刑事裁判の歴史と展望あれこれ💖

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しほうちゃれんじ 1854

乙:今日の問題は、新司法試験平成19年民事系第24問2と3です。

Aは その所有する甲土地をBに売却する契約(以下,「本契約」という。) を結び,BはAに手付を交付した。A又はBが手付により解除することができるかどうかに関する(中略)
2. 甲土地は乙土地の一部であったが,Aが乙土地から甲土地を分筆する登記手続をしたときは,Bは,本契約を手付により解除することはできない。
3. Bが手付のほか内金をAに支払った後に,Bが本契約を手付により解除する場合,Bは,A
に対し内金の返還を請求することはできない。

甲先生、よろしくお願いします!
こ、甲先生!?


甲:I slightly fall for
some real life

出典:https://youtu.be/ylC39vIvwUM

感想:アルクによると、fall forには〔策略・宣伝文句などに〕だまされる、引っ掛かる、つられる、はまるなどの意味もあります。


乙:2について、最大判昭和40年11月24日は

「民法五五七条一項にいう履行の着手とは、債務の内容たる給付の実行に着手すること、すなわち、客観的に外部から認識し得るような形で履行行為の一部をなし又は履行の提供をするために欠くことのできない前提行為をした場合を指すもの」

と、判示しています。


3について、民法557条1項は

「買主が売主に手付を交付したときは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる。ただし、その相手方が契約の履行に着手した後は、この限りでない。」

同法703条は

「法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。」

と、規定しています。

最大判昭和40年11月24日は

「解約手附の交付があつた場合には、特別の規定がなければ、当事者双方は、履行のあるまでは自由に契約を解除する権利を有しているものと解すべきである。然るに、当事者の一方が既に履行に着手したときは、その当事者は、履行の着手に必要な費用を支出しただけでなく、契約の履行に多くの期待を寄せていたわけであるから、若しかような段階において、相手方から契約が解除されたならば、履行に着手した当事者は不測の損害を蒙ることとなる。従つて、かような履行に着手した当事者が不測の損害を蒙ることを防止するため、特に民法五五七条一項の規定が設けられたものと解するのが相当である。
 同条項の立法趣旨を右のように解するときは、同条項は、履行に着手した当事者に対して解除権を行使することを禁止する趣旨と解すべく、従つて、未だ履行に着手していない当事者に対しては、自由に解除権を行使し得るものというべきである。このことは、解除権を行使する当事者が自ら履行に着手していた場合においても、同様である。すなわち、未だ履行に着手していない当事者は、契約を解除されても、自らは何ら履行に着手していないのであるから、これがため不測の損害を蒙るということはなく、仮に何らかの損害を蒙るとしても、損害賠償の予定を兼ねている解約手附を取得し又はその倍額の償還を受けることにより、その損害は填補されるのであり、解約手附契約に基づく解除権の行使を甘受すべき立場にあるものである。他方、解除権を行使する当事者は、たとえ履行に着手していても、自らその着手に要した出費を犠牲にし、更に手附を放棄し又はその倍額の償還をしても、なおあえて契約を解除したいというのであり、それは元来有している解除権を行使するものにほかならないばかりでなく、これがため相手方には何らの損害をも与えないのであるから、右五五七条一項の立法趣旨に徴しても、かような場合に、解除権の行使を禁止すべき理由はなく、また、自ら履行に着手したからといつて、これをもつて、自己の解除権を放棄したものと擬制すべき法的根拠もない。」

と、判示しています。


したがって、上記記述は、2が正しく、3が誤りです。