刑事裁判の歴史と展望あれこれ💖

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しほうちゃれんじ 717

乙:今日の問題も、2問あります。

エ.安全配慮義務違反による損害賠償請求権の消滅時効は,損害が発生した時から進行する。
オ.10回に分割して弁済する旨の約定がある場合において,債務者が1回でも弁済を怠ったときは債権者の請求により直ちに残債務全額を弁済すべきものとする約定があるときには,残債権全額の消滅時効は,債務者が弁済を怠った時から進行する。


甲先生、よろしくお願いします!

こ、甲先生!?


甲:くいは。ないな。。なんちゃって!

乙:民法166条1項は

「消滅時効は、権利を行使することができる時から進行する。」

と、規定しています。


エについて、最判平成6年2月22日は

「じん肺に罹患した患者の病状が進行し、より重い行政上の決定を受けた場合においても、重い決定に相当する病状に基づく損害を含む全損害が、最初の行政上の決定を受けた時点で発生していたものとみることはできない。すなわち、前示事実関係によれば、じん肺は、肺内に粉じんが存在する限り進行するが、それは肺内の粉じんの量に対応する進行であるという特異な進行性の疾患であって、しかも、その病状が管理二又は管理三に相当する症状にとどまっているようにみえる者もあれば、最も重い管理四に相当する症状まで進行した者もあり、また、進行する場合であっても、じん肺の所見がある旨の最初の行政上の決定を受けてからより重い決定を受けるまでに、数年しか経過しなかった者もあれば、二〇年以上経過した者もあるなど、その進行の有無、程度、速度も、患者によって多様であることが明らかである。そうすると、例えば、管理二、管理三、管理四と順次行政上の決定を受けた場合には、事後的にみると一個の損害賠償請求権の範囲が量的に拡大したにすぎないようにみえるものの、このような過程の中の特定の時点の病状をとらえるならば、その病状が今後どの程度まで進行するのかはもとより、進行しているのか、固定しているのかすらも、現在の医学では確定することができないのであって、管理二の行政上の決定を受けた時点で、管理三又は管理四に相当する病状に基づく各損害の賠償を求めることはもとより不可能である。以上のようなじん肺の病変の特質にかんがみると、管理二、管理三、管理四の各行政上の決定に相当する病状に基づく各損害には、質的に異なるものがあるといわざるを得ず、したがって、重い決定に相当する病状に基づく損害は、その決定を受けた時に発生し、その時点からその損害賠償請求権を行使することが法律上可能となるものというべきであり、最初の軽い行政上の決定を受けた時点で、その後の重い決定に相当する病状に基づく損害を含む全損害が発生していたとみることは、じん肺という疾病の実態に反するものとして是認し得ない。これを要するに、雇用者の安全配慮義務違反によりじん肺に罹患したことを理由とする損害賠償請求権の消滅時効は、最終の行政上の決定を受けた時から進行するものと解するのが相当である。」

と、判示しています。


オについて、最判昭和42年6月23日は

「割賦金弁済契約において、割賦払の約定に違反したときは債務者は債権者の請求により償還期限にかかわらず直ちに残債務全額を弁済すべき旨の約定が存する場合には、一回の不履行があつても、各割賦金額につき約定弁済期の到来毎に順次消滅時効が進行し、債権者が特に残債務全額の弁済を求める旨み意思表示をした場合にかぎり、その時から右全額について消滅時効が進行するものと解ずべきである(昭和一四年(オ)第六二五号同一五年三月一三日大審院民事連合部判決・民集一九巻五四四頁参照)。そして、原審の確定したところによれば、右第四回割賦金一万八七四四円の弁済期は昭和二九年三月三一日であつたところ、被上告人がはじめて残債務額の請求をしたのは昭和三四年七月八日であつたというのであるから、その間五年以上を経過していることが明らかであり、しかも、本件割賦金債務は訴外Eの商行為によつて生じた債務にあたるというのであるから、連帯債務者たる上告人についても商法が適用され、上告人自身の第四回割賦金債務も商事債務として右五年の経過とともに時効完成によつて消滅したものというべきである。」

と、判示しています。


したがって、上記記述は、エが正しく、オが誤りです。