乙:新しいスマホほしいなー。
今日の問題は、4問あります。
イ. 不確定期限の定めのある債権の消滅時効は,債務者が期限の到来を知った時から進行する。
ウ. 債務不履行による損害賠償請求権の消滅時効は,本来の債務の履行を請求することができる時から進行する。
エ. 割賦払債務について,債務者が割賦金の支払を怠ったときは債権者の請求により直ちに残債務全額を弁済すべき旨の約定がある場合には,債務者が割賦金の支払を怠った時から,残債務全額についての消滅時効が進行する。
オ. 留置権者が留置物の占有を継続している間であっても,その被担保債権についての消滅時効は進行する。
甲先生、よろしくお願いします!
こ、甲先生!?
甲:スマホは自分でどうにかして。。
乙:イについて、民法166条1項は
「消滅時効は、権利を行使することができる時から進行する。」
同法412条2項は
「債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来したことを知った時から遅滞の責任を負う。」
と、規定しています。
ウについて、最判平成10年4月24日は
「契約に基づく債務について不履行があったことによる損害賠償請求権は、本来の履行請求権の拡張ないし内容の変更であって、本来の履行請求権と法的に同一性を有すると見ることができるから、債務者の責めに帰すべき債務の履行不能によって生ずる損害賠償請求権の消滅時効は、本来の債務の履行を請求し得る時からその進行を開始する」
と、判示しています。
エについて、最判昭和42年6月23日は
「割賦金弁済契約において、割賦払の約定に違反したときは債務者は債権者の請求により償還期限にかかわらず直ちに残債務全額を弁済すべき旨の約定が存する場合には、一回の不履行があつても、各割賦金額につき約定弁済期の到来毎に順次消滅時効が進行し、債権者が特に残債務全額の弁済を求める旨み意思表示をした場合にかぎり、その時から右全額について消滅時効が進行する」
と、判示しています。
オについて、民法300条は
「留置権の行使は、債権の消滅時効の進行を妨げない。」
と、規定しています。
最大判昭和38年10月30日は
「民法三〇〇条は「留置権ノ行使ハ債権ノ消滅時効ノ進行ヲ妨ケス」と規定する。
その趣旨は、留置権によつて目的物を留置するだけでは、留置権の行使に止り、被担保債権の行使ではないから、被担保債権の消滅時効の中断、停止の効力を生ずるものでないことを規定したものと解するのを相当とする。従つて、単に留置物を占有するに止らず、留置権に基づいて被担保債権の債務者に対して目的物の引渡を拒絶するに当り、被担保債権の存在を主張し、これが権利の主張をなす意思が明らかである場合には、留置権行使と別個なものとしての被担保債権行使ありとして民法一四七条一号の時効中断の事由があるものと認めても、前記三〇〇条に反するものとはなし得ない。」
と、判示しています。
したがって、上記記述はウとオが正しく、イとエが誤りです。