刑事裁判の歴史と展望あれこれ💖

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しほうちゃれんじ 878

乙:甲先生は、ナーマ浜について、どう思われますか?

今日の問題は、3問あります。

会社法第429条第1項に基づく取締役の第三者に対する責任に関する(中略)
判例の趣旨に照らし正しいもの (中略)
1. 辞任後も辞任の登記が未了であることによりその者がなお取締役であると信じて会社と取引をした第三者に対し,辞任した取締役は,登記申請権者である当該会社の代表者に対し辞任登記を申請しないで不実の登記を残存させることについて黙示に承諾をしていた場合には,責任を負う。
2. 取締役の第三者に対する責任が発生するためには,第三者に対する加害についての悪意又は重過失が要件となる。
5. 取締役が悪意又は重大な過失となる放漫経営をし,当該放漫経営により倒産した会社に対する債権を回収することができなくなる損害を被った会社債権者は,当該取締役の責任を追及することができる。


甲先生、よろしくお願いします!

甲:会社法429条1項は

「役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。」

と、規定しています。


1について、会社法908条2項は

「故意又は過失によって不実の事項を登記した者は、その事項が不実であることをもって善意の第三者に対抗することができない。」

最判昭和62年4月16日は

「株式会社の取締役を辞任した者は、辞任したにもかかわらずなお積極的に取締役として対外的又は内部的な行為をあえてした場合を除いては、辞任登記が未了であることによりその者が取締役であると信じて当該株式会社と取引した第三者に対しても、商法(昭和五六年法律第七四号による改正前のもの、以下同じ。)二六六条ノ三第一項前段に基づく損害賠償責任を負わないものというべきである(最高裁昭和三三年(オ)第三七〇号同三七年八月二八日第三小法廷判決・裁判集民事六二号二七三頁参照)が、右の取締役を辞任した者が、登記申請権者である当該株式会社の代表者に対し、辞任登記を申請しないで不実の登記を残存させることにつき明示的に承諾を与えていたなどの特段の事情が存在する場合には、右の取締役を辞任した者は、同法一四条の類推適用により、善意の第三者に対して当該株式会社の取締役でないことをもつて対抗することができない結果、同法二六六条ノ三第一項前段にいう取締役として所定の責任を免れることはできないものと解するのが相当である。
これを本件についてみるに、被上告人B1、同B3、同B2が、訴外D鍍金工業株式会社の代表取締役である訴外Eに対し、取締役を辞任する旨の意思表示をした際ないしその前後に、辞任登記の申請をしないで不実の登記を残存させることにつき明示的に承諾を与えていたなどの特段の事情の存在については、原審においてなんら主張立証のないところである。そうすると、右被上告人らは上告人に対し商法二六六条ノ三第一項前段に基づく損害賠償責任を負うものではないとした原審の判断は、結論において是認することができる。」

と、判示しています。


2について、最大判昭和44年11月26日は

「商法は、株式会社の取締役の第三者に対する責任に関する規定として二六六条ノ三を置き、同条一項前段において、取締役がその職務を行なうについて悪意または重大な過失があつたときは、その取締役は第三者に対してもまた連帯して損害賠償の責に任ずる旨を定めている。もともと、会社と取締役とは委任の関係に立ち、取締役は、会社に対して受任者として善良な管理者の注意義務を負い(商法二五四条三項、民法六四四条)、また、忠実義務を負う(商法二五四条ノ二)ものとされているのであるから、取締役は、自己の任務を遂行するに当たり、会社との関係で右義務を遵守しなければならないことはいうまでもないことであるが、第三者との間ではかような関係にあるのではなく、取締役は、右義務に違反して第三者に損害を被らせたとしても、当然に損害賠償の義務を負うものではない。
しかし、法は、株式会社が経済社会において重要な地位を占めていること、しかも株式会社の活動はその機関である取締役の職務執行に依存するものであることを考慮して、第三者保護の立場から、取締役において悪意または重大な過失により右義務に違反し、これによつて第三者に損害を被らせたときは、取締役の任務懈怠の行為と第三者の損害との間に相当の因果関係があるかぎり、会社がこれによつて損害を被つた結果、ひいて第三者に損害を生じた場合であると、直接第三者が損害を被つた場合であるとを問うことなく、当該取締役が直接に第三者に対し損害賠償の責に任ずべきことを規定したのである。」


5について、同判例は

「株式会社の代表取締役は、自己のほかに、他の代表取締役が置かれている場合、他の代表取締役は定款および取締役会の決議に基づいて、また、専決事項についてはその意思決定に基づいて、業務の執行に当たるのであつて、定款に別段の定めがないかぎり、自己と他の代表取締役との間に直接指揮監督の関係はない。しかし、もともと、代表取締役は、対外的に会社を代表し、対内的に業務全般の執行を担当する職務権限を有する機関であるから、善良な管理者の注意をもつて会社のため忠実にその職務を執行し、ひろく会社業務の全般にわたつて意を用いるべき義務を負うものであることはいうまでもない。したがつて、少なくとも、代表取締役が、他の代表取締役その他の者に会社業務の一切を任せきりとし、その業務執行に何等意を用いることなく、ついにはそれらの者の不正行為ないし任務懈怠を看過するに至るような場合には、自らもまた悪意または重大な過失により任務を怠つたものと解するのが相当である。
これを本件についてみると、原審は、
一、訴外Eは、訴外F工業株式会社の資産状態が相当悪化しており約束手形を振り出しても満期に支払うことができないことを容易に予見することができたにもかかわらず、代表取締役としての注意義務を著しく怠つたため、その支払の可能なことを軽信し、代金支払の方法として右訴外会社代表者としての上告人名義の本件七二万円の約束手形を振り出した上、被上告人をして本件鋼材一六トンを引き渡させ、右約束手形が支払不能となつた結果、被上告人に右金額に相当する損害を被らせたこと
二、右訴外会社の代表取締役である上告人は他の代表取締役であるEの職務執行上の重過失または不正行為を未然に防止すべき義務があるにもかかわらず、著しくこれを怠り、訴外会社の業務一切をEに任せきりとし、自己の不知の間に同人をして支払不能になるような前示訴外会社代表者上告人名義の本件約束手形を振り出して本件取引をさせ、上告人の代表取締役としての任務の遂行について重大な過失があつたことにより、被上告人に前記損害を被らせるに至つたものであることを認定し、商法二六六条ノ三第一項前段の規定に基づいて、上告人に損害賠償の責任があるとしているのである。原審の右判断は、さきに説示したところに徴すれば、正当として是認できる。」

と、判示しています。


したがって、上記記述は、1と2が誤りで、5が正しいです。