刑事裁判の歴史と展望あれこれ💖

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しほうちゃれんじ 502

乙:甲先生に、ブルーヒルズハニーかなんかをあげたいです。

今日の問題は、4問あります。

イ.A銀行は,Bに帰属している預金を誤ってCに払い戻したものの,その払戻しについて過失があった場合,その預金について,Bへの払戻しをしていないときでも,Cに対し,支払った金員の返還を請求することができる。
ウ.債権者Aが債務者Bに対する債権を被担保債権としてC所有の不動産の上に抵当権の設定を受けたが,当該抵当権は,Bが権限なくCを代理して設定したものであった場合,その抵当権の実行により不動産の所有権を喪失したCは,抵当権の実行手続において配当を受けたAに対し,不当利得の返還を請求することはできない。
エ.債務者Aが,第三者Bから横領した金銭を自己の金銭と識別することができない状態にした上,その金銭で自己の債権者Cに対する債務の弁済に充てた場合であっても,社会通念上,Bの金銭でCの利益を図ったと認めるに足りる連結があり,CがAの横領を知り,又は知らなかったことについて重大な過失があるときは,Bは,Cに対し,不当利得の返還を請求することができる。
オ.AがBに不法な原因のために土地を譲渡し,所有権移転登記をした場合,Aは,Bに対し,不当利得に基づきその返還を請求することができないときであっても,土地の所有権に基づき,所有権移転登記の抹消を請求することができる。


甲先生、よろしくお願いします!

こ、甲先生!?

甲:杉並アニメーションミュージアムは、もちろんおすすめだし、なんどでもいくといいよ。

乙:イについて、最判平成17年7月11日は

「被上告人らは,本件預金のうち己の法定相続分相当額の預金については,これを受領する権限がなかったにもかかわらず,払戻しを受けたものであり,また,この払戻しが債権の準占有者に対する弁済に当たるということもできないというのである。そうすると,本件払戻しのうち己の法定相続分相当額の預金の払戻しは弁済としての効力がなく,己は,本件預金債権のうち自己の法定相続分に相当する預金債権を失わないことになる。したがって,上告人は,本件払戻しをしたことにより,本件預金のうち己の法定相続分に相当する金員の損失を被ったことは明らかである。そして,本件払戻しにより被上告人らが己の法定相続分に相当する金員を利得したこと,被上告人らの利得については法律上の原因が存在しないこともまた明らかである。したがって,上告人は,被上告人らに対し,本件払戻しをした時点において,本件預金のうち己の法定相続分に相当する金員について,被上告人らに対する不当利得返還請求権を取得したものというべきである。」


と、判示しています。

ウについて、民法703条は

「法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。」

と、規定しています。

最判昭和63年7月1日は

「債権者が第三者所有の不動産のうえに設定を受けた根抵当権が不存在であるにもかかわらず、その根抵当権の実行による競売の結果、買受人の代金納付により右第三者が不動産の所有権を喪失したときは、その第三者は、売却代金から弁済金の交付を受けた債権者に対し民法七〇三条の規定に基づく不当利得返還請求権を有する」

と、判示しています。

エについて、最判昭和49年9月26日は

「およそ不当利得の制度は、ある人の財産的利得が法律上の原因ないし正当な理由を欠く場合に、法律が、公平の観念に基づいて、利得者にその利得の返還義務を負 担させるものであるが、いま甲が、乙から金銭を騙取又は横領して、その金銭で自己の債権者丙に対する債務を弁済した場合に、乙の丙に対する不当利得返還請求が 認められるかどうかについて考えるに、騙取又は横領された金銭の所有権が丙に移転するまでの間そのまま乙の手中にとどまる場合にだけ、乙の損失と丙の利得との間に因果関係があるとなすべきではなく、甲が騙取又は横領した金銭をそのまま丙の利益に使用しようと、あるいはこれを自己の金銭と混同させ又は両替し、あるいは銀行に預入れ、あるいはその一部を他の目的のため費消した後その費消した分を別途工面した金銭によつて補填する等してから、丙のために使用しようと、社会通念上乙の金銭で丙の利益をはかつたと認められるだけの連結がある場合には、なお不当利得の成立に必要な因果関係があるものと解すべきであり、また、丙が甲から右の金銭を受領するにつき悪意又は重大な過失がある場合には、丙の右金銭の取得は、被騙取者又は被横領者たる乙に対する関係においては、法律上の原因がなく、不当利得となるものと解するのが相当である。」

と、判示しています。

オについて、民法708条は

「不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない。」

と、規定しています。

最大判昭和45年10月21日は


「贈与が無効であり、したがつて、右贈与による所有権の移転は認められない場合であつても、被上告人がした該贈与に基づく履行行為が民法七〇八条本文にいわゆる不法原因給付に当たるときは、本件建物の所有権は上告人に帰属するにいたつたものと解するのが相当である。けだし、同条は、みずから反社会的な行為をした者に対しては、その行為の結果の復旧を訴求することを許さない趣旨を規定したものと認められるから、給付者は、不当利得に基づく返還請求をすることが許されないばかりでなく、目的物の所有権が自己にあることを理由として、給付した物の返還を請求することも許されない筋合であるというべきである。かように、贈与者において給付した物の返還を請求できなくなつたときは、その反射的効果として、目的物の所有権は贈与者の手を離れて受贈者に帰属するにいたつたものと解するのが、最も事柄の実質に適合し、かつ、法律関係を明確ならしめる所以と考えられるからである。
ところで、原判決によれば、被上告人は、本件建物について昭和三一年一一月一〇日附で同人名義の所有権保存登記を経由したのであるが、右登記は、被上告人が本件建物の所有権を有しないにもかかわらず、上告人らに対する右建物の明渡請求訴訟を自己に有利に導くため経由したもので、もともと実体関係に符合しない無効な登記といわなければならず、本件においては他にこれを有効と解すべき事情はない。そして、前述のように、不法原因給付の効果として本件未登記建物の所有権が上告人に帰属したことが認められる以上、上告人が被上告人に対しその所有権に基づいて右所有権保存登記の抹消登記手続を求めることは、不動産物権に関する法制の建前からいつて許されるものと解すべきであつてこれを拒否すべき理由は何ら存しない。そうとすれば、本件不動産の権利関係を実体に符合させるため、上告人が右保存登記の抹消を得たうえ、改めて自己の名で保存登記手続をすることに代え、被上告人に対し所有権移転登記手続を求める本件反訴請求は、正当として認容すべきものである。」

と、判示しています。

したがって、上記記述は、イとエが正しく、ウとオが誤りです。