乙:今日の問題は、伊藤塾2024年予備試験全国公開短答模試刑事訴訟法第25問ウです。
次の【事例】中の実況見分調書の証拠調べ請求について述べた後記アからオまでの【記述】のうち(中略)
【事例】
司法警察員Kは、Vに対する殺人事件の捜査として、事件現場の道路につき、被疑者甲を立会人とする見分を行い、実況見分調書を作成した(実況見分調書には、甲の署名・押印のいずれもない。)。甲が、実況見分の際に、道路上の血痕が存在する箇所を指し示しながら、Kに対し「ここでVを刺しました。」と説明したので、Kは、その箇所を写真撮影した後、同写真を実況見分調書に添付するとともに、甲の前記説明内容を実況見分調書に記載した。また、Kは、計測の結果当該箇所が基点から10メートルの地点であることを確定し、その旨をも実況見分調書に記載した。その後、甲は、同事件の犯人として起訴された。検察官は、当該被告事件の公判前整理手続において、「犯行再現状況」を立証趣旨として実況見分調書の証拠調べを請求した。弁護人は、「甲は犯人ではない。」旨主張した上、実況見分調書について不同意の意見を述べた。
【記述】
ウ.実況見分調書の甲の前記説明内容が記載された部分から直ちに、甲が基点から10メートルの地点でVを刺したという事実を認定しようとする場合、当該部分について、証拠能力が認められることはない。
甲先生、よろしくお願いします!
こ、甲先生!?
甲:‘Cause I’m like the clouds
The grey and the heavy
Shut everyone out
Till nobody gets me
出典:https://youtu.be/7cDPDZZCCNI?feature=shared
感想:アルクによると、heavy gray skyは、どんよりした灰色の空、という意味です。
乙:最決平成17年9月27日は
「 2 前記認定事実によれば,本件両書証は,捜査官が,被害者や被疑者の供述内容を明確にすることを主たる目的にして,これらの者に被害・犯行状況について再現させた結果を記録したものと認められ,立証趣旨が「被害再現状況」,「犯行再現状況」とされていても,実質においては,再現されたとおりの犯罪事実の存在が要証事実になるものと解される。【要旨】このような内容の実況見分調書や写真撮影報告書等の証拠能力については,刑訴法326条の同意が得られない場合には,同法321条3項所定の要件を満たす必要があることはもとより,再現者の供述の録取部分及び写真については,再現者が被告人以外の者である場合には同法321条1項2号ないし3号所定の,被告人である場合には同法322条1項所定の要件を満たす必要があるというべきである。もっとも,写真については,撮影,現像等の記録の過程が機械的操作によってなされることから前記各要件のうち再現者の署名押印は不要と解される。
本件両書証は,いずれも刑訴法321条3項所定の要件は満たしているものの,各再現者の供述録取部分については,いずれも再現者の署名押印を欠くため,その余の要件を検討するまでもなく証拠能力を有しない。また,本件写真撮影報告書中の写真は,記録上被告人が任意に犯行再現を行ったと認められるから,証拠能力を有するが,本件実況見分調書中の写真は,署名押印を除く刑訴法321条1項3号所定の要件を満たしていないから,証拠能力を有しない。」
と、判示しています。
したがって、上記記述は、正しいです。