刑事裁判の歴史と展望あれこれ💖

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しほうちゃれんじ 2163

乙:Come back to me, baby, we can work this out

出典:https://youtu.be/-rey3m8SWQI

感想:アルクによると、work outは、苦労してやり遂げる、などの意味です。


今日の問題は、予備試験令和元年刑法第7問イとエです。

次の各【見解】と後記の各【事例】を前提として,後記アからエまでの各【記述】を検討し,
(中略)
【見解】
A.行為当時,客観的に存在した全ての事情及び行為後に生じた事情のうち一般人が予見できた事情を判断の基礎とし,その行為から結果が発生することが相当であると認められる場合に因果関係を肯定する。
B.一般人が認識・予見できたであろう事情及び行為者が認識・予見していた事情を判断の基礎とし,その行為から結果が発生することが相当であると認められる場合に因果関係を肯定する。
C.行為の危険性が結果へと現実化したといえる場合に因果関係を肯定する。行為の危険性は行
為時に存在した全ての事情を基礎として判断する。
【事例】
Ⅰ.甲は,乙の顔面を手拳で1回殴打した。その殴打は,それだけで一般に人を死亡させるほど
の強さではなかったが,乙はもともと特殊な病気により脳組織が脆弱となっており,その1回
の殴打で脳組織が崩壊し,その結果,乙が死亡した。
Ⅱ.甲は,乙の首をナイフで突き刺し,直ちに治療しなければ数時間のうちに死亡するほどの出
血を来す傷害を負わせた。乙は,直ちに病院で適切な医療処置を受け,一旦容体が安定したが,
その後,医師の指示に従わず安静に努めなかったため,治療の効果が減殺され,前記傷害に基
づき死亡した。
Ⅲ.甲は,路上で乙の頭部を激しく殴打し,直ちに治療しなければ1日後には死亡するほどの脳
出血を伴う傷害を負わせ,倒れたまま動けない乙を残して立ち去った。そこへたまたま通り掛
かった無関係の通行人が,乙の腹部を多数回蹴って,内臓を破裂させ,数時間後に乙は内臓破
裂により死亡した。
【記述】
甲の行為と乙の死亡との間の因果関係については,
イ.Ⅰの事例で,行為当時,乙は特殊な病気により脳組織が脆弱となっていることを一般人は認
識できず,甲も認識していなかったが,甲はこれを認識できた場合,AからCまでのいずれの
見解からも肯定される。
エ.Ⅲの事例で,行為当時,乙が通行人に蹴られることを一般人は予見できず,甲も予見してい
なかった場合,AからCまでのいずれの見解からも否定される。

甲先生、よろしくお願いします!


甲:イについて

「A及びCの見解では,行為時に存在した全ての事情が判断の基礎となる。行為時に乙は脳組織が脆弱となっていたので,この事情は判断の基礎となる。そのためA及びCの見解では,因果関係が肯定される。
一方,Bの見解では,「一般人が認識・予見できたであろう事情及び行為者が認識・予見していた事情」を判断の基礎とする。
行為当時,乙は特殊な病気により脳組織が脆弱となっていることを一般人は認識できず,甲も認識していなかったのであるから,乙の脳組織が脆弱となっていたことは,判断の基礎とはならない。そのため,Bの見解では,因果関係が否定される。」

資格スクエア「予備試験短答式試験問題 令和元年 刑法」368頁


エについて

「乙が通行人に蹴られることを「一般人は予見できず」ということなので,Aの見解では,これは判断の基礎とならない。そして,甲が乙の頭部を殴打した行為により,乙が内臓破裂により死亡したことは相当とは認められない。
そのため,Aの見解からは因果関係が否定される。
乙が通行人に蹴られることを「一般人は予見できず,甲も予見していなかった」のであるから,Bの見解では,これは判断の基礎とならない。そのため,Bの見解からは因果関係が否定される。
Cの見解からは,行為の危険性の現実化を検討することになる。甲の行為は,脳出血を伴う傷害であるが,実際に生じた乙の死因は,たまたま通り掛かった無関係の通行人が,乙の腹部を多数回蹴ったことにより生じた内臓破裂である。そのため,この乙の死の結果は,甲の行為の危険が現実したものではない。すなわち,因果関係が否定される。」

同上369頁


したがって、上記記述は、イが誤りで、エが正しいです。