刑事裁判の歴史と展望あれこれ💖

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しほうちゃれんじ 1035

乙:I can't let it get me off
Or break up my train of thought

出典:https://genius.com/Gin-blossoms-til-i-hear-it-from-you-lyrics

感想:深刻な歌詞。

今日の問題は、新司法試験平成23年刑事系第10問エ.です。

甲は,勾留状の執行により拘禁されている未決の被告人であったところ,逃走の目的で拘禁場の換気孔の周辺の壁部分を削り取って損壊したが,いまだ脱出可能な穴を開けるに至らず,逃走行為自体に及ばないうちに検挙された。この場合,甲には加重逃走未遂罪は成立しない。

甲先生、よろしくお願いします!

甲:刑法43条は

「犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。」

同法98条は

「前条に規定する者又は勾引状の執行を受けた者が拘禁場若しくは拘束のための器具を損壊し、暴行若しくは脅迫をし、又は二人以上通謀して、逃走したときは、三月以上五年以下の懲役に処する。」

と、規定しています。


最判昭和54年12月25日は

「 なお、所論にかんがみ、職権により判断すると、刑法九八条のいわゆる加重逃走罪のうち拘禁場又は械具の損壊によるものについては、逃走の手段としての損壊が開始されたときには、逃走行為自体に着手した事実がなくとも、右加重逃走罪の実行の着手があるものと解するのが相当である。これを本件についてみると、原判決の認定によれば、被告人ほか三名は、いずれも未決の囚人として松戸拘置支所第三舎第三一房に収容されていたところ、共謀のうえ、逃走の目的をもつて、右第三一房の一隅にある便所の外部中庭側が下見板張りで内側がモルタル塗りの木造の房壁(厚さ約一四・二センチメートル)に設置されている換気孔(縦横各約一三センチメートルで、パンチングメタルが張られている。)の周辺のモルタル部分(厚さ約一・二センチメートル)三か所を、ドライバー状に研いだ鉄製の蝶番の芯棒で、最大幅約五センチメートル、最長約一三センチメートルにわたつて削り取り損壊したが、右房壁の芯部に木の間柱があつたため、脱出可能な穴を開けることができず、逃走の目的を遂げなかつた、というのであり、右の事実関係のもとにおいて刑法九八条のいわゆる加重逃走罪の実行の着手があつたものとした原審の判断は、正当である。」

と、判示しています。


したがって、上記記述は、誤りです。