刑事裁判の歴史と展望あれこれ💖

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しほうちゃれんじ 687

乙:今日の問題も、2問あります。

ア.AがA所有の甲土地をBに売却し,その旨の所有権移転登記がされた後,Bは,甲土地をCに売却し,その旨の所有権移転登記がされた。その後,AがBの強迫を理由としてBに対する売買の意思表示を取り消した場合,Aは,Cに対し,甲土地の所有権がAからBに移転していないことを主張することができる。
オ.AがB所有の乙土地を占有し,取得時効が完成した場合において,その取得時効が完成する前に,Cが乙土地をBから譲り受け,その取得時効の完成後にCが乙土地の所有権移転登記をしたときは,Aは,Cに対し,乙土地の所有権を時効取得したことを主張することができない。


甲先生、よろしくお願いします!

こ、甲先生!?

甲:(ぺんぎん・はいうぇい。たのしかった。。)

乙:アについて、民法96条は

「詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
2 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知っていたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3 前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない。」

と、規定しています。

大判昭和4年2月20日は

「上告人主張ノ如ク上告人カ本件抹消登記ノ原因タル鈴木精八ニ対スル債権及抵当権ノ抛棄行為ヲ強迫ニ因ル意思表示トシテ適法ニ取消シタリトセハ其ノ効力トシテ抛棄行為ハ始メヨリ無効トナリ嘗テ抛棄行為ナカリシト同一ニ帰スル結果上告人カ鈴木精八ニ対シテ有シタル債権及抵当権ハ始メヨリ消滅セサルコトトナルヘク而モ上叙取消ノ効力ハ第三者ノ善意悪意ヲ問ハス之ニ対抗シ得ヘキヲ以テ上告人ハ本件抹消登記後抵当権ノ設定ヲ受ケ其ノ登記ヲ経タル被上告人ノ前主横山勇治及松木伊左衛門ニ対シ第一順位ノ抵当権ヲ以テ対抗シ得ヘク其ノ特定承継人タル被上告人カ前主ヨリ以上ノ権利ヲ有シ得サルコト勿論ナルヲ以テ上告人カ被上告人ニ対シテモ亦第一順位ノ抵当権ヲ以テ対抗シ得ヘク被上告人カ登記上利害関係ヲ有スルニ至リシ日(抵当権譲渡登記アリタル日)カ前記取消アリタル日ノ前ナルト後ナルトニ依リ其ノ結果ヲ異ニセサルヘキハ前記取消ノ効力ヨリ観テ当然ノコトニ属ス尚本件ノ如ク其ノ取消ヲ以テ善意ノ第三者ニ対抗シ得ル場合ニ於テハ抹消シタル登記ノ回復ヲ為ササル間ト雖其ノ取消ノ効力ヲ登記上利害関係ヲ有スル第三者ニ対抗スルニ妨ケナキコトモ亦其ノ取消ノ性質上当然ナル」

と、判示しています。


オについて、民法162条1項は

「二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。」

同法177条は

「不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。」

と、規定しています。

最判昭和42年7月21日は

「原判決の確定した事実によると、被上告人は本件土地の占有により昭和三三年三月二一日に二〇年の取得時効完成したところ、上告人は、本件土地の前主から昭和三三年二月本件土地を買い受けてその所有者となり、同年一二月八日所有権取得登記を経由したというのである。されば、被上告人の取得時効完成当時の本件土地の所有者は上告人であり、したがつて、上告人は本件土地所有権の得喪のいわば当事者の立場に立つのであるから、被上告人はその時効取得を登記なくして上告人に対抗できる筋合であり、このことは上告人がその後所有権取得登記を経由することによつて消長を来さないものというべきである。」

と、判示しています。


したがって、上記記述は、アが正しく、オが誤りです。