刑事裁判の歴史と展望あれこれ💖

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しほうちゃれんじ 1878

乙:今日の問題は、新司法試験平成19年民事系第19問イウエオです。

詐害行為取消権に関する(中略)
イ. 共同相続人の間で成立した遺産分割協議は,詐害行為取消権行使の対象となり得る。
ウ. 債務者と受益者との間の不動産売買契約が債権者の債権発生前にされた場合であっても,そ
の所有権移転登記が債権者の債権発生後になされたときは,当該売買契約は,詐害行為取消権
行使の対象となり得る。
エ. 離婚に伴う財産分与は詐害行為取消権行使の対象となることはないが,離婚に伴う慰謝料支
払の合意は詐害行為取消権行使の対象となることがある。
オ. 不動産が債務者から受益者へ,受益者から転得者へと順次譲渡された場合において,債権者が,債務者の一般財産を回復させるため,受益者を被告として,債務者と受益者との間の譲渡行為を詐害行為として取り消すときは,価格賠償を請求しなければならない。

甲先生、よろしくお願いします!
こ、甲先生!?


甲:Can we go back in time

出典:https://genius.com/Paris-youth-foundation-twenty-two-lyrics

感想:アルクによると、in timeは、時間内に、間に合ってなどの意味です。


乙:イについて、最判平成11年6月11日は

「遺産分割協議は、詐害行為取消権行使の対象となり得るものと解するのが相当である。けだし、遺産分割協議は、相続の開始によって共同相続人の共有となった相続財産について、その全部又は一部を、各相続人の単独所有とし、又は新たな共有関係に移行させることによって、相続財産の帰属を確定させるものであり、その性質上、財産権を目的とする法律行為であるということができるからである。」

と、判示しています。


ウについて、最判昭和55年1月24日は

「債務者の行為が詐害行為として債権者による取消の対象となるためには、その行為が右債権者の債権の発生後にされたものであることを必要とするから、詐害行為と主張される不動産物権の譲渡行為が債権者の債権成立前にされたものである場合には、たといその登記が右債権成立後にされたときであつても、債権者において取消権を行使するに由はない(大審院大正六年(オ)第五三八号同年一〇月三〇日判決・民録二三輯一六二四頁参照)。
けだし、物権の譲渡行為とこれについての登記とはもとより別個の行為であつて、後者は単にその時からはじめて物権の移転を第三者に対抗しうる効果を生ぜしめるにすぎず、登記の時に右物権移転行為がされたこととなつたり、物権移転の効果が生じたりするわけのものではないし、また、物権移転行為自体が詐害行為を構成しない以上、これについてされた登記のみを切り離して詐害行為として取扱い、これに対する詐害行為取消権の行使を認めることも、相当とはいい難いからである(破産法七四条、会社更生法八〇条の規定は、これらの手続の特殊性にかんがみて特に設けられた規定であつて、これを民法上の詐害行為取消の場合に類推することはできない。)。」

と、判示しています。


エについて、民法768条は

「協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。
2 前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から二年を経過したときは、この限りでない。
3 前項の場合には、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。」

と、規定しています。

最判昭和58年12月19日は

「民法七六八条三項の規定の趣旨に反して不相当に過大であり、財産分与に仮託してされた財産処分であると認めるに足りるような特段の事情のない限り、詐害行為として、債権者による取消の対象となりえない」

最判平成12年3月9日は

「離婚に伴う慰謝料を支払う旨の合意は、配偶者の一方が、その有責行為及びこれによって離婚のやむなきに至ったことを理由として発生した損害賠償債務の存在を確認し、賠償額を確定してその支払を約する行為であって、新たに創設的に債務を負担するものとはいえないから、詐害行為とはならない。しかしながら、当該配偶者が負担すべき損害賠償債務の額を超えた金額の慰謝料を支払う旨の合意がされたときは、その合意のうち右損害賠償債務の額を超えた部分については、慰謝料支払の名を借りた金銭の贈与契約ないし対価を欠いた新たな債務負担行為というべきであるから、詐害行為取消権行使の対象となり得る」

と、判示しています。


オについて、民法424条の6は

「債権者は、受益者に対する詐害行為取消請求において、債務者がした行為の取消しとともに、その行為によって受益者に移転した財産の返還を請求することができる。受益者がその財産の返還をすることが困難であるときは、債権者は、その価額の償還を請求することができる。
2 債権者は、転得者に対する詐害行為取消請求において、債務者がした行為の取消しとともに、転得者が転得した財産の返還を請求することができる。転得者がその財産の返還をすることが困難であるときは、債権者は、その価額の償還を請求することができる。」

と、規定しています。


したがって、上記記述は、イとオが正しく、ウとエが誤りです。