刑事裁判の歴史と展望あれこれ💖

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しほうちゃれんじ 570

乙:今日の問題は、3問あります。

ア. 憲法第27条の勤労の権利は,これを直接根拠として行政庁に対してその実現を求め得る具体的請求権であるとは解せないものの,立法府が勤労の機会を実質的に確保するため最低限度の立法をしないときには憲法第27条に基づいて立法不作為の違憲確認訴訟を提起できる。
イ. 労働組合の組合員に対する統制権は,労働者の団結権保障の一環として,憲法第28条の精神に由来するものであるが,労働組合が,公職選挙における統一候補を決定し,組合を挙げて選挙運動を推進している場合であっても,組合の方針に反して立候補した組合員を統制違反として処分することは,労働組合の統制権の限界を超えるものとして,違法といわなければならない。
ウ. 労働組合への加入強制の方式の一つとして採用されているユニオン・ショップ協定のうち,使用者とユニオン・ショップ協定を締結している組合(締結組合)以外の他の組合に加入している者や,締結組合から脱退・除名されたが他の組合に加入し又は新たな組合を結成した者について,使用者の解雇義務を定める部分は,労働者の組合選択の自由や他の組合の団結権を侵害するものであり,民法第90条の規定により無効と解すべきである。


甲先生、よろしくお願いします!

こ、甲先生!?

甲:うにおん?


乙:アについて、憲法27条は

「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。
○2 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。
○3 児童は、これを酷使してはならない。」

と、規定しています。

「C説は、国家が必要な立法や施策を講じない場合には、国の不作為による侵害として裁判で争いうるという意味で具体的権利であると解する(大須賀明「勤労の権利」奥平他編・憲法学(3)九四〜九六頁)」

野中俊彦『憲法Ⅰ』523-524頁

イについて、憲法28条は

「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。」

と、規定しています。

最大判昭和43年12月4日は

「憲法上、団結権を保障されている労働組合においては、その組合員に対する組合の統制権は、一般の組織的団体のそれと異なり、労働組合の団結権を確保するために必要であり、かつ、合理的な範囲内においては、労働者の団結権保障の一環として、憲法二八条の精神に由来するものということができる。この意味において、憲法二八条による労働者の団結権保障の効果として、労働組合は、その目的を達成するために必要であり、かつ、合理的な範囲内において、その組合員に対する統制権を有する」

「統一候補以外の組合員で立候補しようとする者に対し、組合が所期の目的を達成するために、立候補を思いとどまるよう、勧告または説得をすることは、組合としても、当然なし得るところである。しかし、当該組合員に対し、勧告または説得の域を超え、立候補を取りやめることを要求し、これに従わないことを理由に当該組合員を統制違反者として処分するがごときは、組合の統制権の限界を超えるものとして、違法といわなければならない。」

と、判示しています。

ウについて、民法90条は

「公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。」

と、規定しています。

最判平成元年12月14日は

「ユニオン・ショップ協定は、労働者が労働組合の組合員たる資格を取得せず又はこれを失った場合に、使用者をして当該労働者との雇用関係を終了させることにより間接的に労働組合の組織の拡大強化を図ろうとするものであるが、他方、労働者には、自らの団結権を行使するため労働組合を選択する自由があり、また、ユニオン・ショップ協定を締結している労働組合(以下「締結組合」という。)の団結権と同様、同協定を締結していない他の労働組合の団結権も等しく尊重されるべきであるから、ユニオン・ショップ協定によって、労働者に対し、解雇の威嚇の下に特定の労働組合への加入を強制することは、それが労働者の組合選択の自由及び他の労働組合の団結権を侵害する場合には許されないものというべきである。したがって、ユニオン・ショップ協定のうち、締結組合以外の他の労働組合に加入している者及び締結組合から脱退し又は除名されたが、他の労働組合に加入し又は新たな労働組合を結成した者について使用者の解雇義務を定める部分は、右の観点からして、民法九〇条の規定により、これを無効と解すべきである(憲法二八条参照)。」

と、判示しています。


したがって、上記記述は、アが誤りで、イとウが正しいです。