刑事裁判の歴史と展望あれこれ💖

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しほうちゃれんじ 869

乙:甲先生と、九谷焼を見てもいいです。

今日の問題は、2問あります。

取締役会設置会社の取締役に対する金銭の貸付けに関する(中略)
2.金銭の貸付けが取締役会の承認を受けずにされた場合には,株式会社は,金銭の貸付けを受けた取締役に対して,当該貸付けに係る契約の無効を主張することができる。
4.判例によれば,株式会社の取締役が当該株式会社の全株式を所有し,当該株式会社の営業が実質上当該取締役の個人経営のものにすぎないときであっても,当該株式会社が当該取締役に対して金銭の貸付けをするためには,当該貸付けに関する取締役会の承認が必要である。


甲先生、よろしくお願いします!

甲:2について、会社法365条1項は

「取締役会設置会社における第三百五十六条の規定の適用については、同条第一項中「株主総会」とあるのは、「取締役会」とする。」

同法356条1項2号は

「取締役は、次に掲げる場合には、株主総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。
二 取締役が自己又は第三者のために株式会社と取引をしようとするとき。」

と、規定しています。

大連判明治42年12月2日は

「本訴約束手形ヲ上告人兵庫運河株式会社ヨリ其取締役ノ一人タル南佐兵衛ニ対シ振出シタル時ニ当リ南佐兵衛カ該会社監査役ノ承認ヲ得サリシ事実ハ原判決ニ於テ確定シタル所ナリ抑商法第百七十六条ニ於テ取締役ハ監査役ノ承認ヲ得タルトキニ限リ自己又ハ第三者ノ為メニ会社ト取引ヲ為スコトヲ得ト規定シタルハ株式会社ノ取締役カ監査役ノ承認ヲ得スシテ自己又ハ第三者ノ為メニ会社ト取引ヲ為スコトヲ禁止シタル法意ナルコトハ復弁ヲ待タスシテ明ナリ而シテ本条ノ規定ハ会社ノ利益ヲ保障スル趣旨ニ出テタルモノナレトモ法律ニ於テ特ニ此ノ如キ規定ヲ設ケタル所以ノモノハ会社ノ存立ヲ以テ公共ノ利益ニ裨補アリト為シタルニ由ラスンハアラス然レハ則チ本条ノ規定ニ違背シタル行為ノ消長ヲ会社ノ意思ニ一任スル理アルヘカラス加之法律ノ規定ニ違背シタル行為ヲ当然無効トセスシテ取消シ得ヘキモノト為ス場合ニ在リテハ必スヤ之ヲ法条ニ明示スルコトハ民法及ヒ商法ヲ一貫シタル主義ナルコトハ両法ヲ通覧スルトキハ之ヲ窺知スルニ難カラス由是之ヲ観レハ本条ノ規定ニ違背シテ為シタル取引ハ取消シ得ヘキ行為ニ非スシテ無効ノ行為ナリト謂ワサルヲ得ス商法第百七十六条ノ法意誠ニ此ノ如クナリトスレハ上告人カ南佐兵衛ニ対シテ振出シタル本訴ノ約束手形ハ当然無効ノモノナルヲ以テ其所持人ノ南佐兵衛タルト被裏書人タルトヲ問ワス又被裏書人ノ善意ナルト悪意ナルトヲ分タス上告人ハ常ニ手形ノ無効ヲ主張シテ以テ支払ノ請求ヲ拒ムヲ得ヘキコト多言ヲ待タス是故ニ原院カ上告人ノ振出行為ヲ以テ取消シ得ヘキモノト為シ且善意ノ被裏書人タル被上告人ニ対シテハ手形上ノ債務ヲ免カルルコトヲ得サルモノト為シタルハ不法ノ裁判タルコトヲ免レス」

と、判示しています。


4について、最判昭和45年8月20日は

「原審の確定した右事実関係のもとにおいては、本件売買契約締結当時には、被上告会社は株式会社の形態をとつているとはいえ、その営業は実質上、上告人Aの個人経営のものにすぎないから、被上告会社の利害得失は実質的には上告人Aの利害得失となるものであり、その間に利害相反する関係はない。したがつて、上告人Aがその所有の本件土地を被上告会社に売り渡すことについて、両者の間に実質的に利害相反の関係を生じるものではないというべきである。
ところで、商法二六五条が、会社と取締役との間の同条所定の取引について取締役会の承認を要するものとしている趣旨は、取締役個人と株式会社との利害相反する場合において取締役個人の利益を図り、会社に不利益な行為が行なわれることを防止するにあるのであるから、会社と取締役間に商法二六五条所定の取引がなされた場合でも、前段説示のように、実質的に会社と当該取締役との間に利害相反する関係がないときには、同条所定の取締役会の承認は必要ないものと解するのが相当である。したがつて、被上告会社とその取締役であつた上告人Aとの間になされた本件売買契約は、被上告会社取締役会の承認の有無によつてその効力が左右されるべきものではない」

と、判示しています。


したがって、上記記述は、2が正しく、4が誤りです。