刑事裁判の歴史と展望あれこれ💖

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しほうちゃれんじ 680

乙:今日の問題は、2問あります。

AのBに対する1000万円の債務(以下「本件債務」という。)について,AB間でA所有の甲土地で代物弁済をする合意をした場合に関する(中略)
イ.代物弁済の合意をしても,その所有権移転登記手続の完了前であれば,AはBに1000万円を支払って,本件債務を弁済により消滅させることができる。
エ.代物弁済がされて一旦甲土地の所有権がBに移転した後,本件債務の発生原因となった契約が解除された場合でも,甲土地の所有権はBに帰属する。


甲先生、よろしくお願いします!

こ、甲先生!?

甲:だいぶつ?

乙:民法482条は

「債務者が、債権者の承諾を得て、その負担した給付に代えて他の給付をしたときは、その給付は、弁済と同一の効力を有する。」

と、規定しています。


イについて、最判昭和43年12月24日は

「債務者がその負担した給付に代えて不動産所有権の譲渡をもつて代物弁済する場合の債務消滅の効力は、原則として単に所有権移転の意思表示をなすのみでは足らず、所有権移転登記手続の完了によつて生ずることは、当裁判所の判例とするところである(最高裁昭和三七年(オ)第一〇五一号同三九年一一月二六日第一小法廷判決民集一八巻九号一九八四頁、同昭和三九年(オ)第六六五号同四〇年四月三〇日第二小法廷判決民集一九巻三号七六八頁参照)。したがつて、右既存債務の弁済が、代物弁済による所有権移転の意思表示の後にされても、その所有権移転登記手続の完了前にされたときは、右意思表示は右弁済による既存債務の消滅によつて、その効力を失うものと解するのを相当とする。原判決は、上告人の代理人Dが昭和一九年一二月一〇日頃被上告人らの先代Eに対し本件貸金債務の代物弁済として本件山林の所有権を移転する旨の意思表示をしたが、その所有権移転登記手続が完了したのは昭和二一年三月一二日であつた旨を認定したのであるから、前示判断の遺脱は、原判決の結論に影響を及ぼすこと明らかであるといわなければならない。」

と、判示しています。


エについて、最判昭和60年12月20日は

「本件代物弁済契約は、本件賃借権譲渡契約に基づく譲渡代金債務の一部の支払に代える目的でされたものであることが明らかであり、右譲渡契約は、被上告人のした右解除の意思表示により適法に解除され、これによつて右譲渡代金債務は遡及的に消滅し、代物弁済契約による本件不動産の所有権移転の効果も遡つて失われたものというべきである。そうすると、右所有権の侵害による不法行為を原因とする上告人の主位的請求を棄却した原審の判断は、その結論において是認することができる。」

と、判示しています。


したがって、上記記述は、イが正しく、エが誤りです。