刑事裁判の歴史と展望あれこれ💖

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しほうちゃれんじ 306

乙:今日の問題は、旧司法試験からです。

Aは,Bに対する債権をCに譲渡し,その後,同じ債権をDに譲渡した。Cに対する債権譲渡についてAから内容証明郵便による通知がBに到達した後に,BがAからDに 対する債権譲渡について確定日附ある証書で異議をとどめずに承諾をしたときは,BはDからの弁済請求を拒むことはできない。

甲先生、よろしくお願いします!

こ、甲先生!?

甲:

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乙:民法467条は

「指名債権の譲渡は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。
2  前項の通知又は承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗することができない。」


同法468条1項は

「債務者が異議をとどめないで前条の承諾をしたときは、譲渡人に対抗することができた事由があっても、これをもって譲受人に対抗することができない。この場合において、債務者がその債務を消滅させるために譲渡人に払い渡したものがあるときはこれを取り戻し、譲渡人に対して負担した債務があるときはこれを成立しないものとみなすことができる。」

と、規定しています。

最判昭和49年3月7日は

「民法四六七条の対抗要件制度の構造に鑑みれば、債権が二重に譲渡された場合、譲受人相互の間の優劣は、通知又は承諾に付された確定日附の先後によつて定めるべきではなく、確定日附のある通知が債務者に到達した日時又は確定日附のある債務者の承諾の日時の先後によつて決すべきであり、また、確定日附は通知又は承諾そのものにつき必要であると解すべきである。そして、右の理は、債権の譲受人と同一債権に対し仮差押命令の執行をした者との間の優劣を決する場合においてもなんら異なるものではない。
本件において、原審が適法に確定したところによれば、上告人は、昭和四四年二月一三日ころ訴外Dから、同訴外人が東京都下水道局長に対して有する原判決別紙目録記載の二〇四四万九七二六円の債権(以下、本件債権という。)を譲り受け、訴外Dは右債権譲渡の通知として東京都下水道局長宛の債権譲渡書と題する書面(以下、本件債権譲渡証書という。)に公証人Eから同月一四日付の印章の押捺を受け、同日午後三時ころ東京都下水道局に持参してその職員に交付し、他方、被上告人は、訴外Dに対して有する一三〇三万九九四八円の金銭債権の執行を保全するため、同日東京地方裁判所から本件債権に対する仮差押命令(東京地方裁判所昭和四四年(ヨ)第一〇一一号事件。以下、本件仮差押命令という。)を得、この仮差押命令は同日午後四時五分ころ第三債務者たる東京都下水道局長に送達されたというのである。右事実関係のものとおいては、訴外Dが、本件債権譲渡証書に確定日附を受け、これを東京都下水道局に持参してその職員に交付したことをもつて確定日附のある通知をしたと解することができ、しかも、この通知が東京都下水道局長に到達した時刻は、本件仮差押命令が同局長に送達された時刻より先であるから、上告人は本件債権の譲受をもつて被上告人に対抗しうる」

と、判示しています。

「第1の譲渡の事実は,弁済による債権消滅などと同様の,「異義をとどめない承諾」によって対抗できなくなる事由なのだろうか.そのように解すると,467条2項の対抗要件の意味がなくなる.したがって,債権の帰属の問題は,あくまで対抗要件の先後で決するべきで,「譲渡人に対抗することができた事由」には,債権の帰属は含まれないと解すべきである.」

内田貴『民法Ⅲ 第3版 債権総論・担保物権』 240-241頁

したがって、上記記述は、誤りです。