刑事裁判の歴史と展望あれこれ💖

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しほうちゃれんじ 2622

乙:今日の問題は、令和3年予備試験行政法第18問エです。

 

原告適格に関する次のアからエまでの各記述について,最高裁判所の判例に照らし(中略)
エ.建築基準法に基づくいわゆる総合設計許可について,同許可に係る建築物の倒壊,炎上等により直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に存する建築物に居住し,又はこれを所有する者は,その取消しを求める原告適格を有するが,同許可に係る建築物により日照を阻害される周辺の他の建築物に居住する者は,その原告適格を有しない。

 

甲先生、よろしくお願いします!

こ、甲先生!?

 

甲:Don't make me laugh

 

出典:https://genius.com/Twayn-criminal-lyrics

 

感想:アルクによると、make someone laughは、(人)を笑わせる、という意味です。

 

乙:最判平成14年1月22日は

 

「 建築基準法は,52条において建築物の容積率制限,55条及び56条において高さ制限を定めているところ,これらの規定は,本来,建築密度,建築物の規模等を規制することにより,建築物の敷地上に適度な空間を確保し,もって,当該建築物及びこれに隣接する建築物等における日照,通風,採光等を良好に保つことを目的とするものであるが,そのほか,当該建築物に火災その他の災害が発生した場合に,隣接する建築物等に延焼するなどの危険を抑制することをもその目的に含むものと解するのが相当である。そして,同法59条の2第1項は,上記の制限を超える建築物の建築につき,一定規模以上の広さの敷地を有し,かつ,敷地内に一定規模以上の空地を有する場合においては,安全,防火等の観点から支障がないと認められることなどの要件を満たすときに限り,これらの制限を緩和することを認めている。このように,同項は,必要な空間を確保することなどを要件として,これらの制限を緩和して大規模な建築物を建築することを可能にするものである。容積率制限や高さ制限の規定の上記の趣旨・目的等をも考慮すれば,同項が必要な空間を確保することとしているのは,当該建築物及びその周辺の建築物における日照,通風,採光等を良好に保つなど快適な居住環境を確保することができるようにするとともに,地震,火災等により当該建築物が倒壊,炎上するなど万一の事態が生じた場合に,その周辺の建築物やその居住者に重大な被害が及ぶことがないようにするためであると解される。そして,同項は,特定行政庁が,以上の各点について適切な設計がされているかどうかなどを審査し,安全,防火等の観点から支障がないと認めた場合にのみ許可をすることとしているのである。以上のような同項の趣旨・目的,同項が総合設計許可を通して保護しようとしている利益の内容・性質等に加え,同法が建築物の敷地,構造等に関する最低の基準を定めて国民の生命,健康及び財産の保護を図ることなどを目的とするものである(1条)ことにかんがみれば,同法59条の2第1項は,上記許可に係る建築物の建築が市街地の環境の整備改善に資するようにするとともに,当該建築物の倒壊,炎上等による被害が直接的に及ぶことが想定される周辺の一定範囲の地域に存する他の建築物についてその居住者の生命,身体の安全等及び財産としてのその建築物を,個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むものと解すべきである。そうすると,【要旨】総合設計許可に係る建築物の倒壊,炎上等により直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に存する建築物に居住し又はこれを所有する者は,総合設計許可の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者として,その取消訴訟における原告適格を有すると解するのが相当である。」

 

最判平成14年3月28日は

 

「 建築基準法は,建築物の敷地,構造等に関する最低の基準を定めて,国民の生命,健康及び財産の保護を図ることなどを目的とするものである(1条)ところ,同法59条の2第1項は,同法52条の容積率制限,同法55条又は56条の高さ制限の特例として,一定規模以上の広さの敷地を有し,かつ,敷地内に一定規模以上の空地を有する場合に限り,安全,防火,衛生等の観点から支障がないと認められることなどの要件の下に,これらの制限を緩和することを認めている。容積率制限や高さ制限の規定の趣旨・目的等をも考慮すれば,同法59条の2第1項の規定は,これらの制限の緩和を認めて大規模な建築物を建築することを可能にする一方で,必要な空間を確保することにより,当該建築物及びその周辺の建築物における日照,通風,採光等を良好に保つなど快適な居住環境を確保することができるようにするとともに,当該建築物が地震,火災等により倒壊,炎上するなど万一の事態が生じた場合に,その周辺の建築物やその居住者に重大な被害が及ぶことのないよう適切な設計がされていることなどを審査し,安全,防火,衛生等の観点から支障がないと認められる場合にのみ許可をすることとしているものと解される(最高裁平成9年(行ツ)第7号同14年1月22日第三小法廷判決・民集56巻1号登載予定参照)。以上のような同項の趣旨・目的,同項が総合設計許可を通して保護しようとしている利益の内容・性質等にかんがみれば,同項は,上記許可に係る建築物の建築が市街地の環境の整備改善に資するようにするとともに,当該建築物により日照を阻害される周辺の他の建築物に居住する者の健康を個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むものと解すべきである。そうすると,【要旨1】総合設計許可に係る建築物により日照を阻害される周辺の他の建築物の居住者は,総合設計許可の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者として,その取消訴訟における原告適格を有すると解するのが相当である。」

 

と、判示しています。

 

 

したがって、上記記述は、誤りです。