刑事裁判の歴史と展望あれこれ💖

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しほうちゃれんじ 2576

乙:The air was thick in the elevator

 

出典:https://youtu.be/0a7VMhFQbCE?feature=shared

 

感想:アルクによると、thick airは、どんよりとした空気、という意味です。

 

今日の問題は、令和3年司法試験刑法第7問アです。

 

次のアからオまでの各記述を判例の立場に従って検討した場合(中略)
ア.甲は,情を知らない法務局の担当登記官Aに対し,虚偽の申立てをして登記簿の磁気ディスクに不実の記録をさせた後,当該記録の内容を閲覧可能な状態にした。この場合,甲には,電磁的公正証書原本不実記録罪及び同供用罪が成立し,これらは牽連犯となる。

 

甲先生、よろしくお願いします!

 

甲:刑法54条1項は

 

「一個の行為が二個以上の罪名に触れ、又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する。」

 

同法157条1項は

 

「公務員に対し虚偽の申立てをして、登記簿、戸籍簿その他の権利若しくは義務に関する公正証書の原本に不実の記載をさせ、又は権利若しくは義務に関する公正証書の原本として用いられる電磁的記録に不実の記録をさせた者は、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。」

 

同法158条1項は

 

「第百五十四条から前条までの文書若しくは図画を行使し、又は前条第一項の電磁的記録を公正証書の原本としての用に供した者は、その文書若しくは図画を偽造し、若しくは変造し、虚偽の文書若しくは図画を作成し、又は不実の記載若しくは記録をさせた者と同一の刑に処する。」

 

と、規定しています。

 

最大判昭和24年12月21日は

 

「牽連犯は元来数罪の成立があるのであるが、法律がこれを処断上一罪として取扱うこととした所以は、その数罪間にその罪質上通例その一方が他方の手段又は結果となるという関係があり、しかも具体的にも犯人がかゝる関係においてその数罪を実行したような場合にあつては、これを一罪としてその最も重き罪につき定めた刑を以て処断すれば、それによつて、軽き罪に対する処罰をも充し得るのを通例とするから、犯行目的の単一性をも考慮して、もはや数罪としてこれを処断するの必要なきものと認めたことによるものである。従つて数罪が牽連犯となるためには犯人が主観的にその一方を他方の手段又は結果の関係において実行したというだけでは足らず、その数罪間にその罪質上通例手段結果の関係が存在すべきものたることを必要とするのである。」

 

最決昭和42年8月28日は

 

「しかし、所論にかんがみ職権によつて調査するに、原判決の是認した第一審判決認定の事実によると、被告人は、臼沢武から金員を騙取するために、抵当権設定登記申請手続を委任する旨の矢浦富太郎名義の委任状を偽造し、これを関係書類とともに登記官吏に提出して行使し、登記簿の原本に抵当権が設定された旨の不実の記載をさせて、これを行使させるとともに、右臼沢に対し、抵当権設定登記を経由した事実を証明する登記済権利証を示して、同人をその旨誤信させ、よつて同人から、借用金名下に現金七〇万円を騙取したというのであつて、右公正証書原本不実記載罪およびその行使罪と詐欺罪とは、罪質上通例手段結果の関係にあるものと認められるから、右数罪は、刑法五四条一項後段のいわゆる索連犯に当るものといわなければならない(昭和七年四月一一日大審院判決、刑集一一巻上三四九頁参照)。 
 そうすると、これと異なる見地に立つて、右公正証書原本不実記載罪およびその行使罪と詐欺罪とを併合罪の関係にあるものとした原判決は、法令の解釈適用を誤つたものというべきである。しかしながら、原判決は、右数罪のほか、これらと併合罪の関係にある二個の詐欺罪および一個の業務上横領罪を合わせて一個の併合罪として、もつとも重い詐欺罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で処断しているのであるから、右違法は、判決に影響を及ぼさない。」

 

と、判示しています。

 

 

したがって、上記記述は、正しいです。