刑事裁判の歴史と展望あれこれ💖

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しほうちゃれんじ 678

乙:今日の問題は、4問あります。

ア.同一の動産について複数の質権を設定することはできないが,同一の動産について複数の譲渡担保権を設定することはできる。
イ.動産を目的とする質権は占有改定の方法によるその動産の引渡しによっては効力を生じないが,動産を目的とする譲渡担保権はその設定契約によって設定され,占有改定の方法によるその動産の引渡しがあれば,譲渡担保権者は第三者に譲渡担保権を対抗することができる。
ウ.債権質の目的である債権の弁済期が到来した場合には,被担保債権の弁済期が到来していないときであっても,質権者は,債権質の目的である債権を直接に取り立てることができる。
エ.債権であってこれを譲り渡すにはその証書を交付することを要するものを質権の目的とするときは,質権の設定は,その証書を交付することによって,その効力を生ずる。


甲先生、よろしくお願いします!

こ、甲先生!?

甲:かいすいよくよいすいか。ぼんととんぼ。かるいきびんなこねこなんびきいるか?

乙:アの前段について、民法355条は

「同一の動産について数個の質権が設定されたときは、その質権の順位は、設定の前後による。」

と、規定しています。

前段は誤りです。

後段について、最判平成18年7月20日は

「本件物件1については,本件契約1に先立って,A,B及びCのために本件各譲渡担保が設定され,占有改定の方法による引渡しをもってその対抗要件が具備されているのであるから,これに劣後する譲渡担保が,被上告人のために重複して設定されたということになる。このように重複して譲渡担保を設定すること自体は許されるとしても,劣後する譲渡担保に独自の私的実行の権限を認めた場合,配当の手続が整備されている民事執行法上の執行手続が行われる場合と異なり,先行する譲渡担保権者には優先権を行使する機会が与えられず,その譲渡担保は有名無実のものとなりかねない。」

と、判示しています。

後段は正しいです。


イの前段について、民法344条は

「質権の設定は、債権者にその目的物を引き渡すことによって、その効力を生ずる。」

同法345条は

「質権者は、質権設定者に、自己に代わって質物の占有をさせることができない。」

と、規定しています。

前段は正しいです。

後段について、最判昭和30年6月2日は

「売渡担保契約がなされ債務者が引き続き担保物件を占有している場合に
は、債務者は占有の改定により爾後債権者のために占有するものであり、従つて債権者はこれによつて占有権を取得するものであると解すべきことは、従来大審院の判例とするところであることも所論のとおりであつて、当裁判所もこの見解を正当であると考える。果して然らば、原判決の認定したところによれば、上告人(被控訴人)は昭和二六年三月一八日の売渡担保契約により本件物件につき所有権と共に間接占有権を取得しその引渡を受けたことによりその所有権の取得を以て第三者である被上告人に対抗することができるようになつたものといわなければならない。」

と、判示しています。

後段も正しいです。


ウについて、民法366条2項, 3項は

「2 債権の目的物が金銭であるときは、質権者は、自己の債権額に対応する部分に限り、これを取り立てることができる。
3 前項の債権の弁済期が質権者の債権の弁済期前に到来したときは、質権者は、第三債務者にその弁済をすべき金額を供託させることができる。この場合において、質権は、その供託金について存在する。」

と、規定しています。


エについて、民法363条は

「債権であってこれを譲り渡すにはその証書を交付することを要するものを質権の目的とするときは、質権の設定は、その証書を交付することによって、その効力を生ずる。」

と、規定しています。


したがって、上記記述は、イとエが正しく、アとウが誤りです。