刑事裁判の歴史と展望あれこれ💖

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しほうちゃれんじ 798

乙:甲先生は、ダースの日について、どう思われますか?

今日の問題は、2問あります。

1.株式会社が株式の併合を行う場合,株主総会に先立って株式の併合に反対する旨を当該株式会社に対し通知し,かつ,当該株主総会において当該株式の併合に反対した株主は,当該株式会社に対し,自己の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求することができる。
3.判例によれば,甲が乙に対して株式を譲渡した後,乙が株主名簿の名義書換をしていない間に,甲が株式の分割により新株式を取得し,第三者に当該新株式を売却した場合,甲が乙に対して売却代金相当額の金員の不当利得返還義務を負うことはない。


甲先生、よろしくお願いします!


甲:1について、会社法235条は

「株式会社が株式の分割又は株式の併合をすることにより株式の数に一株に満たない端数が生ずるときは、その端数の合計数(その合計数に一に満たない端数が生ずる場合にあっては、これを切り捨てるものとする。)に相当する数の株式を競売し、かつ、その端数に応じてその競売により得られた代金を株主に交付しなければならない。
2 前条第二項から第五項までの規定は、前項の場合について準用する。」

同法234条2, 3, 4, 5項は

「2 株式会社は、前項の規定による競売に代えて、市場価格のある同項の株式については市場価格として法務省令で定める方法により算定される額をもって、市場価格のない同項の株式については裁判所の許可を得て競売以外の方法により、これを売却することができる。この場合において、当該許可の申立ては、取締役が二人以上あるときは、その全員の同意によってしなければならない。
3 前項の規定により第一項の株式を売却した場合における同項の規定の適用については、同項中「競売により」とあるのは、「売却により」とする。
4 株式会社は、第二項の規定により売却する株式の全部又は一部を買い取ることができる。この場合においては、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 買い取る株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)
二 前号の株式の買取りをするのと引換えに交付する金銭の総額
5 取締役会設置会社においては、前項各号に掲げる事項の決定は、取締役会の決議によらなければならない。」


同法182条の4第1項は

「株式会社が株式の併合をすることにより株式の数に一株に満たない端数が生ずる場合には、反対株主は、当該株式会社に対し、自己の有する株式のうち一株に満たない端数となるものの全部を公正な価格で買い取ることを請求することができる。」

同条第2項1号は

「2 前項に規定する「反対株主」とは、次に掲げる株主をいう。
一 第百八十条第二項の株主総会に先立って当該株式の併合に反対する旨を当該株式会社に対し通知し、かつ、当該株主総会において当該株式の併合に反対した株主(当該株主総会において議決権を行使することができるものに限る。)」

同法180条2項は

「株式会社は、株式の併合をしようとするときは、その都度、株主総会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 併合の割合
二 株式の併合がその効力を生ずる日(以下この款において「効力発生日」という。)
三 株式会社が種類株式発行会社である場合には、併合する株式の種類
四 効力発生日における発行可能株式総数」

と、規定しています。

「株式併合により1株に満たない端数が生じた場合は、競売して代金を分配するのが原則であるが、市場価格〔規則52〕がある株式は市場価格で売却しまたは買い取り、また市場価格がない株式でも裁判所の許可を得て競売以外の方法で売却しまたは買い取り、代金を分配することも認められる(235Ⅰ・Ⅱ・234Ⅱ-Ⅴ)」

神田秀樹『会社法〔第12版〕』111-112頁



3について、最判平成19年3月8日は

「(1) 上告人らは,平成12年2月15日,A(以下「A」という。)を通じて,それぞれ,B(以下「B」という。)を転換対象銘柄とする他社株式転換特約付社債を購入し,同年5月18日,その償還として,Bの株式各29株(以下,併せて「本件親株式」という。)を取得した。
(2) 上告人らは,平成12年10月31日,Aから本件親株式に係る原判決別紙1株券目録1(1)及び(2)記載の株券合計58枚の交付を受けたが,その際,本件親株式につき名義書換手続をしなかったため,本件親株式の株主名簿上の株主は,かつて本件親株式の株主であった被上告人(当時の商号はC)のままであった。
(3) Bは,平成14年1月25日開催の取締役会において,同年3月31日を基準日として普通株式1株を5株に分割する旨の株式分割(以下「本件株式分割」という。)の決議をし,同年5月15日,これを実施した。
(4) 被上告人は,本件親株式の株主名簿上の株主として,そのころ,Bから本件株式分割により増加した新株式(以下「本件新株式」という。)に係る原判決別紙1株券目録2記載の株券232枚の交付を受けた(以下,これらの株券を併せて「本件新株券」という。)。
(5) 被上告人は,Bから本件新株式に係る配当金として,1万4235円(税金を控除した額)の配当を受けた。
(6) 被上告人は,平成14年11月8日,第三者に対して本件新株式を売却し,売却代金5350万2409円(経費を控除した額)を取得した。
(7) 上告人らは,平成15年10月10日ころ,Bに対し,本件親株式について名義書換手続を求め,そのころ,被上告人に対し,本件新株券及び配当金の引渡しを求めた。
これに対し,被上告人は,日本証券業協会が定める「株式の名義書換失念の場合における権利の処理に関する規則(統一慣習規則第2号)」により,本件新株券の返還はできないなどとして,上告人らそれぞれに対し,各6105円のみを支払った。
(8) 上告人らは,被上告人は法律上の原因なく上告人らの財産によって本件新株式の売却代金5350万2409円及び配当金8万0590円の利益を受け,そのために上告人らに損失を及ぼしたと主張して,それぞれ,被上告人に対し,不当利得返還請求権に基づき,上記売却代金の2分の1である2675万1204円(円未満切捨て。以下同じ。)及び上記配当金の2分の1である4万0295円の合計金相当額である2679万1499円並びにこれに対する訴状送達の日の翌日である平成16年4月16日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める訴えを提起した。」

事案で

「しかしながら,原審の上記2(2)の判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
不当利得の制度は,ある人の財産的利得が法律上の原因ないし正当な理由を欠く場合に,法律が,公平の観念に基づいて,受益者にその利得の返還義務を負担させるものである(最高裁昭和45年(オ)第540号同49年9月26日第一小法廷判決・民集28巻6号1243頁参照)。
受益者が法律上の原因なく代替性のある物を利得し,その後これを第三者に売却処分した場合,その返還すべき利益を事実審口頭弁論終結時における同種・同等・同量の物の価格相当額であると解すると,その物の価格が売却後に下落したり,無価値になったときには,受益者は取得した売却代金の全部又は一部の返還を免れることになるが,これは公平の見地に照らして相当ではないというべきである。また,逆に同種・同等・同量の物の価格が売却後に高騰したときには,受益者は現に保持する利益を超える返還義務を負担することになるが,これも公平の見地に照らして相当ではなく,受けた利益を返還するという不当利得制度の本質に適合しない。
そうすると,受益者は,法律上の原因なく利得した代替性のある物を第三者に売却処分した場合には,損失者に対し,原則として,売却代金相当額の金員の不当利得返還義務を負うと解するのが相当である。大審院昭和18年(オ)第521号同年12月22日判決・法律新聞4890号3頁は,以上と抵触する限度において,これを変更すべきである。
4 以上によれば,上記原則と異なる解釈をすべき事情のうかがわれない本件においては,被上告人は,上告人らに対し,本件新株式の売却代金及び配当金の合計金相当額を不当利得として返還すべき義務を負うものというべきであって,これと異なる原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由がある。」

と、判示しています。


したがって、上記記述は、1も3も誤りです。