刑事裁判の歴史と展望あれこれ💖

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しほうちゃれんじ 634

乙:甲先生と、「風とロック芋煮会」に行きたいです。

今日の問題は

甲が乙に対し,Aをナイフで脅してAから金品を強取するように教唆したところ,乙は,その旨決意し,Aをナイフで脅したが,その最中に殺意を抱き,Aの腹部をナイフで刺してAに傷害を負わせ,Aから金品を強取したものの,Aを殺害するには至らなかった。甲には強盗罪の教唆犯が成立するにとどまる。

甲:http://www4.nhk.or.jp/fukushimazutto/64/

乙:刑法38条2項は

「重い罪に当たるべき行為をしたのに、行為の時にその重い罪に当たることとなる事実を知らなかった者は、その重い罪によって処断することはできない。」

同法236条1項は

「暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。」

同法240条は

「強盗が、人を負傷させたときは無期又は六年以上の懲役に処し、死亡させたときは死刑又は無期懲役に処する。」

同法243条は

「第二百三十五条から第二百三十六条まで、第二百三十八条から第二百四十条まで及び第二百四十一条第三項の罪の未遂は、罰する。」

と、規定しています。


最決昭和61年6月9日は

「まず、本件において、被告人は、覚せい剤であるフエニルメチルアミノプロパン塩酸塩を含有する粉末を麻薬であるコカインと誤認して所持したというのであるから、麻薬取締法六六条一項、二八条一項の麻薬所持罪を犯す意思で、覚せい剤取締法四一条の二第一項一号、一四条一項の覚せい剤所持罪に当たる事実を実現したことになるが、両罪は、その目的物が麻薬か覚せい剤かの差異があり、後者につき前者に比し重い刑が定められているだけで、その余の犯罪構成要件要素は同一であるところ、麻薬と覚せい剤との類似性にかんがみると、この場合、両罪の構成要件は、軽い前者の罪の限度において、実質的に重なり合つているものと解するのが相当である。被告人には、所持にかかる薬物が覚せい剤であるという重い罪となるべき事実の認識がないから、覚せい剤所持罪の故意を欠くものとして同罪の成立は認められないが、両罪の構成要件が実質的に重なり合う限度で軽い麻薬所持罪の故意が成立し同罪が成立するものと解すべきである(最高裁昭和五二年(あ)第八三六号同五四年三月二七日第一小法廷決定・刑集三三巻二号一四〇頁参照)。」

大判大正13年4月29日は

「凡ソ人ノ身體ヲ不法ニ侵害スル認識ヲ以テ爲シタル意思活動ニ因リ人ヲ死ニ致シタルトキハ傷害致死罪ヲ構成スルモノトス故ニ傷害致死罪ニ在テハ他人ニ對シ唯暴行ヲ加フルノ意思アルヲ以テ足レリトシ人ヲ死ニ致スノ故意ナキコトヲ要スルヤ論ナシ若シ夫レ人ヲ死ニ致スノ故意アルニ於テハ殺人罪ヲ構成スルニ至ルヘケレハナリ是ヲ以テ苟モ人ヲ敎唆シテ他人ニ暴行ヲ加へシメタル以上ハ其ノ暴行ノ結果他人ノ身體ヲ傷害シ因テ死ニ致シタルニ於テハ敎唆者ハ傷害致死ノ罪責ニ任セサルへカラサルヤ事理ノ當然ト謂フヘシ原判旨ニ依レハ被告彌三吉ハ被告末吉等ト相謀リ判示池田某其ノ他ノ者ニ對シ富永某及堀部某ニ暴行ヲ加フヘキコトヲ敎唆シ被敎唆者タル池田某其ノ他ノ者ニ於テ富永某ニ對シ判示暴行ヲ加ヘ同人ノ身體ニ判示創傷ヲ負ハシメタル結果人同ヲシテ死亡スルニ至ラシメタルモノニシテ其ノ教唆者タル被告彌三吉ハ右富永某ニ對スル傷害致死ノ罪責ヲ免ルルコトヲ得サルモノトス」

と、判示しています。


したがって、上記記述は、誤りです。