刑事裁判の歴史と展望あれこれ💖

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しほうちゃれんじ 623

乙:今日の問題は

学生AないしEは,次の【事例】における乙に対する横領罪の成否について,後記【発言】のとおりの意見を述べた。乙に対する横領罪の成立を肯定する意見を述べた学生を選(中略)
【事 例】乙は,甲から,公務員丙に対し甲所有の宝石を賄賂として贈ることを依頼されてその宝石の交付を受けたが,その後,この宝石を売却してその代金を自己の用途に費消しようと考え,この宝石を売却した。
【発 言】学生A. 民法第708条にいう「給付」とは,終局的利益を与えるもの,すなわち所有権付与を意味し,甲が贈賄の目的に基づいて乙に宝石を寄託することは不法原因給付には当たらない。


甲先生、よろしくお願いします!

こ、甲先生!?

甲:

イメージ 1


出典︰http://www.shutoko-sv.jp/parking_area/pa/?id=1427352330-178667


乙:刑法252条1項は

「自己の占有する他人の物を横領した者は、五年以下の懲役に処する。」

民法708条は

「不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない。」

と、規定しています。


「不法原因のため給付した者は給付物の返還を請求することができないとされている(民708条)。そうした不法原因給付物について委託物横領罪が成立しうるかが問題となる。民事判例(最大判昭和45・10・21民集24巻11号1560頁)によれば,たとえば,妾関係を維持する目的で未登記不動産を妾に贈与し,それを引き渡した場合,贈与契約は公序良俗に反して無効であるとしても,贈与者はその返還請求ができないが,贈与者が返還請求できないことの反射的効果として,受贈者に所有権が帰属するとされている。そうだとすれば,不法原因給付物は「他人の物」ではなく,それを受給者が処分しても委託物横領罪は成立しないことになる。(中略)
学説で,不法原因給付を限定的に理解し,給付とは終局的な利益を移転することであり,不法な目的に基づいて物を寄託するのは給付にあたらないとして(不法原因寄託),不法原因給付ではないから,所有権は寄託者に残り,受寄者が寄託物を不法に処分すると委託物横領罪が成立すると解する見解が主張されている(林幹人『財産犯の保護法益』169頁以下参照。さらに,大谷296頁以下,西田220頁,山中382頁,林151頁以下,井田125頁など)。」

山口厚『刑法各論 第2版』302-303頁


したがって、上記記述は、乙に対する横領罪の成立を肯定する意見です。