刑事裁判の歴史と展望あれこれ💖

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しほうちゃれんじ 148

甲:今月も、よろしくお願いします。

乙:今日の問題は

A所有の建物につき,たまたま登記申請手続の手違いによりB名義で所有権保存登記がされたのを奇貨として,Bが,建物につき,Cのために抵当権を設定した。この場合,B名義の所有権保存登記が誤った登記であることにつき善意かつ無過失のCは,抵当権を取得することができる。

甲先生、よろしくお願いします!

甲:Bは建物の所有者ではないから、Cは抵当権を取得しないんじゃないかな。

乙:虚偽の外観を真実であると信じたCを保護するため、民法94条2項の類推適用の可否を検討します。

94条は

「相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。
2 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。」

と、規定しています。
最判昭和45年9月22日は

「およそ、不動産の所有者が、真実その所有権を移転する意思がないのに、他人と通謀してその者に対する虚構の所有権移転登記を経由したときは、右所有者は、民法九四条二項により、登記名義人に右不動産の所有権を移転していないことをもつて善意の第三者に対抗することをえないが、不実の所有権移転登記の経由が所有者の不知の間に他人の専断によつてされた場合でも、所有者が右不実の登記のされていることを知りながら、これを存続せしめることを明示または黙示に承認していたときは、右九四条二項を類推適用し、所有者は、前記の場合と同じく、その後当該不動産について法律上利害関係を有するに至つた善意の第三者に対して、登記名義人が所有権を取得していないことをもつて対抗することをえないものと解するのが相当である。けだし、不実の登記が真実の所有者の承認のもとに存続せしめられている以上、右承認が登記経由の事前に与えられたか事後に与えられたかによつて、 登記による所有権帰属の外形に信頼した第三者の保護に差等を設けるべき理由はないからである(最高裁昭和四二年(オ)第一二〇九号同第一二一〇号、同四五年四月一六日第一小法廷判決、民集二四巻四号参照)。 叙上の見地に立つて本件を見るに、原審の認定するところによれば、被上告人は、その所有する第一目録記載(一)の土地につき昭和二八年六月四日に訴外Dが被上告人の実印等を冒用して被上告人から同訴外人に対する不実の所有権移転登記を経由した事実をその直後に知りながら、経費の都合からその抹消登記手続を見送り、その後昭和二九年七月三〇日に右Dとの婚姻の届出をし、夫婦として同居するようになつた関係もあつて、右不実の登記を抹消することなく年月を経過し、昭和三一年一一月一二日に被上告人が株式会社E相互銀行との間で右土地を担保に供して貸付契約を締結した際も、Dの所有名義のままで同相互銀行に対する根抵当権設定登記 を経由したというのであるから、被上告人からDに対する所有権移転登記は、実体関係に符合しない不実の登記であるとはいえ、所有者たる被上告人の承認のもとに存続せしめられていたものということができる。してみれば、昭和三二年九月に右土地を登記簿上の所有名義人たるDから買い受けたものと認められている上告人が、その買受けにあたり、右土地がDの所有に属しないことを知らなかつたとすれば、 被上告人は、前叙のとおり、民法九四条二項の類推適用により、右土地の所有権が Dに移転していないことをもつて上告人に対抗することをえず、上告人の所有権取得が認められなければならない筋合いとなる。」

と、判示しています。

本件では、登記申請手続の手違いによりB名義で所有権保存登記がされたため、所有者Aは「不実の登記のされていることを知りながら、これを存続せしめることを明示または黙示に承認していた」とはいえません。

したがって、上記記述は、誤りです。{{yc028}