刑事裁判の歴史と展望あれこれ💖

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しほうちゃれんじ 673

乙:今日の問題は、4問あります。

ア.買主の売主に対する瑕疵担保による損害賠償請求権の消滅時効は,買主が目的物の引渡しを受けた時から進行を始める。
イ.遺留分権利者が減殺請求によって取得した不動産の所有権に基づく登記請求権は,時効によって消滅することはない。
ウ.相続財産に関しては,相続財産管理人が選任された場合でも,相続人が確定するまでの間は,時効は完成しない。
エ.主たる債務者がその債務について時効の利益を放棄した場合には,その保証人に対してもその効力を生ずる。


甲先生、よろしくお願いします!

こ、甲先生!?

甲:ながいね。。

乙:民法167条1項は

「債権は、十年間行使しないときは、消滅する。」

と、規定しています。


アについて、最判平成13年11月27日は

「買主の売主に対する瑕疵担保による損害賠償請求権は,売買契約に基づき法律上生ずる金銭支払請求権であって,これが民法167条1項にいう「債権」に当たることは明らかである。この損害賠償請求権については,買主が事実を知った日から1年という除斥期間の定めがあるが(同法570条,566条3項),これは法律関係の早期安定のために買主が権利を行使すべき期間を特に限定したものであるから,この除斥期間の定めがあることをもって,瑕疵担保による損害賠償請求権につき同法167条1項の適用が排除されると解することはできない。さらに,買主が売買の目的物の引渡しを受けた後であれば,遅くとも通常の消滅時効期間の満了までの間に瑕疵を発見して損害賠償請求権を行使することを買主に期待しても不合理でないと解されるのに対し,瑕疵担保による損害賠償請求権に消滅時効の規定の適用がないとすると,買主が瑕疵に気付かない限り,買主の権利が永久に存続することになるが,これは売主に過大な負担を課するものであって,適当といえない。
したがって,【要旨】瑕疵担保による損害賠償請求権には消滅時効の規定の適用があり,この消滅時効は,買主が売買の目的物の引渡しを受けた時から進行すると解するのが相当である。
(2) 本件においては,被上告人が上告人に対し瑕疵担保による損害賠償を請求したのが本件宅地の引渡しを受けた日から21年余りを経過した後であったというのであるから,被上告人の損害賠償請求権については消滅時効期間が経過しているというべきである。」

と、判示しています。


イについて、民法884条は

「相続回復の請求権は、相続人又はその法定代理人が相続権を侵害された事実を知った時から五年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から二十年を経過したときも、同様とする。」

同法1042条は

「減殺の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から十年を経過したときも、同様とする。」

と、規定しています。

最判平成7年6月9日は

「遺留分権利者が特定の不動産の贈与につき減殺請求をした場合には、受贈者が取得した所有権は遺留分を侵害する限度で当然に右遺留分権利者に帰属することになるから(最高裁昭和五〇年(オ)第九二〇号同五一年八月三〇日第二小法廷判決・民集三〇巻七号七六八頁、最高裁昭和五三年(オ)第一九〇号同五七年三月四日第一小法廷判決・民集三六巻三号二四一頁)、遺留分権利者が減殺請求により取得した不動産の所有権又は共有持分権に基づく登記手続請求権は、時効によって消滅することはないものと解すべきである。これと同旨の原審の判断は是認することができ、原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。」

と、判示しています。


ウについて、民法162条2項は

「十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。」

同法160条は

「相続財産に関しては、相続人が確定した時、管理人が選任された時又は破産手続開始の決定があった時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。」

と、規定しています。

最判昭和35年9月2日は

「相続財産に関しては相続人が確定し又は管理人の選任せられた時より六ヶ月以内は時効の完成しないことは右民法一六〇条の明定するところであつて、従つて相続人確定又は管理人選任なき限り相続財産に属する権利及び相続財産に対する権利については時効完成はあり得ないのである。それ故相続人確定又は管理人選任前たとえ相続財産たる不動産を十年間所有の意思を以つて平穏且公然、善意無過失に占有したとしてもこれによつて取得時効が完成することはないのであるから、この点に関する原判決の解釈は誤りであるといわねばならない。けれども原判決は本件相続財産につき昭和三元年一二月四日相続財産管理人が選任されたことを認定しており、その後六ケ月内に時効中断の事由のあつたことは上告人の何ら主張立証していないのであるからその後六ヶ月を経過した昭和三二年六月四日取得時効完成したものと認むべきである。」

と、判示しています。


エについて、大判大正5年12月25日は

「主タル債務者ニ対スル履行ノ請求其他時効ノ中断カ保証人ニ対シテモ其効力ヲ生スルハ特別ノ規定アルカ為メナリ然ルニ主タル債務者カ為シタル時効ノ利益ノ抛棄ニ付テハ保証人ニ対シ其効力ヲ生スル旨ノ規定ナキノミナラス時効ノ利益ノ抛棄ハ畢竟抗弁権ヲ抛棄スルモノニ外ナラサレハ抛棄者及ヒ其承継人以外ノ者ニ対シ其効力ヲ生スルモノト為スヲ得ス故ニ原院カ仮ニ主タル債務者小堀亀太郎ニ於テ時効ノ利益ヲ抛棄シタルコトアリトスルモ保証人タル被上告人ニ対シテ其効力ヲ及ホスコトナキ旨判示シタルハ正当ニシテ上告人所論ノ如キ不法ナシ」

と、判示しています。


したがって、上記記述は、アとイが正しく、ウとエが誤りです。