刑事裁判の歴史と展望あれこれ💖

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しほうちゃれんじ 675

乙:今日の問題も、4問あります。

イ.A所有の甲土地には,第一順位の抵当権を有しているBと第二順位の抵当権を有しているCがおり,他には抵当権者がいない場合,CがAから甲土地を譲り受けたときでもCの抵当権は消滅しない。
ウ.A所有の甲土地についてBが建物所有目的で地上権の設定を受けてその旨の登記がされ,甲土地上にBが乙建物を建築して所有権保存登記がされた後に,甲土地にCのための抵当権が設定され,その旨の登記がされた場合には,その後にAが単独でBを相続したときでも,その地上権は消滅しない。
エ.AとBは,建物所有目的で,CからC所有の甲土地を賃借した。その後,Cが死亡してAが単独で甲土地を相続した場合,Aの賃借権は消滅しない。
オ.A所有の甲土地についてBが建物所有目的で地上権の設定を受けてその旨の登記がされ,甲土地上にBが乙建物を建築して所有権保存登記がされた後に,乙建物にCのための抵当権が設定され,その旨の登記がされた。その後,Bは,Aに対し,その地上権を放棄する旨の意思表示をした。この抵当権が実行され,Dが乙建物を取得した場合,Dは,Aに対し,地上権を主張することができない。


甲先生、よろしくお願いします!

こ、甲先生!?

甲:はなー、はなーー、はながさく。。

乙:イについて

民法179条1項は

「同一物について所有権及び他の物権が同一人に帰属したときは、当該他の物権は、消滅する。ただし、その物又は当該他の物権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない。」

と、規定しています。

大決昭和4年1月30日民集8巻41頁は

「民法第百七十九条第一項但書ハ其ノ文字ヲ其ノ儘ニ解スルトキハ本件ノ場合ニモ亦其ノ適用アリ相手方ノ二番抵当権ハ消滅セサルモノノ如シト雖畢竟之ヲ消滅ストスルモ消滅セストスルモ一番抵当権ニハ何等ノ痛痒ナキヲ以テ此ノ問題ハ専ラ右ノ二番抵当権者カ之ニ因リテ如何ナル利害ヲ被ムルヤノ点ヲ斟酌シテ之ヲ論定セサルヘカラス今之ヲ消滅セストスルトキハ如何ト云フニ二番抵当権者ハ抵当権ノ実行トシテ自己ノ財産ヲ売却シ其ノ代金中一番抵当権者ヲ始メ其ノ他ノ優先権者ノ債権並ニ競売費用ノ弁済ニ充テタル残額ヲ保有スルノ権利アリト云フニ帰セサルヘカラス而モ之ト同一若ハヨリ善キ結果ハ所有者トシテ単純ニ当該不動産ノ任意売却ヲ試ムルコトニヨリテモ亦之ヲ挙クルニ雖カラス必ス抵当権ノ実行ニ俟ツノ要ナキハ勿論ナルカ故ニ本件ノ場合ニ於テ二番抵当権ヲ消滅セストスルコトハ取リモ直サス此ノ二番抵当権者ハ一番抵当権者ノ為故ラ競売申請ヲ為スノ煩ヲ敢テシ一番抵当権者ヲシテ自ラ申立ヲ為スノ労ヲ省カシムルノ権利アリト云フコトニ帰着スル以外現行法上又何等ノ意味ヲモ有セサルハ殆ト睹易キノ道理ナラスンハアラス蓋現行法ハ所有権ト他ノ物権トカ同一人ニ帰シタルトキハ後者ハ混同ニ依リ消滅スルノ主義ヲ採リ唯此ノ原則ヲ貫クトキハ不当ナル結果ヲ生スルノ虞アルトキニ於テノミ例外トシテ右ノ他物権ヲ以テ消滅セサルモノト為スニ過キス民法第百七十九条ハ専ラ此ノ法意ヲ体シテ之ヲ適用スヘク其ノ字面ノ示スカ儘ニ解釈スヘキ規定ニ非フ故ニ之ヲ本件ノ場合ニ付キテ云ハハ若シ当該二番抵当権以外ニ更ニ三番抵当権ノ存スルトキハ茲ニ始メテ右ノ二番抵当権ハ前記法条ノ適用上其ノ消滅ヲ免ルルモノトス消滅ヲ免ルト云フハ他ナシ競落代金中ヨリ一二番各抵当権者ノ債権ヲ弁済シタル残額ニ付三番抵当権者ハ始メテ其ノ債権ノ弁済ヲ受クルヲ得ト云フ趣旨即コレノミ何者若シ之ヲ爾ラストセハ三番抵当権者ハ二番ノ順位ニ進ミ来リ或ハ予期以上ノ弁済ヲ受クルノ僥倖アルニ反シ二番抵当権者ハ混同ノ原因タル事由(例ヘハ相続)カ偶々抵当権実行以前ニ生シタル為其ノ権利ヲ失フノ已ムナキニ立到リ為ニ其ノ収得スル金円ハ右ノ事由カ恰モ其ノ以後ニ生シタル場合ニ比シ或ハヨリ少額ナルニ至ルノ不利益ナキヲ保セサレハナリ夫レ爾リ然ラハ則チ本件ニ於テ抗告人主張ノ如キ所有権移転ノ事実アリシトセハ登記ノ有無如何ニ関セス抗告人ト相手方トノ間ニ於テハ相手方ハ最早抵当権ヲ有セサルト共ニ所有者ハ即相手方ニシテ抗告人ニ非サルカ故ニ今ニ於テ已往ノ権利状態ヲ前提トシテ為サレタル本件競売申立ノ如キハ申立書若クハ其ノ添附書類ニ依リ事ノ真相カ認メラルル限リ之ヲ申立人自ラ抵当権者ナリト称スル点ヨリ観ルモ将タ抗告人ヲ以テ所有者ナリト主張スル点ヨリ観ルモ等シク棄却ヲ免レサルハ言ヲ俟タス」

