刑事裁判の歴史と展望あれこれ💖

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しほうちゃれんじ 1840

今日の問題は、新司法試験平成28年民法第36問アウエオです。

A所有の甲土地に関する(中略)
ア.Aは,BからBの取引上の信用のために,甲土地の所有権を仮装譲渡するように依頼を受け,
Bへの所有権移転登記を了した。この場合において,Bから甲土地を譲り受けたCが,仮装譲
渡について善意のときは,登記を備えていなくてもAに対して甲土地の所有権取得を主張する
ことができる。
ウ.Dは,建物所有を目的としてAから甲土地を賃借し,甲土地上に乙建物を建築してD名義で乙建物の所有権保存登記を有している。Aは,BからBの取引上の信用のために,甲土地の所有権を仮装譲渡するように依頼を受け,Bへの所有権移転登記を了した。この場合において,
Bから甲土地を仮装譲渡であることについて善意で譲り受けて登記を備えたCは,仮装譲渡で
あることをDが知っていたときは,甲土地の賃借権を否定することができる。
エ.Aは,BからBの取引上の信用のために,甲土地の所有権を仮装譲渡するように依頼を受け,
Bへの所有権移転登記を了した。この場合において,Bから甲土地を仮装譲渡であることにつ
いて善意で譲り受けたCから更に甲土地を譲り受けて登記を備えたDは,仮装譲渡について悪
意であったとしても甲土地の所有権を取得する。
オ.Dは,建物所有を目的としてAから甲土地を賃借し,甲土地上に乙建物を建築してD名義で
乙建物の所有権保存登記を有している。Dは,BからBの取引上の信用のために,乙建物の所
有権を仮装譲渡するように依頼を受け,Bへの所有権移転登記を了した。この場合において,
仮装譲渡であることを知らなかったAは,Bに対して,賃借権の譲渡を承諾し,地代の支払を
求めることができる。

甲先生、よろしくお願いします!
こ、甲先生!?


甲:

出典:https://genius.com/Oneohtrix-point-never-black-snow-lyrics

感想:


乙:民法94条は

「相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。
2 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。」

と、規定しています。


アについて、最判昭和44年5月27日は

「民法九四条が、その一項において相手方と通じてした虚偽の意思表示を無効としながら、その二項において右無効をもつて善意の第三者に対抗することができない旨規定しているゆえんは、外形を信頼した者の権利を保護し、もつて、取引の安全をはかることにあるから、この目的のためにかような外形を作り出した仮装行為者自身が、一般の取引における当事者に比して不利益を被ることのあるのは、当然の結果といわなければならない。したがつて、いやしくも、自ら仮装行為をした者が、かような外形を除去しない間に、善意の第三者がその外形を信頼して取引関係に入つた場合においては、その取引から生ずる物権変動について、登記が第三者に対する対抗要件とされているときでも、右仮装行為者としては、右第三者の登記の欠缺を主張して、該物権変動の効果を否定することはできないものと解すべきである。この理は、本件の如く、民法九四条二項を類推適用すべき場合においても同様であつて、原審の適法に確定した事実関係のもとにおいては、上告人らは、被上告人山泉真也が本件不動産について所有権取得登記を経由していないことを理由として、同人らのこれに対する所有権の取得を否定することはできないものというべきである。」

ウについて、民法177条は

「不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。」

と、規定しています。

最判昭和49年3月19日は

「本件宅地の賃借人としてその賃借地上に登記ある建物を所有する上告人は本件宅地の所有権の得喪につき利害関係を有する第三者であるから、民法一七七条の規定上、被上告人としては上告人に対し本件宅地の所有権の移転につきその登記を経由しなければこれを上告人に対抗することができず、したがってまた、賃貸人たる地位を主張することができないものと解するのが、相当である(大審院昭和八年(オ)第六〇号同年五月九日判決・民集一二巻一一二三頁参照)。
 ところで、原判文によると、上告人が被上告人の本件宅地の所有権の取得を争っていること、また、被上告人が本件宅地につき所有権移転登記を経由していないことを自陳していることは、明らかである。それゆえ、被上告人は本件宅地につき所有権移転登記を経由したうえではじめて、上告人に対し本件宅地の所有権者であることを対抗でき、また、本件宅地の賃貸人たる地位を主張し得ることとなるわけである。したがって、それ以前には、被上告人は右賃貸人として上告人に対し賃料不払を理由として賃貸借契約を解除し、上告人の有する賃借権を消滅させる権利を有しないことになる。そうすると、被上告人が本件宅地につき所有権移転登記を経由しない以前に、本件宅地の賃貸人として上告人に対し賃料不払を理由として本件宅地の賃貸借契約を解除する権利を有することを肯認した原判決の前示判断には法令解釈の誤りがあり、この違法は原判決の結論に影響を与えることは、明らかである。」

エについて、大判昭和6年10月24日は

「虚偽ノ意思表示ニ依ル不動産ノ譲渡契約アリタル場合ニ其ノ情ヲ知ラサル第三者カ右譲渡ノ契約ヲ為シタル者ヨリ抵当権ノ設定ヲ受ケタルトキハ右譲渡契約ノ無効ハ之ヲ以テ其ノ第三者ニ対抗スルコトヲ得サルハ民法第九十四条第二項ノ規定ニ依リ明白ナルカ故ニ第三者ヨリシテ之ヲ観レハ不動産ノ所有者ヨリ抵当権ノ設定ヲ受ケタルモノニシテ有効ニ該権利ヲ取得セルモノト謂フヘキモノトス」

オについて、最判昭和38年11月28日は

「被上告人両名間の本件第三建物についての所有権譲渡およびその旨の登記が通謀虚偽表示によるものであると認めた原判示は、正当である。また、右事実関係の下において、上告人が民法九四条二項にいわゆる第三者に当らないとした原審の解釈も、正当であつて、原判決の引用している大審院昭和一四年(オ)八四二号同年一二月九日判決、民集一八巻一五五一頁の判例は、これを変更する必要をみない。」

大判昭和14年12月9日は

「民法第九十四条第二項ハ相手方ト通シテ為シタル虚偽ノ意思表示ニ因リ善意ノ第三者ニ不測ノ損害ヲ被ラシムルコトナカラシメンカ為メノ規定ニ他ナラス然ルニ原審認定ノ如ク本件土地ノ賃借人タル与四郎カ其ノ地上ニ所有スル本件建物ヲ被上告人まつニ真実譲渡スルコトナク唯同人ニ之ヲ贈与シタル旨所轄区役所ニ虚偽ノ届出ヲ為シ且同人ノ所有名義ニ保存登記ヲ為シ之ニ因リ上告人カ右ハ真実ノ譲渡アリタルモノト誤信シタレハトテ上告人ハ之ニ因リ毫モ損害ヲ被ルモノニ非ス又与四郎ハ賃貸人タル上告人ノ承諾ナクシテ本件土地ヲまつニ使用セシメタルモノト云フヲ得サルハ勿論ナルカ故ニ上告人ハ未タ同条第二項ニ所謂第三者ニ該当セサルモノト云フヘク」

と、判示しています。


したがって、アとエが正しく、ウとオが誤りです。