刑事裁判の歴史と展望あれこれ💖

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しほうちゃれんじ 1114

乙:She'll get a hold on you believe it

 

出典:Philip Bailey – Easy Lover Lyrics | Genius Lyrics

 

感想:つかんで離さないような感じ。

 

 

今日の問題は、司法試験平成24年刑事系科目第11問イです。

 

 【事 例】
甲は,殺意をもって,乙の頭部目掛けて包丁で1回切り付けたが,乙は,これを左腕で防いだため,左前腕部切創の傷害を負った。
【記 述】
イ.乙は,前記左前腕部切創に起因する出血のため,早期に治療を受けなければ出血性ショックにより死亡する危険のある状態となった。甲は,乙に致命傷を与えたと思い,その場を立ち去ろうとしたが,乙から「助けてくれ。」と懇願されたため,憐憫の情を催し,通行人に「あそこに怪我人がいるから,あとはよろしく。」とだけ告げて立ち去った。乙は,その通行人が手配した救急車によって病院に搬送されて治療を受けた結果,死亡するに至らなかった。

 

 甲先生、よろしくお願いします!

 

甲:刑法43条は

 

「犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。」

 

と、規定しています。

 

大判昭和12年6月25日は

 

「刑法第四十三條但書ニ所謂中止犯ハ犯人カ犯罪ノ實行ニ著手シタル後其ノ繼續中任意ニ之ヲ中止シ若ハ結果ノ發生ヲ防止スルニ由リ成立スルモノニシテ結果發生ニ付テノ防止ハ必スシモ犯人單獨ニテ之ニ當ルノ要ナキコト勿論ナリト雖其ノ自ラ之ニ當ラサル場合ハ少クトモ犯人自身之カ防止ニ當リタルト同視スルニ足ルヘキ程度ノ努力ヲ拂フノ要アルモノトス今本件ヲ觀ルニ原判決ノ確定シタル事實ニ依レハ被告人ハ本件放火ノ實行ニ著手後逃走ノ際火勢ヲ認メ遽ニ恐怖心ヲ生シ判示磯山隆男ニ對シ放火シタルニ依リ宜敷頼ムト叫ヒナカラ走リ去リタリト云フニ在ルヲ以テ被告人ニ於テ放火ノ結果發生ノ防止ニ付自ラ之ニ當リタルト同視スルニ足ルヘキ努力ヲ盡シタルモノト認ムルヲ得サルカ故ニ被告人ノ逃走後該磯山隆男等ノ消火行爲ニ依リ放火ノ結果發生ヲ防止シ得タリトスルモ被告人ノ前示行爲ヲ以テ本件犯罪ノ中止犯ナリト認ムルヲ得ス從テ原判決ニハ所論ノ違法ナク論旨理由ナシ」

 

と、判示しています。

 

 

したがって、上記記述は、中止犯が成立しません。