刑事裁判の歴史と展望あれこれ💖

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しほうちゃれんじ 237

乙:今日の問題は

甲は,A会社の代表取締役であるが,権限がないのに,A会社が所有し,その旨登記されている土地について,甲を債務者,乙を権利者とする抵当権を設定し,その旨の登記を完了した後,さらに,権限がないのに,当該土地を丙に売却してその旨の登記を完了した。当該土地に抵当権を設定してその旨の登記をした時点で,甲には業務上横領罪が成立するので,当該土地を丙に売却してその旨の登記を完了した行為についてA会社を被害者とする業務上横領罪は成立しない。


甲先生、よろしくお願いします!

こ、甲先生!?

甲:

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乙:刑法253条は

「業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、十年以下の懲役に処する。」

と、規定しています。

最大判平成15年4月23日は


「委託を受けて他人の不動産を占有する者が,これにほしいままに抵当 権を設定してその旨の登記を了した後においても,その不動産は他人の物であり, 受託者がこれを占有していることに変わりはなく,受託者が,その後,その不動産につき,ほしいままに売却等による所有権移転行為を行いその旨の登記を了したときは,委託の任務に背いて,その物につき権限がないのに所有者でなければできな
いような処分をしたものにほかならない。したがって,売却等による所有権移転行為について,横領罪の成立自体は,これを肯定することができるというべきであり,先行の抵当権設定行為が存在することは,後行の所有権移転行為について犯罪の成立自体を妨げる事情にはならない」


と、判示しています。

したがって、A会社を被害者とする業務上横領罪は成立しないとする点で、上記記述は、誤りです。