刑事裁判の歴史と展望あれこれ💖

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しほうちゃれんじ 2521

乙:今日の問題は、令和4年予備試験刑事訴訟法第24問オです。

 

違法収集証拠排除法則に関する(中略)ただし、判例がある場合には、それに照らして考えるものとする。(中略)
オ.違法な逮捕に引き続く身体拘束中に覚醒剤使用の証拠となる尿を被疑者が任意提出した場合、逮捕が覚醒剤使用ではなく窃盗を理由とするものであれば、尿の証拠能力は否定されない。

 

甲先生、よろしくお願いします!

こ、甲先生!?

 

甲:Got this pit in my stomach, makes my skin crawl in the best way

 

出典:https://youtu.be/OpG-WE7cmqo

 

感想:アルクによると、pit of the stomachは、みぞおち、という意味です。

 

乙:最判平成15年2月14日は

 

 「1 原判決の認定及び記録によれば,本件捜査及びその後の経過は,次のとおりである。  (1) 被告人に対しては,かねて窃盗の被疑事実による逮捕状(以下「本件逮捕状」という。)が発付されていたところ,平成10年5月1日朝,滋賀県大津警察署の警部補横山寛外2名の警察官は,被告人の動向を視察し,その身柄を確保するため,本件逮捕状を携行しないで同署から警察車両で三重県上野市内の被告人方に赴いた。 

(2) 上記警察官3名は,被告人方前で被告人を発見して,任意同行に応ずるよう説得したところ,被告人は,警察官に逮捕状を見せるよう要求して任意同行に応じず,突然逃走して,隣家の敷地内に逃げ込んだ。

(3) 被告人は,その後,隣家の敷地を出て来たところを上記警察官3名に追いかけられて,更に逃走したが,同日午前8時25分ころ,被告人方付近の路上(以下「本件現場」という。)で上記警察官3名に制圧され,片手錠を掛けられて捕縛用のロープを身体に巻かれ,逮捕された。

 (4) 被告人は,被告人方付近の物干し台のポールにしがみついて抵抗したものの,上記警察官3名にポールから引き離されるなどして警察車両まで連れて来られ,同車両で大津警察署に連行され,同日午前11時ころ同署に到着した後,間もなく警察官から本件逮捕状を呈示された。  

(5) 本件逮捕状には,同日午前8時25分ころ,本件現場において本件逮捕状を呈示して被告人を逮捕した旨のA警察官作成名義の記載があり,さらに,同警察官は,同日付けでこれと同旨の記載のある捜査報告書を作成した。

 (6) 被告人は,同日午後7時10分ころ,大津警察署内で任意の採尿に応じたが,その際,被告人に対し強制が加えられることはなかった。被告人の尿について滋賀県警察本部刑事部科学捜査研究所研究員が鑑定したところ,覚せい剤成分が検出された。

 (7) 同月6日,大津簡易裁判所裁判官から,被告人に対する覚せい剤取締法違反被疑事件について被告人方を捜索すべき場所とする捜索差押許可状が発付され, 既に発付されていた被告人に対する窃盗被疑事件についての捜索差押許可状と併せて同日執行され,被告人方の捜索が行われた結果,被告人方からビニール袋入り覚 せい剤1袋(以下「本件覚せい剤」という。)が発見されて差し押さえられた。

 (8) 被告人は,同年6月11日,「法定の除外事由がないのに,平成10年4 月中旬ころから同年5月1日までの間,三重県下若しくはその周辺において,覚せい剤若干量を自己の身体に摂取して,使用した」との事実(公訴事実第1),及び 「同年5月6日,同県上野市内の被告人方において,覚せい剤約0.423gをみだりに所持した」との事実(公訴事実第2)により起訴され,同年10月15日, 本件逮捕状に係る窃盗の事実についても追起訴された。

(9) 上記被告事件の公判において,本件逮捕状による逮捕手続の違法性が争われ,被告人側から,逮捕時に本件現場において逮捕状が呈示されなかった旨の主張がされたのに対し,前記3名の警察官は,証人として,本件逮捕状を本件現場で被告人に示すとともに被疑事実の要旨を読み聞かせた旨の証言をした。原審は,上記証言を信用せず,警察官は本件逮捕状を本件現場に携行していなかったし,逮捕時に本件逮捕状が呈示されなかったと認定している(この原判決の認定に,採証法則違反の違法は認められない。)。
 2 以上の事実を前提として,原審が違法収集証拠に当たるとして証拠から排除した被告人の尿に関する鑑定書,これを疎明資料として発付された捜索差押許可状により押収された本件覚せい剤,本件覚せい剤に関する鑑定書について,その証拠能力を検討する。
 (1) 【要旨1】本件逮捕には,逮捕時に逮捕状の呈示がなく,逮捕状の緊急執行もされていない(逮捕状の緊急執行の手続が執られていないことは,本件の経過から明らかである。)という手続的な違法があるが,それにとどまらず,警察官は,その手続的な違法を糊塗するため,前記のとおり,逮捕状へ虚偽事項を記入し,内容虚偽の捜査報告書を作成し,更には,公判廷において事実と反する証言をしているのであって,本件の経緯全体を通して表れたこのような警察官の態度を総合的に考慮すれば,本件逮捕手続の違法の程度は,令状主義の精神を潜脱し,没却するような重大なものであると評価されてもやむを得ないものといわざるを得ない。そして,このような違法な逮捕に密接に関連する証拠を許容することは,将来における違法捜査抑制の見地からも相当でないと認められるから,その証拠能力を否定すべきである(最高裁昭和51年(あ)第865号同53年9月7日第一小法廷判決・刑集32巻6号1672頁参照)。
 (2) 前記のとおり,本件採尿は,本件逮捕の当日にされたものであり,その尿は,上記のとおり重大な違法があると評価される本件逮捕と密接な関連を有する証拠であるというべきである。また,その鑑定書も,同様な評価を与えられるべきものである。
 したがって,原判決の判断は,上記鑑定書の証拠能力を否定した点に関する限り,相当である。」

 

と、判示しています。

 

 

したがって、上記記述は、誤りです。