刑事裁判の歴史と展望あれこれ💖

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しほうちゃれんじ 2590

乙:You think about this love and burn it to the ground
'Cause you're selfish and you don't give up your dime

 

出典:https://genius.com/Azusena-red-sky-lyrics

 

感想:アルクによると、burn to the groundは、焼失する、などの意味です。

 

乙:今日の問題は、令和3年司法試験刑法第20問ウです。

 

次の【事例】に関する後記アからオまでの各【記述】を判例の立場に従って検討し(中略)
【事 例】
暴力団A組の組員甲は,クラブで飲酒していた際,たまたま入店してきた旧知の暴力団B組の組員乙に因縁を付けられて口論になり,乙に拳で殴りかかった。乙は,これを避けた上,更に殴りかかろうとしてきた甲の胸部を拳で数回強打した。その数分後,B組の組員丙は,乙と待ち合わせをしていた上記クラブに到着し,その直後に甲の態度に激高し,いきなり甲の胸部を拳で数回強打した。甲は,全治約1か月間を要する肋骨骨折の傷害を負ったが,同傷害が乙と丙のいずれの暴行によって生じたのかは不明であった。甲は,一旦帰宅したものの怒りが収まらず,何か嫌がらせをしてやろうと考え,金属バットを持ち,覆面で顔を隠してB組事務所に行き,その玄関ドアを同バットでたたいて凹損させた。その直後,甲は,A組事務所に行き,A組の組員丁に対し,B組組員から殴られた腹いせにB組事務所の玄関ドアを凹損させたことを話した。丁は,B組との関係悪化を避けるとともに,甲の刑事責任を免れさせるため,甲との間で,犯行時間帯に甲がA組事務所にいたことにする旨の口裏合わせをした。また,丁は,B組組員複数名による襲撃を受ける可能性もあると考え,万が一に備えて,着衣のポケットに護身用として果物ナイフを入れた。他方,乙及び丙は,上記ドアが凹損させられたとの連絡を受け,甲の仕業だろうと考え,A組事務所へ向かった。乙は,応対に出た丁に対し,「甲を出せ。」と言った。丁は,「何の話だ。」と応じたが,乙は,その態度に憤激し,「しらばっくれるな。」と言い,持っていた拳銃を取り出して丁に突き付けた。丁は,自己の身を守るため,上記ナイフで乙の腹部を1回突き刺し,乙に全治約1か月間を要する腹部刺創の傷害を負わせた。丁は,駆けつけた警察官に逮捕され,その後,逃走していた甲も上記ドアを凹損させた事実で逮捕された。丁は,甲の身柄拘束中,甲の犯行に関する参考人として取調べを受けた際,上記口裏合わせに従い,上記ドアが凹損させられた時間帯に甲がA組事務所にいた旨のうその供述をした。
【記 述】
ウ.甲がB組事務所の玄関ドアを凹損させた行為については,同ドアが工具を使用すれば容易に取り外せる構造であった場合,建造物損壊罪は成立しない。

 

甲先生、よろしくお願いします!

 

甲:最決平成19年3月20日は

 

「2 所論は,本件ドアは,適切な工具を使用すれば容易に取り外しが可能であって,損壊しなければ取り外すことができないような状態にあったとはいえないから,器物損壊罪が成立するにすぎないのに,原判決が建造物損壊罪の成立を認めたのは法令の解釈適用を誤っているという。
しかしながら,建造物に取り付けられた物が建造物損壊罪の客体に当たるか否かは,当該物と建造物との接合の程度のほか,当該物の建造物における機能上の重要性をも総合考慮して決すべきものであるところ,上記1の事実関係によれば,本件ドアは,住居の玄関ドアとして外壁と接続し,外界とのしゃ断,防犯,防風,防音等の重要な役割を果たしているから,建造物損壊罪の客体に当たるものと認められ,適切な工具を使用すれば損壊せずに同ドアの取り外しが可能であるとしても,この結論は左右されない。そうすると,建造物損壊罪の成立を認めた原判断は,結論において正当である。」

 

と、判示しています。

 

 

したがって、上記記述は、誤りです。