刑事裁判の歴史と展望あれこれ💖

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しほうちゃれんじ 1839

乙:今日の問題は、司法試験平成27年民法第2問2と3です。

意思表示に関する次の1から4までの各記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものはどれ
か。(中略)
2.Aは,その所有する甲土地についてBと仮装の売買契約を締結し,その旨の所有権移転登記をした。その後,Bがこの事情を知らないCから500万円を借り入れたが,その返済を怠っ
たことから,Cが甲土地を差し押さえた場合,甲土地の差押えの前にCがこの事情を知ったとしても,Aは,Cに対し,AB間の売買契約の無効を主張することができない。
3.Aの代理人であるBは,その代理権の範囲内でAを代理してCから1000万円を借り入れる旨の契約を締結したが,その契約締結の当時,Bは,Cから借り入れた金銭を着服する意図を有しており,実際に1000万円を着服した。この場合において,Cが,その契約締結の当
時,Bの意図を知ることができたときは,Aは,Cに対し,その契約の効力が自己に及ばないことを主張することができる。

甲先生、よろしくお願いします!
こ、甲先生!?


甲:I don't think I could see the future

出典:https://genius.com/Tkay-maidza-cashmere-lyrics

感想:×I think I couldn't see the futureは不自然らしい。

乙:2について、民法94条は

「相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。
2 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。」

と、規定しています。


大判昭和18年12月22日は

「債権者代位権ハ債権者固有ノ権利ナリト雖モ之ニ基キ行使セラルル権利ハ債務者ニ属シ債権者ハ唯債権者ノ地位ニ代位シテ之ヲ行使スルモノナルヲ以テ其ノ行使ヲ受クル相手方ハ債務者自ラ之ヲ行使スル場合ニ比シ不利益ヲ甘受スヘキモノニ非ス従テ相手方ハ債務者ニ対抗シ得ヘキ事由ハ之ヲ以テ債権者ニモ対抗シ得ヘキカ故ニ代位ノ目的タル債務者ノ権利カ虚偽ノ意思表示ニ基クモノニシテ成立セストノ主張ノ如キモ其ノ債務者ニ対抗シ得ヘキモノナル以上ハ原則トシテ債権者ニモ対抗シ得ヘキコト勿論ニシテ唯債権者ノ保全セントスル債権自体ノ存否カ債務者ト相手方トノ虚偽契約ノ効力如何ニ依リテ影響ヲ受クルカ如キ場合ニハ債権者ハ此点ニ於テ民法第九十四条第二項ニ所謂第三者ニ該当スルヲ以テ其ノ善意ナリシトキニ限リ之カ対抗ヲ為シ得サルモノトス例之債権者カ債務者ノ相手方ヨリ買受ケタル不動産ヲ更ニ債務者ヨリ買受ケタルコトヲ理由トシテ其ノ債務者ニ対スル移転登記請求権保全ノ為メ債務者ノ相手方ニ対シテ有スル移転登記請求権ヲ代位行使スルカ如キ場合ニ於テハ債権者ノ善意ナリシ限リ相手方ハ自己ト債務者トノ売買カ虚偽ノ意思表示ニ因ル無効ノモノナルコトヲ主張シテ之カ登記手続ヲ拒ミ得サルカ如シ蓋シ斯ル場合ニ於テハ債権者ノ債務者ニ対スル移転登記請求権ノ成否ハ債務者ト相手方トノ売買ノ有効無効ニ直接関聯スルカ故ニ債権者ハ民法第九十四条第二項ニ所謂第三者ニ該当スルヲ以テナリ之ニ反シ単ナル金銭債権ヲ有スルニ過キサル債権者カ債権保全ノ為メ該債権ト直接関聯ナキ債務者ノ移転登記請求権ヲ代位行使スルカ如キ場合ニ於テハ債権者ハ唯債務者ノ地位ニ代位シテ之ヲ行使スルニ過キス右登記請求権ノ発生原因タル法律行為カ虚偽表示ナリトスルモ其ノ有効無効ハ債権者ノ保全セントスル債権ノ成否ニハ何等影響ナキヲ以テ債権者ハ民法第九十四条第二項ニ所謂第三者ニ該当セス相手方ハ債権者ニ対シテモ其ノ善意ナリシト否トニ拘ラス右法律行為カ虚偽ノ意思表示ニ因ル無効ノモノナルコトヲ以テ対抗シ得ルモノト解セサルヘカラス」

最判昭和48年6月28日は

「上告人は、その所有の未登記建物である本件建物が固定資産課税台帳に上告人の夫張山幸吉の所有名義で登録されていたのを知りながら、長年これを黙認していたところ、被上告人は右所有名義により本件建物が張山の所有に属するものと信じて、張山に対する債権に基づきこれを差し押えたというのであり、右事実の認定は原判決挙示の証拠に照らし、首肯することができる。
 ところで、未登記建物の所有者が旧家屋台帳法(昭和二二年法律第三一号)による家屋台帳にその建物が他人の所有名義で登録されていることを知りながら、これを明示または黙示に承認していた場合には、民法九四条二項の類推適用により、所有者は、右台帳上の名義人から権利の設定を受けた善意の第三者に対し、右名義人が所有権を有しないことをもつて対抗することができないと解すべきことは,当裁判所の判例とするところである(最高裁昭和四二年(オ)第一二〇九、一二一〇号同四五年四月一六日第一小法廷判決・民集二四巻四号二六六頁)。そして固定資産課税台帳は、本来課税のために作成されるものではあるが、未登記建物についての同台帳上の所有名義は、建物の所有権帰属の外形を表示するものとなつているのであるから、この外形を信頼した善意の第三者は右と同様の法理によつて保護されるべきものと解するのが相当である。
 そうすると、前記事実関係のもとにおいては、上告人は本件建物の所有権が張山にないことをもつて被上告人に対抗することはできないものというべきであり、これと結論を同じくする原審の判断は正当として是認することができる。」

最判昭和55年9月11日は

「民法九四条二項所定の第三者の善意・悪意は、同条項の適用の対象となるべき法律関係ごとに当該法律関係につき第三者が利害関係を有するに至つた時期を基準として決すべきものと解するのが相当であるところ、本件反訴において、上告人は、転抵当権を行使するのではなく、その主張の貸金債権についての債務名義である和解調書に基づく強制執行として得た債権差押及び取立命令による取立権を行使するものであるから、上告人が本件原抵当権の被担保債権である貸付金債権七〇〇万円のうち四九五万一〇〇〇円について利害関係を有するに至つたのは、上告人が訴外原に右金員を貸し付けて転抵当権の設定を受けた時ではなく、上告人がこれにつき債権差押命令を得た昭和五〇年一一月二六日である、と解すべきものである。しかるところ、原審の確定するところによれば、本件原抵当権及びその被担保債権が仮装のものであることを主張して本件転抵当権設定登記の抹消を求める被上告人の本訴の訴状が上告人に送達されたのは昭和四九年七月一九日であり、その後の訴訟の経過により、上告人は、前記債権差押命令を得た当時、本件原抵当権が虚偽表示によるものであつて、その被担保債権が存在しないことを知つていた、というのであるから、上告人がその差押にかかる四九五万一〇〇〇円の債権が存在しなかつたことについて民法九四条二項所定の善意の第三者といえないことは明らかである。してみれば、これと同旨の判断のもとに上告人の反訴請求を排斥した原審の判断は、正当である。」

と、判示しています。


3について、民法107条は

「代理人が自己又は第三者の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をした場合において、相手方がその目的を知り、又は知ることができたときは、その行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。」

と、規定しています。


したがって、上記記述は、2が誤りで、3が正しいです。