刑事裁判の歴史と展望あれこれ💖

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しほうちゃれんじ 77

今日の問題は

甲は,深夜,帰宅しようと歩いていたところ,道端に見ず知らずのAが重傷を負って倒れているのを見付けた。甲は,周囲にA以外の誰もおらず,Aには意識があるものの,動ける状態ではなかったことから,これに乗じて,Aの傍らに落ちていたAのかばんの中から金品を持ち去って自分のものにしようと考え,Aに対し,「もらっていくよ。」と言って,同かばんからAの財布を取り出して自分のかばんの中に入れた上,Aを救護することなくそのまま放置してその場を立ち去った。甲は,自宅に戻り,Aの財布の中を見たところ,現金約1万円のほか,①大きさや重さは五百円硬貨と同じであるものの,中央に穴が開けられ,模様もない円形の金属片10枚,②クレジットカードと同じ大きさであるものの,外観上なんら印刷が施されておらず,4桁の数字が手書きで書かれ,磁気ストライプらしき黒いテープが貼られているプラスチック製の白色カード1枚を見つけた。甲は,①の金属片はAが自動販売機等で商品を購入する際などに使うつもりで持っていたものだろうと考え,同金属片10枚を1本100円の缶ジュースの自動販売機に順次投入して購入ボタンを押し,出てきたジュース10本と釣銭合計4000円を自分のものにした。また,②の白色カードは,他人のクレジットカードの磁気情報をコピーして不正に作成されたカードであったが,甲は,そのことを認識した上,同カードに書かれた4桁の数字がその暗証番号に違いないと考え,後日同カードを現金自動預払機に挿入して現金を引き出すつもりで,同カードを自宅に保管しておいた。

甲が上記金属片を自動販売機に投入した行為には,偽造通貨行使罪が成立する。


甲先生、よろしくお願いします!
こ、甲先生!?

 自働販売機等って。


「偽造とは,権限のない者が通貨に似た外観のものを作成することをいい,作成された物が一般人をして真正の通貨と誤認させる程度に至っていることが必要である(大判昭和2・1・28新聞2664号10頁,最判昭和25・2・28裁集刑16号663頁)。……変造とは,権限のない者が真正な通貨に加工して通貨に似た外観のもの(一般人をして真正な通貨と誤認させる程度)を作成することをいう。……偽造通貨行使等罪の客体は,偽造又は変造された貨幣……である」

山口 厚[2008]
『刑法』初版 384頁

「通貨偽造の罪(刑法148条)の保護法益は、通貨発行権者の発行権を保障することによって通貨に対する社会の信用を確保しようとするものであり、……中央に穴が開けられている模様もない円形の金属片は、500円通貨と同じ大きさであっても通貨として流通することはなく、本条の保護法益を侵害するものではないので『通貨』には当たらない」

前田 稔[2013]
法学セミナー 222号
「司法試験の問題と解説 2013」
292頁

したがって、上記記述は、誤りです。