刑事裁判の歴史と展望あれこれ💖

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しほうちゃれんじ 828

乙:甲先生と、海外旅行説明会に行きたいです。

http://mm.hankyu-travel.com/r/c.do?7JJh_dHtu3_6sr_pop


今日の問題は、3問あります。

ア. 株主総会決議無効確認の訴えは,決議の内容が法令又は定款に違反する場合に,提起することができる。
イ. 株主総会決議取消しの訴えが適法に提起された後に原告である株主につき相続があった場合には,その相続人が原告の地位を承継する。
ウ. 計算書類承認の株主総会決議の取消訴訟の係属中に,翌期以後の計算書類が承認された場合であっても,原告が勝訴すれば決議がさかのぼって無効になることから,その後にその議案につき再決議がされたなどの特別の事情のない限り,訴えの利益は失われない。


甲先生、よろしくお願いします!



甲:アについて、会社法830条2項は

「株主総会等の決議については、決議の内容が法令に違反することを理由として、決議が無効であることの確認を、訴えをもって請求することができる。」

同法831条1項2号は

「次の各号に掲げる場合には、株主等(当該各号の株主総会等が創立総会又は種類創立総会である場合にあっては、株主等、設立時株主、設立時取締役又は設立時監査役)は、株主総会等の決議の日から三箇月以内に、訴えをもって当該決議の取消しを請求することができる。当該決議の取消しにより株主(当該決議が創立総会の決議である場合にあっては、設立時株主)又は取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役。以下この項において同じ。)、監査役若しくは清算人(当該決議が株主総会又は種類株主総会の決議である場合にあっては第三百四十六条第一項(第四百七十九条第四項において準用する場合を含む。)の規定により取締役、監査役又は清算人としての権利義務を有する者を含み、当該決議が創立総会又は種類創立総会の決議である場合にあっては設立時取締役(設立しようとする株式会社が監査等委員会設置会社である場合にあっては、設立時監査等委員である設立時取締役又はそれ以外の設立時取締役)又は設立時監査役を含む。)となる者も、同様とする。
二 株主総会等の決議の内容が定款に違反するとき。」

と、規定しています。


イについて、最大判昭和45年7月15日は

「よつて按ずるに、有限会社における社員の持分は、株式会社における株式と同様、社員が社員たる資格において会社に対して有する法律上の地位(いわゆる社員権)を意味し、社員は、かかる社員たる地位に基づいて、会社に対し利益配当請求権(有限会社法四四条)、残余財産分配請求権(同法七三条)などのいわゆる自益権と本件におけるような会社解散請求権(同法七一条ノ二)、社員総会決議取消請求権(同法四一条、商法二四七条)、同無効確認請求権(有限会社法四一条、商法二五二条)などのいわゆる共益権とを有するのであるが、会社の営利法人たる性質にかんがみれば、これらの権利は、自益権たると共益権たるとを問わず、いずれも直接間接社員自身の経済的利益のために与えられ、その利益のために行使しうべきものと解さなければならない。このことは、社員が直接会社から財産的利益を受けることを内容とする自益権については疑いがないが、社員が会社の経営に関与し、不当な経営を防止しまたはこれにつき救済を求めることを内容とする共益権についても、異なるところはない。けだし、共益権も、帰するところ、自益権の価値の実現を保障するために認められたものにほかならないのであつて、その権利の性質上権利行使の結果が直接会社および社員の利益に影響を及ぼすためその行使につき一定の制約が存することは看過しがたいにしても、本来それが社員自身の利益のために与えられたものであることは否定することができないからである。そして、このような共益権の性質に照らせば、それは自益権と密接不可分の関係において全体として社員の法律上の地位としての持分に包含され、したがつて、持分の移転が認められる以上(有限会社法一九条)、共益権もまたこれによつて移転するものと解するのが相当であり、共益権をもつて社員の一身専属的な権利であるとし、譲渡または相続の対象となりえないと解するいわれはないのである。
以上説示したところによれば、本件における会社解散請求権、社員総会決議取消請求権、同無効確認請求権のごときも、持分の譲渡または相続により譲受人または相続人に移転するものと認められる。その理は、本件におけるように、社員が社員たる資格に基づいて会社解散の訴、社員総会決議の取消または無効確認の訴を提起したのち持分の譲渡または相続が行なわれた場合においても、異なるところはない。
ところで、社員が右のような訴を提起したのちその持分を譲渡した場合には、譲受人は会社解散請求権、社員総会決議取消請求権および同無効確認請求権のごときは取得するけれども、譲渡人の訴訟上における原告たる地位までも承継するものとはいえない。これに反して、相続の場合においては、相続人は被相続人の法律上の地位を包括的に承継するのであるから、持分の取得により社員たる地位にともなう前記のごとき諸権利はもとより、被相続人の提起した訴訟の原告たる地位をも承継し、その訴訟手続を受け継ぐこととなるのである。もし、原告たる被相続人の死亡により同人の提起した訴訟が当然に終了するものとするならば、本件の社員総会決議取消の訴におけるように提訴期間の定め(有限会社法四一条、商法二四八条一項)がある場合において、被相続人の死亡当時すでにその提訴期間を経過しているときは、相続人は新たに訴を提起することができず、原告たる被相続人の死亡なる偶然の事情により、社員がすでに着手していた社員総会決議のかしの是正の途が閉ざされるという不合理な結果となるのを免れないのである。
してみれば、本件訴訟については、原告たるDの死亡により、同人の有した被上告会社の持分の全部を相続により取得した上告人において原告たる地位をも当然に承継したものというべきであり、右Dの死亡により本件訴訟が終了したものとすることはできない。」

