乙：今日の問題は、旧司法試験からです。
Ａは，Ｂに対し，一戸建ての甲建物を住居として使用するとの約定で賃貸している。Ａは，Ｂが半年間賃料の支払を怠っていたが，そのまま放置しておき，この事実を告げることなく，Ｃに対し甲建物を売却し，所有権移転登記手続をした。その直後，ＢがＡに賃料を滞納していた事実を知ったＣは，Ｂに対し，催告の上，賃料不払を理由に賃貸借契約を解除することができる。
甲先生、よろしくお願いします！
こ、甲先生！？
甲：福袋買うのはしゃくや、なんちゃって。
乙：借地借家法31条1項は
「建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対し、その効力を生ずる。」
と、規定しています。
大判昭和12年5月7日は
「原判決ハ上告人ニ於テ訴外畑山喜三郎カ被上告人ニ賃貸シ居リタル本件土地ヲ右訴外人ヨリ買受ケ之カ所有権ヲ取得シタル事実並右畑山喜三郎カ被上告人ニ対シ有シタル右土地ノ延滞賃料債権ヲ譲受ケタル事実ヲ認定シタル上上告人カ右賃貸借契約上ノ地位権利一切ヲ承継スルニ付被上告人ノ承諾ヲ得タルコトハ之ヲ認ムルニ足ル確証ナキ旨判示シ「凡ソ賃貸中ニ係ル土地ニ付所有権譲渡アリテ譲渡人、譲受人、賃借人ノ三者合意ノ上新所有者ト賃借人トノ間ニ賃貸借契約ヲ存続セシムルコトトナリタル場合ハ唯爾後ノ賃貸借関係ハ土地譲受人ト賃借人トノ間ニ存続」スルニ過キスシテ賃貸借承継前ニ発生シタル賃料ハ「承継後新賃貸人ト賃借人トノ間ニ於ケル賃借物ノ利用トハ何等対価ノ関係ニ在ルモノニ非サル」ヲ以テ右賃料債務ノ不履行ヲ理由トシテ新賃貸人ハ契約ヲ解除シ得サルモノト為シ以テ上告人ノ被上告人ニ対スル建物収去土地明渡及損害金ノ請求ヲ排斥シタルモノトス然レトモ上告人カ訴外畑山喜三郎ヨリ本件土地ヲ買受ケ其ノ所有権ヲ取得スルト同時ニ「同訴外人ノ被告（被上告人）ニ対スル賃貸借契約上ノ地位ヲ承継シタルコト」ハ被上告人ノ認メテ争ワサル事実ナルコト記録上明瞭ニシテ而モ賃貸借ノ目的タル土地ノ所有権ヲ賃貸人タル所有者ヨリ取得シタル者カ引続キ該土地ヲ賃借人ニ賃貸使用セシムル場合ハ（一）土地取得者ト賃借人トノ間ニ於テ新ナル賃貸借契約ヲ締結スルコトアルヘク或ハ然ラスシテ（二）賃貸人ト土地取得者トノ間ニ土地取得者ヲ以テ賃貸人ノ地位ニ代ラシムル合意アリテ賃借人カ其ノ更替ヲ承認シ従来ノ賃貸借関係カ土地取得者ト賃借人トノ間ノ賃貸借関係ト為ルコトモアルヘキヲ以テ（大正六年（オ）第九五七号同年十二月十九日当院判決参照）右賃貸借契約上ノ地位ノ承継カ前記（二）ニ説示スルカ如ク従来ノ賃貸借関係ヲ承継シタリトノ趣旨ナリトモセハ賃貸借ハ承継ノ前後ニ於テ同一ナルカ故ニ其ノ承継前ニ発生シタル賃料ト雖承継後仍オ之ヲ承継ニ係ル現存ノ賃貸借関係ヨリ発生シタル賃料ナリト謂ウヲ妨ケサルヘク従テ苟モ新賃貸人ニ於テ該賃料債権ノ譲渡ヲ受ケタル以上其ノ債務ノ不履行ヲ理由トシテ賃貸借契約ヲ解除シ得ヘキモノト謂ワサルヘカラス果シテ然ラハ当事者間ニ争ナキ本件賃貸借契約上ノ地位ノ承継カ前記孰レノ場合ニ該当スルヤニ付何等判示スルトコロナク輒ク上告人ノ前記請求ヲ排斥シタル原判決ハ審理不尽ニ非サレハ即理由不備ノ違法アルヲ以テ破毀ヲ免レス」
と、判示しています。
本件では、ＣはＡから延滞賃料債権を譲り受けていません。
したがって、上記記述は、誤りです。
