刑事裁判の歴史と展望あれこれ💖

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しほうちゃれんじ 141

甲:SFMお疲れ様でした

今日の問題も、プレからです。

Aは,Bに対し,自己所有の甲土地を売ったが,この売買はBの詐欺によるものであった。AはAB間の売買を取り消すとの意思表示をしたが,その前に,BがCに対し,この土地を売った。Cは,Bから所有権移転登記を受けていなくても,BC間の売買契約当時,AB間の売買がBの詐欺によるものであることを知らなかったときは,Aに対し,甲土地の所有権取得を主張できる。


乙さん、よろしくお願いします!

乙:起案めんどい…。

民法96条1項は

「詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。」

同条3項は

「前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない。」

と、規定しています。

最判昭和55年9月11日は

「民法九四条二項所定の第三者の善意・悪意は、同条項の適用の対象となるべき法律関係ごとに当該法律関係につき第三者が利害関係を有するに至つた時期を基準として決すべきものと解するのが相当である」

と、判示していて、96条3項の「善意」についても、同様に解されています。

大村敦志『基本民法Ⅰ』(第3版)93頁


最判昭和49年9月26日は

「民法九六条一項、三項は、詐欺による意思表示をした者に対し、その意思表示の取消権を与えることによつて詐欺被害者の救済をはかるとともに、他方その取消の効果を『善意の第三者』との関係において制限することにより、当該意思表示の有効なことを信頼して新たに利害関係を有するに至つた者の地位を保護しようとする趣旨の規定であるから、右の第三者の範囲は、同条のかような立法趣旨に照らして合理的に画定されるべきであつて、必ずしも、所有権その他の物権の転得者で、かつ、これにつき対抗要件を備えた者に限定しなければならない理由は、見出し難い。」

と、判示しています。

大判昭和17年9月30日は

「原院ハ民法第九十六条第三項ニ依リ保護ヲ受クヘキ第三者トハ詐欺ニ因ル意思表示ノ取消ナキ間ニ権利ヲ取得シタル第三者ヲ謂フモノニシテ取消アリタル後ニ権利ヲ取得シタル第三者ハ縦令取消ノ事実ヲ知ラスシテ権利ヲ取得シタル場合ニ於テモ右規定ノ保護ヲ受クルコトヲ得サルモノナリト解釈シ上告人カ第一目録記載ノ土地ニ付取得シタル抵当権及代物弁済ニ因ル所有権移転請求権ハ被上告人先代ノ取消ノ意思表示ヲ為ス以前ニ善意ニテ取得シ登記ヲ為シタルモノナレハ被上告人ハ上告人ニ対シ右ノ権利ニ付為サレタル各登記ノ抹消ヲ請求スルコトヲ得サルモノナリト判断シ此ノ部分ニ関スル被上告人ノ請求ヲ棄却シタルモ第一目録記載ノ土地ニ対スル条件附賃借権ノ設定及第二目録記載ノ土地ニ対スル抵当権設定代物弁済ニ因ル所有権移転請求権条件附賃借権設定ハ孰モ取消ノ意思表示アリタル後ニ為サレ登記セラレタルモノナレハ其ノ登記ノ原因ヲ欠クモノニシテ仮令上告人カ契約当時取消ノ意思表示アリタルコトヲ知ラス又被上告人カ売買ノ取消ニ因ル権利変動ノ登記ヲ為ササルモ上告人ハ此等ノ権利ヲ以テ被上告人ニ対抗スルコトヲ得サルモノナリト判断シ此ノ部分ニ関スル被上告人ノ請求ヲ認容シタリ第一審判決モ亦第二審ニ於ケル請求拡張ノ部分ヲ除クノ外同一趣旨ニ出テタリ
当院ハ原判決ニ審理不尽理由不備ノ不法アリトシテ之ヲ破毀シタリ
附言 原院カ被上告人中川ノ請求ヲ棄却シタル部分ニ対シテハ中川ヨリ独立ニ上告ヲ為シタリ其ノ結果原審カ本件松井幹ト中川重太郎間ノ売買契約カ詐欺ニ因ル意思表示ナルカ又ハ瑕疵ナキ意思表示ニシテ松井ノ代金支払債務ノ不履行アルニ過キスト判断シタル部分ハ理由不備ナリトシテ之ヲ破毀シタリ」

と、判示しています。

したがって、上記記述は、正しいです。