と、判示しています。


ウについて、最判昭和58年6月7日は

「株主総会決議取消の訴えのような形成の訴えは、法律に規定のある場合に限つて許される訴えであるから、法律の規定する要件を充たす場合には訴えの利益の存するのが通常であるけれども、その後の事情の変化により右利益を喪失するに至る場合のあることは否定しえないところである。しかして、被上告人らの上告人に対する本訴請求は、昭和四五年一一月二八日に開催された上告会社の第四二回定時株主総会における「昭和四五年四月一日より同年九月三〇日に至る第四二期営業報告書、貸借対照表、損益計算書、利益金処分案を原案どおり承認する」旨の本件決議について、その手続に瑕疵があることを理由として取消を求めるものであるところ、その勝訴の判決が確定すれば、右決議は初めに遡つて無効となる結果、営業報告書等の計算書類については総会における承を欠くことになり、また、右決議に基づく利益処分もその効力を有しないことになつて、法律上再決議が必要となるものというべきであるから、その後に右議案につき再決議がされたなどの特別の事情かない限り、右決議取消を求める訴えの利益が失われることはないものと解するのが相当
である。
そこで、叙上の見地に立つて、本件につきかかる特別の事情が存するか否かについて検討する。この点に関し、論旨は、本件決議が取り消されたとしても、右決議ののち第四三期ないし第五四期の各定時株主総会において各期の決算案は承認されて確定しており、右決議取消の効果は、右第四三期ないし第五四期の決算承認決議の効力に影響を及ぼすものではないから、もはや本件決議取消の訴えはその利益を欠くに至つたというのであるが、株主総会における計算書類等の承認決議がその手続に法令違反等があるとして取消されたときは、たとえ計算書類等の内容に違法、不当がない場合であつても、右決議は既往に遡つて無効となり、右計算書類等は未確定となるから、それを前提とする次期以降の計算書類等の記載内容も不確定なものになると解さざるをえず、したがつて、上告会社としては、あらためて取消された期の計算書類等の承認決議を行わなければならないことになるから、所論のような事情をもつて右特別の事情があるということはできない。」

と、判示しています。


したがって、上記記述は、アが誤りで、イとウが正しいです。