乙:今日の問題は、2問あります。
ア.国家統治の基本を定めた法としての憲法を「固有の意味の憲法」と呼び,そのうち国家権力を制限して国民の権利を保障するという思想に基づくものを特に「立憲的意味の憲法」と呼んで,その余の「固有の意味の憲法」と区別することがある。この区別は,憲法の内容に着目した区別であり,憲法の存在形式とは無関係である。
ウ.憲法改正に法律の改正より困難な手続が要求される憲法を「硬性憲法」,法律の改正と同じ手続でよいものを「軟性憲法」として区別することがある。憲法の最高法規性は,憲法が「硬性憲法」として,国法秩序において最も強い形式的効力を持つ点に求められるのであって,憲法がいかなる基本価値を体現しているかということとは関係がない。
甲先生、よろしくお願いします!
こ、甲先生!?
甲:
乙:アの前段について
「実質的意味の憲法には二つのものがある。(中略)国家の統治の基本を定めた法としての憲法であり、通常「固有の意味の憲法」と呼ばれる。(中略)実質的意味の憲法の第二は、自由主義に基づいて定められた国家の基礎法である。一般に「立憲的意味の憲法」(中略)と言われる。」
芦部信喜『憲法』第六版 4-5頁
前段は正しいです。
後段について
「実質的意味の憲法とは、憲法がどのような形態をとって存在しているか(成文か不文か、憲法典の形をとっているかどうか)とは関係なく、その内容に着目して捉えた場合の憲法概念である。先に見た立憲的意味の憲法と固有の意味の憲法の区別は、憲法の内容を問題としており、実質的意味の憲法についての区別である。」
高橋和之『憲法Ⅰ』(第5版)7頁
後段も正しいです。
ウの前段について
「硬性か軟性か、つまり、改正が単純多数決で成立する通常の立法の場合と同じか、それよりも難しく、特別多数決(三分の二、ないし五分の三)、またはそれに加えて国民投票を要件としているかどうか、(中略)という区別などがある、と説かれてきた。」
芦部信喜『憲法』第六版 7-8頁
前段は正しいです。
後段について
「「自由の基礎法」であることが憲法の最高法規性の実質的根拠であること、この「実質的最高法規性」は、形式的最高法規性の基礎をなし、憲法の最高法規性を真に支えるものであること、を意味する。」
同12頁
後段は誤りです。
したがって、上記記述は、アが正しく、ウが誤りです。