競売手続ノ進行ハ廃止セラルヘキニアラス然ルニ原決定カ論旨摘録ノ如ク説示シ代位債権者ノ右主張及請求ヲ以テ競売追行ノ権利ヲ抛棄シタルモノトナシ一方競売手続ハ基本タル抵当権ノ消滅ノ為最早続行ヲ許ササルニ至リタルモノト為シタルハ違法ニシテ論旨ハ理由アリ従テ原決定ハ全部破毀ヲ免レサルモノトス」

と、判示しています。

民法501条1項は

「前二条の規定により債権者に代位した者は、債権の効力及び担保としてその債権者が有していた一切の権利を行使することができる。」

と、規定しています。


ウについて、最判昭和59年5月29日は

「弁済による代位の制度は、代位弁済者が債務者に対して取得する求償権を確保するために、法の規定により弁済によつて消滅すべきはずの債権者の債務者に対する債権(以下「原債権」という。)及びその担保権を代位弁済者に移転させ、代位弁済者がその求償権の範囲内で原債権及びその担保権を行使することを認める制度であり、したがつて、代位弁済者が弁済による代位によつて取得した担保権を実行する場合において、その被担保債権として扱うべきものは、原債権であつて、保証人の債務者に対する求償権でないことはいうまでもない。」

と、判示しています。


エについて、最判昭和61年2月20日は

「弁済による代位の制度は、代位弁済者の債務者に対する求償権を確保することを目的として、弁済によつて消滅するはずの債権者の債務者に対する債権(以下「原債権」という。)及びその担保権を代位弁済者に移転させ,代位弁済者がその求償権を有する限度で右の原債権及びその担保権を行使することを認めるものである。それゆえ、代位弁済者が代位取得した原債権と求償権とは、元本額、弁済期、利息・遅延損害金の有無・割合を異にすることにより総債権額が各別に変動し、債権としての性質に差違があることにより別個に消滅時効にかかるなど、別異の債権ではあるが、代位弁済者に移転した原債権及びその担保権は、求償権を確保することを目的として存在する附従的な性質を有し、求償権が消滅したときはこれによつて当然に消滅し、その行使は求償権の存する限度によつて制約されるなど、求償権の存在、その債権額と離れ、これと独立してその行使が認められるものではない。したがつて、代位弁済者が原債権及び担保権を行使して訴訟においてその給付又は確認を請求する場合には、それによつて確保されるべき求償権の成立、債権の内容を主張立証しなければならず、代位行使を受けた相手方は原債権及び求償権の双方についての抗弁をもつて対抗することができ、また、裁判所が代位弁済者の原債権及び担保権についての請求を認容する場合には、求償権による右のような制約は実体法上の制約であるから、求償権の債権額が常に原債権を上回るものと認められる特段の事情のない限り、判決主文において代位弁済者が債務者に対して有する求償権の限度で給付を命じ又は確認しなければならないものと解するのが相当である。」

と、判示しています。


オについて、最判昭和60年5月23日は

「共同根抵当の目的である債務者所有の不動産と物上保証人所有の不動産にそれぞれ債権者を異にする後順位抵当権が設定されている場合において、物上保証人所有の不動産について先に競売がされ、その競落代金の交付により一番抵当権者が弁済を受けたときは、物上保証人は債務者に対して求償権を取得するとともに、代位により債務者所有の不動産に対する一番抵当権を取得するが、物上保証人所有の不動産についての後順位抵当権者(以下「後順位抵当権者」という。)は物上保証人に移転した右抵当権から債務者所有の不動産についての後順位抵当権者に優先して弁済を受けることができるものと解するのが相当である(最高裁昭和五〇年(オ)第一九六号昭和五三年七月四日第三小法廷判決・民集三二巻五号七八五頁参照)。右の場合において、債務者所有の不動産と物上保証人所有の不動産について共同根抵当権を有する債権者が物上保証人と根抵当権設定契約を締結するにあたり、物上保証人が弁済等によつて取得する権利は、債権者と債務者との取引が継続している限り債権者の同意がなければ行使しない旨の特約をしても、かかる特約は、後順位抵当権者が物上保証人の取得した抵当権から優先弁済を受ける権利を左右するものではないといわなければならない。けだし、後順位抵当権者が物上保証人の取得した一番抵当権から優先して弁済を受けることができるのは、債権者が物上保証人所有の不動産に対する抵当権を実行して当該債権の弁済を受けたことにより、物上保証人が当然に債権者に代位し、それに伴い、後順位抵当権者が物上保証人の取得した一番抵当権にあたかも物上代位するようにこれを行使しうることによるものであるが、右特約は、物上保証人が弁済等をしたときに債権者の意思に反して独自に抵当権等の実行をすることを禁止するにとどまり、すでに債権者の申立によつて競売手続が行われている場合において後順位抵当権者の右のような権利を消滅させる効力を有するものとは解されないからである。」

と、判示しています。


したがって、上記記述は、アとオが正しく、ウとエが誤りです。