刑事裁判の歴史と展望あれこれ💖

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しほうちゃれんじ 2541

乙:I trip on my words again

 

出典:https://genius.com/Trousdale-if-im-honest-lyrics

 

感想:アルクによると、trip onは、~につまずく、という意味のようです。

 

今日の問題は、令和4年司法試験刑法第1問3です。

 

次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合(中略)
3.甲は、殺意をもってAに向けて拳銃を発射したところ、その弾丸がAを貫通し、その背後にいて甲がその存在を認識していなかったBにも命中し、その結果、Aが死亡し、Bが重傷を負った。この場合、甲には、Aに対する殺人罪が成立するが、Bに対する殺人未遂罪は成立しない。

 

甲先生、よろしくお願いします!

 

甲:最判昭和53年7月28日は

 

「 所論は、要するに、刑法二四三条に規定する同法二四〇条の未遂とは強盗が人を殺そうとしてこれを遂げなかつた所為をいうのであるから、原判決がAに対する傷害の結果につき被告人の過失を認定したのみで、何らの理由も示さず故意犯である強盗殺人未遂罪の成立を認めたのは、右法条の解釈を誤り、その結果、当裁判所昭和二三年(れ)第二四九号同年六月一二日第二小法廷判決、同三一年(あ)第四二〇三号同三二年八月一日第一小法廷判決と相反する判断をしたものである、というのである。
 よつて検討するのに、刑法二四〇条後段、二四三条に定める強盗殺人未遂の罪は強盗犯人が強盗の機会に人を殺害しようとして遂げなかつた場合に成立するものであることは、当裁判所の判例とするところであり(最高裁昭和三一年(あ)第四二〇三号同三二年八月一日第一小法廷判決・刑集一一巻八号二〇六五頁。なお、大審院大正一一年(れ)第一二五三号同年一二月二二日判決・刑集一巻一二号八一五頁、同昭和四年(れ)第三八二号同年五月一六日判決・刑集八巻五号二五一頁参照)、これによれば、Aに対する傷害の結果について強盗殺人未遂罪が成立するとするには被告人に殺意があることを要することは、所論指摘のとおりである。
 しかしながら、犯罪の故意があるとするには、罪となるべき事実の認識を必要とするものであるが、犯人が認識した罪となるべき事実と現実に発生した事実とが必ずしも具体的に一致することを要するものではなく、両者が法定の範囲内において一致することをもつて足りるものと解すべきである(大審院昭和六年(れ)第六〇七号同年七月八日判決・刑集一〇巻七号三一二頁、最高裁昭和二四年(れ)第三〇三〇号同二五年七月一一日第三小法廷判決・刑集四巻七号一二六一頁参照)から、人を殺す意思のもとに殺害行為に出た以上、犯人の認識しなかつた人に対してその結果が発生した場合にも、右の結果について殺人の故意があるものというべきである。
 これを本件についてみると、原判決の認定するところによれば、被告人は、警ら中の巡査Bからけん銃を強取しようと決意して同巡査を追尾し、東京都新宿区ab丁目c番d号先附近の歩道上に至つた際、たまたま周囲に人影が見えなくなつたとみて、同巡査を殺害するかも知れないことを認識し、かつ、あえてこれを認容し、建設用びよう打銃を改造しびよう一本を装てんした手製装薬銃一丁を構えて同巡査の背後約一メートルに接近し、同巡査の右肩部附近をねらい、ハンマーで右手製装薬銃の撃針後部をたたいて右びようを発射させたが、同巡査に右側胸部貫通銃創を負わせたにとどまり、かつ、同巡査のけん銃を強取することができず、更に、同巡査の身体を貫通した右びようをたまたま同巡査の約三〇メートル右前方の道路反対側の歩道上を通行中のAの背部に命中させ、同人に腹部貫通銃創を負わせた、というのである。これによると、被告人が人を殺害する意思のもとに手製装薬銃を発射して殺害行為に出た結果、被告人の意図した巡査Bに右側胸部貫通銃創を負わせたが殺害するに至らなかつたのであるから、同巡査に対する殺人未遂罪が成立し、同時に、被告人の予期しなかつた通行人Aに対し腹部貫通銃創の結果が発生し、かつ、右殺害行為とAの傷害の結果との間に因果関係が認められるから、同人に対する殺人未遂罪もまた成立し(大審院昭和八年(れ)第八三一号同年八月三〇日判決・刑集一二巻一六号一四四五頁参照)、しかも、被告人の右殺人未遂の所為は同巡査に対する強盗の手段として行われたものであるから、強盗との結合犯として、被告人のBに対する所為についてはもちろんのこと、Aに対する所為についても強盗殺人未遂罪が成立するというべきである。したがつて、原判決が右各所為につき刑法二四〇条後段、二四三条を適用した点に誤りはない。」


と、判示しています。

 

 

したがって、上記記述は、誤りです。