刑事裁判の歴史と展望あれこれ💖

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しほうちゃれんじ 569

乙:甲先生、インベスって、どういう意味でしょうか。

今日の問題は、2問あります。

選挙権行使の保障に関し問題となるものとして,在宅投票制度や在外選挙制度がある。
最高裁判所は,在宅投票制度を廃止し,その後復活しないことの違憲性が争われた訴訟において,立法不作為を含む立法内容の違憲性と国家賠償法第1条第1項との関係について【国家賠償法第1条第1項の適用上違法となるかどうかは,国会議員の立法過程における行動が個別の国民に対して負う職務上の法的義務に違背したかどうかの問題であり,当該立法内容の違憲性の問題とは区別される】旨述べた上,同項の適用上どのような場合に国会議員の立法活動が違法の評価を受けるかについて【B】 旨判示した。
最高裁判所は,その後,在外選挙制度の違憲性が争われた訴訟において,まず,在外選挙制度の憲法適合性について【平成10年の公職選挙法改正で在外選挙制度が創設されたが,その対象が衆議院と参議院の比例代表選挙に限られている点で,遅くとも本判決言渡し後に初めて行われる衆議院議員の総選挙又は参議院議員の通常選挙の時点において,憲法に違反する】旨判断し,さらに,国会議員の立法活動が国家賠償法第1条第1項の適用上違法の評価を受けるかについて 【国家賠償法第1条第1項の適用上違法となるかどうかは,国会議員の立法過程における行動が個別の国民に対して負う職務上の法的義務に違背したかどうかの問題であり,当該立法内容の違憲性の問題とは区別される】旨述べた上で【D】旨判示した。

1. 国会議員は国民に対して違憲の立法をしない法的義務を負っており,立法内容が違憲の場合,国会議員の立法又は立法不作為は原則として国家賠償法第1条第1項の適用上違法となる
3.立法内容が憲法の一義的な文言に違反しているにもかかわらずあえて当該立法を行うような,容易に想定し難い例外的な場合でない限り,国家賠償法第1条第1項の適用上違法の評価を受けない
4. 立法内容が国民に憲法上保障された権利を違法に侵害することが明白な場合や,国民に憲法上保障された権利行使の機会を確保するには所要の立法措置が必要不可欠で,それが明白なのに,国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合などには,例外的に,国家賠償法第1条第1項の規定の適用上,違法の評価を受ける
5. 在外国民に国政選挙での投票を認めないことは憲法に違反しており,平成10年の公職選挙法改正で在外選挙制度が創設されたが,その対象が衆議院と参議院の比例代表選挙に限られていた点で,従前の違憲状態が継続していた


甲先生、よろしくお願いします!

こ、甲先生!?

甲:(乙さんは、たいだー、ね。。)


乙:最判昭和60年11月21日は

「国会議員は、立法に関しては、原則として、国民全体に対する関係で政治的責任を負うにとどまり、個別の国民の権利に対応した関係での法的義務を負うものではないというべきであつて、国会議員の立法行為は、立法の内容が憲法の一義的な文言に違反しているにもかかわらず国会があえて当該立法を行うというごとき、容易に想定し難いような例外的な場合でない限り、国家賠償法一条一項の規定の適用上、違法の評価を受けないものといわなければならない。
四  これを本件についてみるに、前記のとおり、上告人は、在宅投票制度の設置は憲法の命ずるところであるとの前提に立つて、本件立法行為の違法を主張するのであるが、憲法には在宅投票制度の設置を積極的に命ずる明文の規定が存しないばかりでなく、かえつて、その四七条は「選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律でこれを定める。」と規定しているのであつて、これが投票の方法その他選挙に関する事項の具体的決定を原則として立法府である国会の裁量的権限に任せる趣旨であることは、当裁判所の判例とするところである(昭和三八年(オ)第四二二号同三九年二月五日大法廷判決・民集一八巻二号二七〇頁、昭和四九年(行ツ)第七五号同五一年四月一四日大法廷判決・民集三〇巻三号二二三頁参照)。
そうすると、在宅投票制度を廃止しその後前記八回の選挙までにこれを復活しなかつた本件立法行為につき、これが前示の例外的場合に当たると解すべき余地はなく、結局、本件立法行為は国家賠償法一条一項の適用上違法の評価を受けるものではないといわざるを得ない。」


最大判平成17年9月14日は

「立法の内容又は立法不作為が国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明白な場合や,国民に憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために所要の立法措置を執ることが必要不可欠であり,それが明白であるにもかかわらず,国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合などには,例外的に,国会議員の立法行為又は立法不作為は,国家賠償法1条1項の規定の適用上,違法の評価を受けるものというべきである。最高裁昭和53年(オ)第1240号同60年11月21日第一小法廷判決・民集39巻7号1512頁は,以上と異なる趣旨をいうものではない。
在外国民であった上告人らも国政選挙において投票をする機会を与えられることを憲法上保障されていたのであり,この権利行使の機会を確保するためには,在外選挙制度を設けるなどの立法措置を執ることが必要不可欠であったにもかかわらず,前記事実関係によれば,昭和59年に在外国民の投票を可能にするための法律案が閣議決定されて国会に提出されたものの,同法律案が廃案となった後本件選挙の実施に至るまで10年以上の長きにわたって何らの立法措置も執られなかったのであるから,このような著しい不作為は上記の例外的な場合に当たり,このような場合においては,過失の存在を否定することはできない。このような立法不作為の結果,上告人らは本件選挙において投票をすることができず,これによる精神的苦痛を被ったものというべきである。したがって,本件においては,上記の違法な立法不作為を理由とする国家賠償請求はこれを認容すべきである。」

と、判示しています。


したがって、Bには3、Dには4が入ります。