刑事裁判の歴史と展望あれこれ💖

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しほうちゃれんじ 689

乙:今日の問題も、2問あります。

1.離婚に伴う財産分与請求権は,協議又は審判によって具体化されるまではその範囲及び内容が不確定・不明確であるため,これを被保全債権として債権者代位権を行使することはできない。
4.債権者は,債務者が第三者に対して負う債務について,債務者に代わってその消滅時効を援用することができない。



甲先生、よろしくお願いします!

こ、甲先生!?

甲:あなん?

乙:1について、最判昭和55年7月11日は

「離婚によつて生ずることあるべき財産分与請求権は、一個の私権たる性格を有するものではあるが、協議あるいは審判等によつて具体的内容が形成されるまでは、その範囲及び内容が不確定・不明確であるから、かかる財産分与請求権を保全するために債権者代位権を行使することはできないものと解するのが相当である。
したがつて、被上告人による上告人A1に対する所有権移転登記の抹消登記手続請求権の代位行使は、その代位原因を欠くものであり、これに関する訴を不適法として却下すべきであるにもかかわらず、右請求を認容した原判決には、法令の解釈を誤つた違法があるといわなければならず、右の違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。」

と、判示しています。


4について、最判昭和43年9月26日は

「消滅時効を援用しうる者は、権利の時効消滅によつて直接利益を受ける者に限られるが、他人の債務のために自己の所有物件につき抵当権を設定したいわゆる物上保証人もまた被担保債権の消滅によつて直接利益を受ける者というを妨げないから、民法一四五条にいう当事者として右物件によつて担保された他人の債務の消滅時効を援用することが許されるものと解するのを相当とし(当裁判所昭和三九年(オ)第五二三号、第五二四号、同四二年一〇月二七日第二小法廷判決、民集二一巻八号二一一〇頁参照)、また、金銭債権の債権者は、その債務者が、他の債権者に対して負担する債務、または前記のように他人の債務のために物上保証人となつている場合にその被担保債権について、その消滅時効を援用しうる地位にあるのにこれを援用しないときは、債務者の資力が自己の債権の弁済を受けるについて十分でない事情にあるかぎり、その債権を保全するに必要な限度で、民法四二三条一項本文の規定により、債務者に代位して他の債権者に対する債務の消滅時効を援用することが許されるものと解するのが相当である。
ところで、上告人は、本訴において、訴外Dは、訴外E株式会社(以下「訴外会社」という。)が被上告人に対して負担する債務のためにその所有の本件不動産に抵当権を設定して物上保証人となつたものであるところ、右Dの債権者として、Dが被上告人に対して行使しうる、訴外会社の被上告人に対する債務の消滅時効の援用権を同人に代位して行使する旨主張するものであるが、被上告人は、訴外会社に対して金一〇五万三六〇一円の債権を有していたが、右債権はおそくとも昭和三四年一月二三日の経過によつてその消滅時効が完成した事情にあること、Dが右被上告人の債権の担保としてその所有の本件不動産に抵当権を設定して物上保証人となつたものであること、および上告人がDに対して元金三〇万円および元金一〇〇万円の二口の債権ならびにその各遅延損害金債権を有することは、原審の確定するところであるから、Dは、訴外会社の被上告人に対する債務についてその消滅時効を援用しうる地位にあつたものというべく、したがつて、その債権者である上告人は、Dの資力が自己の債権全額の弁済を受けるについて十分でない事情にあるかぎり、同人に代位して訴外会社の被上告人に対する債務の消滅時効を援用しうるものといわなければならない。」

と、判示しています。


したがって、上記記述は、1が正しく、4が誤りです。