乙:今日の問題も、2問あります。
ア.債務不履行を理由に売買契約が解除された場合において,その債務不履行の時から10年を経過したときは,解除による原状回復請求権の消滅時効が完成する。
エ.売主が目的物を引き渡したが,買主が代金を履行期の経過後も支払わない場合において,売主が買主に対して相当の期間を定めて代金の支払を催告したにもかかわらず,買主が代金の支払を拒絶する意思を明確に表示したときは,売主は,相当の期間が経過する前であっても,当該売買契約を解除することができる。
甲先生、よろしくお願いします!
こ、甲先生!?
甲:むはい。。
乙:アについて、民法167条1項は
「債権は、十年間行使しないときは、消滅する。」
と、規定しています。
大判大正7年4月13日は
「契約ノ解除ニ因ル原状回復ノ請求権ハ契約ノ解除ニ因リテ新ニ発生スル請求権ナルヲ以テ其時効ハ契約解除ノ時ヨリ進行スヘキモノトス」
と、判示しています。
エについて、民法541条は
「当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。」
と、規定しています。
最判昭和41年3月22日は
「双務契約において、当事者の一方が自己の債務の履行をしない意思が明確な場合には、相手方において自己の債務の弁済の提供をしなくても、右当事者の一方は自己の債務の不履行について履行遅滞の責を免れることをえないものと解するのが相当である。
原審が確定したところによれば、被上告人は、上告人より本件土地及び建物を、代金三〇〇万円、所有権移転登記義務及び代金支払義務の履行期昭和三三年四月三〇日の約で買い受けたところ、上告人は、昭和三三年四月三日、被上告人に債務不履行ありと主張し本件売買契約を解除する旨の意思表示をなし、右売買の目的物である本件建物を第三者に賃貸した。というのである。右事実関係のもとにおいては、上告人において自己の債務の履行をしないことが明確であるというべく、被上告人は、自己の債務の弁済の提供をすることなく、上告人に対しその債務の不履行につき履行遅滞の責を問いうるものというべきである。」
と、判示しています。
したがって、上記記述は、アが誤りで、エが正しいです。