刑事裁判の歴史と展望あれこれ💖

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しほうちゃれんじ 1783

乙:今日の問題は、新司法試験平成18年民事系第23問アとエです。

第三者のためにする契約に関する(中略)
ア. Aが宝石をBに売り,その代金をBがCに支払うとの契約を締結し,Cが受益の意思表示を
した場合,BがAの詐欺を理由にこの契約を取り消しても,CがAの詐欺について善意無過失
であるときは,Bは,詐欺取消しをCに対抗することはできない。
エ. Aが宝石をBに売り,代金の支払に代えて,BがCに対して有する債権を放棄するとの契約
を締結した場合,判例によると,Cが受益の意思表示をすれば,BのCに対する債務免除の意
思表示を要せずに,Cの債務は消滅する。

甲先生、よろしくお願いします!
こ、甲先生!?


甲:'Cause I'd hit rock bottom when you quit with my heart

出典:https://genius.com/Jimi-charles-moody-shame-lyrics

感想:アルクによると、rock bottomは、岩底、どん底、最低という意味です。


乙:アについて、民法539条は

「債務者は、第五百三十七条第一項の契約に基づく抗弁をもって、その契約の利益を受ける第三者に対抗することができる。」

同法537条1項は

「契約により当事者の一方が第三者に対してある給付をすることを約したときは、その第三者は、債務者に対して直接にその給付を請求する権利を有する。」

同法96条3項は

「前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。」

と、規定しています。

「第三者のためにする契約の第三者は,詐欺取消しについて規定した96条3項にいう「第三者」には該当しない。この「第三者」とは,詐欺の事実を知らないで,詐欺による法律行為に基づいて取得された権利について,新たに利害関係に入った者を意味するが,第三者のためにする契約の第三者の権利は,直接に詐欺による法律行為から生じたものだからである。」

辰巳法律研究所『平成29年度版 司法試験&予備試験 短答過去問パーフェクト4 民事系民法② 』984頁


エについて、大判大正5年6月26日は

「民法第五百三十七条ハ其明文上当事者ノ一方ニ於テ第三者ニ給付ヲ約シタル場合ノミニ付キ規定セルカ如シト雖法律カ第三者ノ利益ノ為メニスル契約ノ第三者ニ対スル効力ヲ特ニ此場合ニノミ限定シタルモノト解スヘキ理由ナキカ故ニ当事者間ノ契約ニ於テ其一方カ第三者ニ対シテ有スル債権ヲ免除スルコトヲ約シタル場合ト雖亦其契約ハ有効ニシテ此場合ニ於テハ第三者ノ受益ノ意思表示アリタルトキヨリ免除ノ効力ヲ生スルモノト解スヘキモノトス蓋シ法律カ第三者ノ利益ノ為メニスル契約ニ効力ヲ認メタル所以ノモノハ社会各般ノ取引上之ヲ必要トスルニ出テタルモノト為スヘキカ故ニ第三者ノ利益ノ為メニスル契約ノ内容カ其給付タルト免除タルトニ於テ毫モ解釈ヲ異ニスヘキ理由ナケレハナリ故ニ本件ニ於テ原審ノ確定セルカ如ク上告人ト訴外大沼与四吉間ノ契約ニ於テ上告人カ第三者タル被上告人ヨリ約旨ノ金額ノ支払ヲ受クルニ於テハ自己ニ対スル被上告人ノ小作米ニ関スル債務ヲ免除スルコトヲ大沼与四吉ニ約シタル場合ニ於テ被上告人カ上告人ニ対シ約旨ノ金円ヲ支払ヒ受益ノ意思ヲ表示シタルトキハ被上告人ノ債務ハ約旨ニ従ヒ当然免除セラレタルノ効果ヲ生スルモノニシテ此ノ場合ニ於テハ民法第五百十九条ノ規定ニ従ヒ更ニ小作米ノ債権者タル上告人ヨリ其債務者タル被上告人ニ対シテ債務免除ノ意思表示ヲ為スノ必要ナキモノトス何トナレハ同条ノ規定ハ単独行為ニ因ル債務免除ノ場合ニ付テノ規定タルニ止マリ本件ノ如キ契約ニ依ル債務免除ノ場合ニ其適用ヲ有スルモノニ非サルカ故ナリ故ニ原審カ所論指摘ノ如ク判示シタルハ正当ニシテ本論旨ハ孰レモ理由ナキモノトス」

と、判示しています。


したがって、上記記述は、アが誤りで、エが正しいです。