と、判示しています。


ウについて、民法179条1項は

「同一物について所有権及び他の物権が同一人に帰属したときは、当該他の物権は、消滅する。ただし、その物又は当該他の物権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない。」

と、規定しています。


エについて、民法520条は

「債権及び債務が同一人に帰属したときは、その債権は、消滅する。ただし、その債権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない。」

と、規定しています。


オについて、民法370条は

「抵当権は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産(以下「抵当不動産」という。)に付加して一体となっている物に及ぶ。ただし、設定行為に別段の定めがある場合及び第四百二十四条の規定により債権者が債務者の行為を取り消すことができる場合は、この限りでない。」

同法398頁は

「地上権又は永小作権を抵当権の目的とした地上権者又は永小作人は、その権利を放棄しても、これをもって抵当権者に対抗することができない。」

と、規定しています。


大判大正11年11月24日は

権利カ其ノ性質上抛棄スルヲ得サルモノニ非サル限リ権利者ニ於テ之ヲ抛棄スルコトハ原則トシテ自由ナリト雖今若シ此ノ権利ヲ基本トシテ始メテ存立シ得ラレ若クハ其ノ相当価額ヲ保有スルヲ得ル権利ヲ第三者カ有スル場合ニ於テモ亦抛棄ハ絶対ニ有効ナリトセムカ第三者ノ権利ハ其ノ基本ヲ失フ結果或ハ全ク存立スルヲ得サルニ至リ若クハ著シク其ノ価額ヲ減シ為ニ不測ノ損害ヲ第三者ニ蒙ラシムルニ至ルヘキヲ以テ斯ル場合ニハ権利者ノ為シタル抛棄ハ何人モ之ヲ以テ右ノ第三者ニ対抗スルヲ得サルモノト云ハサルヘカラス夫ノ民法第三百九十八条ノ如キハ畢竟是原則ノ一適用ニ外ナラス本件ニ於テ訴外八百板梅三ハ本件土地ニ対シ借地権ヲ有シ且同地上ニ建物ヲ所有シ此ノ建物ニ対シテ抵当権ヲ設定シタルモノナルカ故ニ同人ノ為シタル前記借地権ノ抛棄ハ抵当権者ニ対抗スルヲ得サルモノト云ハサルヘカラサルコトハ之ヲ以上ノ説示ニ照シ明白ナリ蓋借地権アレハコソ地上ノ建物ハ其ノ相当価額ヲ保有スルヲ得ルモノナルヲ以テ若シ此ノ借地権ノ抛棄ニシテ絶対ニ有効ナルモノトセムカ建物ノ価額ハ激落ヲ来シ抵当権ヲシテ殆ント有名無実ニ了ラシムルニ至ルヘケレハナリ果シハ然ラハ右ノ抛棄ハ抵当権実行ノ結果建物ノ競落人ト為リタル者ニモ亦之ヲ対抗スルヲ得サルコト疑ヲ容レサルカ故ニ之ト反対ノ見解ヲ前提トスル本訴請求ハ到底之ヲ是認スルヲ得サルコト多言ヲ俟タス」

と、判示しています。


したがって、上記記述は、ウとエが正しく、イとオが誤りです。