刑事裁判の歴史と展望あれこれ💖

刑事裁判の歴史と展望あれこれを広めます https://mementomo.hatenablog.com/entry/39862573

しほうちゃれんじ 2340

乙:今日の問題は、令和4年予備試験民事訴訟法第33問イです。

 

既判力に関する(中略)
イ.XがYに対して提起した500万円の貸金の返還を求める訴え(前訴)について、Yによる限定承認の抗弁を容れ、Yに対して相続によって得た財産の限度で500万円の支払を命ずる判決が確定した後、XがYに対して相続財産の範囲にかかわらず前記貸金の返還を求める訴え(後訴)を提起した場合に、後訴裁判所が、前訴基準時前の法定単純承認事由に基づき、Yに対して相続財産の範囲にかかわらず500万円の支払を命ずることは、前訴の確定判決の既判力に抵触し、許されない。

 

甲先生、よろしくお願いします!

こ、甲先生!?

 

甲:I can't help it I'm so jealous and babe, this is driving me insane
'Cause you just like pretty girls, pretty girls, pretty girls

 

出典:https://www.lyricsbox.com/alice-pisano-pretty-girls-lyrics-l733hj5.html

 

感想:アルクによると、drive someone insaneは、(人)を混乱させる、という意味です。

 

乙:民法921条は

 

「次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
一 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第六百二条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。
二 相続人が第九百十五条第一項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。
三 相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。」

 

と、規定しています。

 

最判昭和49年4月26日は

 

「 ところで、右のように相続財産の限度で支払を命じた、いわゆる留保付判決が確
定した後において、債権者が、右訴訟の第二審口頭弁論終結時以前に存在した限定承認と相容れない事実(たとえば民法九二一条の法定単純承認の事実)を主張して、右債権につき無留保の判決を得るため新たに訴を提起することは許されないものと解すべきである。けだし、前訴の訴訟物は、直接には、給付請求権即ち債権(相続債務)の存在及びその範囲であるが、限定承認の存在及び効力も、これに準ずるものとして審理判断されるのみならず、限定承認が認められたときは前述のように主文においてそのことが明示されるのであるから、限定承認の存在及び効力についての前訴の判断に関しては、既判力に準ずる効力があると考えるべきであるし、また民訴法五四五条二項によると、確定判決に対する請求異議の訴は、異議を主張することを要する口頭弁論の終結後に生じた原因に基づいてのみ提起することができるとされているが、その法意は、権利関係の安定、訴訟経済及び訴訟上の信義則等の観点から、判決の基礎となる口頭弁論において主張することのできた事由に基づいて判決の効力をその確定後に左右することは許されないとするにあると解すべきであり、右趣旨に照らすと、債権者が前訴において主張することのできた前述のごとき事実を主張して、前訴の確定判決が認めた限定承認の存在及び効力を争うことも同様に許されないものと考えられるからである。
 そして、右のことは、債権者の給付請求に対し相続人から限定承認の主張が提出され、これが認められて留保付判決がされた場合であると、債権者がみずから留保付で請求をし留保付判決がされた場合であるとによつて異なるところはないと解すべきである。
 これを本件についてみるに、原審の適法に確定したところによると、本訴請求中「被上告人B1に対し金一五九万五〇〇〇円及び内金二二万三〇〇〇円に対する昭和三〇年三月二五日以降支払ずみにいたるまで年五分の割合による遅延損害金、被上告人B2、同B3に対し各金一〇六万三三三三円三三銭及び内金一四万八六六六円六六銭に対する前同日以降支払ずみにいたるまで年五分の割合による遅延損害金」の支払を求める部分については、先に本件上告人を原告とし亡Dの相続財産管理人B1を被告とする前訴(東京地方裁判所昭和三一年(ワ)第五八六七号、東京高等裁判所昭和三五年(ネ)第一〇八九号、最高裁判所昭和三九年(オ)第八八〇号、第八八一号)において、「相続財産の限度で……支払え」との給付判決が確定しており、Dの相続財産管理人に対する右判決の効力が相続分に応じDの相続人である右被上告人らに及ぶことは明らかである。そして、上告人が本訴で主張する法定単純承認の事由は、前訴の第二審口頭弁論終結時以前に存在していた事実であるというのであるから、上告人の右主張は前訴の確定判決に牴触し、またこれに遮断されて許されず、本訴請求中前記部分は不適法として却下を免れないといわなければならない。」

 

と、判示しています。

 

 

したがって、上記記述は、誤りです。