刑事裁判の歴史と展望あれこれ💖

刑事裁判の歴史と展望あれこれを広めます https://mementomo.hatenablog.com/entry/39862573

しほうちゃれんじ 724

乙:今日の問題も、2問あります。

2.AがBと通謀してA所有の甲土地につきAB間で売買予約がされた旨仮装し,Bへの所有権移転登記請求権保全の仮登記をした後,Bが偽造書類を用いて仮登記を本登記にした上で,善意無過失のCに甲土地を売却し,Cへの所有権移転登記をした場合,Cは,Aに対し,甲土地の所有権をCが有することを主張することができる。
3.AがBと通謀してA所有の甲土地につきAB間で売買契約がされた旨仮装し,Bへの所有権移転登記をした後,Bが甲土地をCに売却した場合,Aは,CがAB間の売買契約が虚偽表示であることを知っていたことを立証しなければ,Cに対し,甲土地の所有権をAが有することを主張することができない。


甲先生、よろしくお願いします!

こ、甲先生!?

甲:おきまさや?


乙:民法94条2項は

「相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。
2 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。」

と、規定しています。


2について、最判昭和43年10月17日は

「 原審の認定したところによれば、本件第一、第二の不動産は被上告人の所有であつたところ、被上告人は、昭和三〇年一一月一五日訴外D株式会社の代表取締役である訴外Eから、個人名義の財産をもつていないと取引先の信用を得られないから、右第一、第二の不動産の所有名義だけでも貸して欲しい旨申し込まれ、同訴外人と合意のうえ、右不動産につき売買予約をしたと仮装し、Eのため所有権移転請求権保全の仮登記手続をしたところ、Eは真正に成立したものでない委任状によつて、右不動産につき、ほしいままに自己に対し所有権取得の本登記手続を経由したというのである。
思うに、不動産について売買の予約がされていないのにかかわらず、相通じて、その予約を仮装して所有権移転請求権保全の仮登記手続をした場合、外観上の仮登記権利者がこのような仮登記があるのを奇貨として、ほしいままに売買を原因とする所有権移転の本登記手続をしたとしても、この外観上の仮登記義務者は、その本登記の無効をもつて善意無過失の第三者に対抗できないと解すべきである。けだし、このような場合、仮登記の外観を仮装した者がその外観に基づいてされた本登記を信頼した善意無過失の第三者に対して、責に任ずべきことは、民法九四条二項、同法一一〇条の法意に照らし、外観尊重および取引保護の要請というべきだからである。
今叙上の見地に立つて本件を見るに、原審の認定したところによれば、前示のごとくEがほしいままに仮登記に基づく本登記をなした後、本件第一、第二の不動産は登記簿上、Eより訴外F株式会社を経て上告人A1に、さらに本件第二の不動産は上告人A1より同A2に移転しているという以上、原審はすべからく上告人らは本件不動産の取得につき善意無過失であつたかどうか、すなわち、被上告人は本件の本登記の無効を以て上告人らに対抗できるかどうかについて、審理すべきであつたのである。」

と、判示しています。


3について、民法109条は

「第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。」

同法110条は

「前条本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。」

と、規定しています。

最判昭和41年12月22日は

「 原審の確定するところによれば、訴外DとE間の本件不動産売買契約が虚偽の意思表示に基づくものであることについて、上告人が善意であつたと認めるに足る証拠は存しないというのであり、原審の右認定は、挙示の証拠により、これを是認することができる。そして、第三者が民法第九四条第二項の保護をうけるためには、自己が善意であつたことを立証しなければならないものと解するのが相当であるから(当裁判所昭和三二年(オ)三三五号、同三五年二月二日第三小法廷判決、民集一四巻三六頁参照)、原審が、前記認定に基づき、被上告人は訴外DとE間の前記売買契約が無効であることをもつて上告人に対抗しうる旨判断したのは正当であり、原判決に所論の違法は存しない。」

と、判示しています。


したがって、上記記述は、2が正しく、3が誤りです。