刑事裁判の歴史と展望あれこれ💖

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しほうちゃれんじ 1863

乙:今日の問題は、新司法試験平成22年民事系第24問アとイです。

Aが所有する土地をAから建物所有目的で賃借したBが,同土地上に自ら建築して所有する建物
をCに賃貸して引き渡した場合に関する(中略)
ア.BがCに対し建物を賃貸することをAが承諾していない場合において,Aは,この建物賃貸
がBのAに対する背信行為でないと認められる特別の事情のあるときを除き,Cに対し建物の
明渡しを請求することができる。
イ.AとBが土地の賃貸借を解除する旨の合意をした場合において,Aは,特別の事情のない限
り,Cに対し土地の賃貸借の終了を主張することができない。

甲先生、よろしくお願いします!
こ、甲先生!?


甲:Well maybe I'm just mistaken

出典:https://genius.com/The-killers-the-world-we-live-in-lyrics

感想:I just mistakeと言ってしまいそうです。


乙:アについて、民法612条は

「賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
2 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。」

と、規定しています。

大判昭和8年12月11日は

「民法第六百十二條ニ賃貸解除ノ原因トシテ規定スル轉貸トハ貸借人カ賃借物ニ付キ第三者ト賃貸借契約ヲナスモノナルコト洵ニ明瞭ナリ而シテ同條第二項ハ右轉貸ノ存スルノミナラス第三者ヲシテ賃借物ノ使用又ハ收益ヲナサシメタル場合ニ賃貸人ハ賃貸借契約ヲ解除シ得ヘキモノナルコト一點ノ疑存セサル點ナリ」

と、判示しています。


イについて、最判昭和38年2月21日は

「たとえ上告人と訴外稲田文作との間で、右借地契約を合意解除し、これを消滅せしめても、特段の事情がない限りは、上告人は、右合意解除の効果を、被上告人に対抗し得ない」

「建物所有を目的とする土地の賃貸借においては、土地賃貸人は、土地賃借人が、その借地上に建物を建築所有して自らこれに居住することばかりでなく、反対の特約がないかぎりは、他にこれを賃貸し、建物賃借人をしてその敷地を占有使用せしめることをも当然に予想し、かつ認容しているものとみるべきであるから、建物賃借人は、当該建物の使用に必要な範囲において、その敷地の使用収益をなす権利を有するとともに、この権利を土地賃貸人に対し主張し得るものというべく、右権利は土地賃借人がその有する借地権を抛棄することによつて勝手に消滅せしめ得ないものと解するのを相当とするところ、土地賃貸人とその賃借人との合意をもつて賃貸借契約を解除した本件のような場合には賃借人において自らその借地権を抛棄したことになるのであるから、これをもつて第三者たる被上告人に対抗し得ないものと解すべきであり、このことは民法三九八条、五三八条の法理からも推論することができるし、信義誠実の原則に照しても当然のことだからである。(昭和九年三月七日大審院判決、民集一三巻二七八頁、昭和三七年二月一日当裁判所第一小法廷判決、最高裁判所民事裁判集五八巻四四一頁各参照)。」

と、判示しています。


したがって、上記記述は、アが誤りで、イが正しいです。