乙:今日の問題は
甲に( )内の罪名の間接正犯が成立するか。
医師でない甲は,妊婦乙からの依頼を受けて乙への堕胎手術を開始したが,その最中に乙の生命が危険な状態に陥ったため,医師丙に依頼し,胎児を乙の母体外に排出させた。(同意堕胎罪)
甲先生、よろしくお願いします!
こ、甲先生!?
甲:残念。。
乙:大判大正10年5月7日は
「姙婦ヨリ墮胎ノ囑託ヲ受ケタル者カ自ラ墮胎手段ヲ施シタル爲メ墮胎ノ結果ヲ生セサルニ先チ姙婦ノ身體ニ異状ヲ生シ醫術ニ因リ胎兒ヲ排出スルニアラサレハ姙婦ノ生命ニ危險ヲ及ホスヘキ虞アルニ至ラシメタルニ乘シ墮胎ヲ遂行センカ爲メ醫師ニ對シテ胎兒ノ排出ヲ求メ因テ醫師ヲシテ姙婦ノ生命ニ對スル緊急避難ノ必要上已ムコトヲ得スシテ胎兒排出スルニ至ラシメタル場合ニ於テハ醫師ニ對シテハ墮胎罪成立セサルコト勿論ナリト雖モ墮胎受託者ハ犯法行爲タル自己ノ墮胎手段ニ因リ叙上緊急危難ノ状態ヲ發生セシメ其發生ヲ機トシテ醫師ニ胎兒ノ排出ヲ求メタルモノニシテ其行爲ト胎兒ノ排出トノ間ニ因果關係アリ換言スレハ醫師ノ前記正當業務行爲ヲ利用シテ墮胎ヲ遂行シタル者ニ外ナラサルカ故ニ墮胎罪ノ間接正犯ヲ以テ論スヘキモノトス」
と、判示しています。
したがって、甲には同意堕胎罪の間接正犯が成立します。